クリーン化について(その149)クリーン化の基礎(その11)

【目次】

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    ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。

     

    高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。クリーン化について(その148)クリーン化の基礎(その10)の続きです。

     

    3. 全体活動であること

    ◆ クリーン化活動の組織と現場の重要性

    クリーン化意識とモラル向上に向けた活動をするためには、会社や事業所、事業部など大きな部門の括りでは方針を明確にし、かつ提示すること。現場レベルではそれを受けた実行計画が必要になります。具体的な行動計画の提示ですね。

     

    方針を示す側は、自社の現場をどのようにしたいか、という思いも含めること。決して形だけの指示や伝達にはしないことが重要です。単に項目を提示するだけにとどまってしまうと、実行計画の伝達だけになってしまいます。そのまま現場に降りてしまうのです。火の用心、火の用心と繰り返すだけでは、具体的な行動に繋がらないのです。

     

    各企業では経営方針、品質方針、環境方針などいくつかの方針が掲げられています。その中には、クリーン化の推進という方針や目標が、具体的に挙げられているところもあります。それを見ると、およその活動内容...

    が見えてきます。それらは単なる伝達だけでなく、見る人にメージが残るでしょう。このような細かな配慮もしたいです。

     

    クリーン化は、企業の経営に直結すると言われます。その経営に繋がる一つの姿、手法かも知れません。現場のものづくり環境を向上させ、お客さまに安心、安全を提供し、信頼度を高めていきたい。安心、安全というのは単なる枕ことばではなく、このような地道な活動がそれを支えていると感じます。 最近では軽い言葉になってしまったと感じます。

     

    クリーン化意識や、モラルの向上などのスローガンを掲げている中堅企業の経営者の方と話をしてみると、その時の経営だけでなく、“企業の永続”という使命や将来をイメージしていて、その熱い思いを話してくれたことがあった。そのような経営者の頭の中には、その会社、企業のロードマップがあり、それを絶えず修正し、より強固にしているのではないかと感じました。

     

    そういう場面では経営者の悩みや苦労を肌で感じることができ、私自身も多様な考えを学ぶ機会だった。そのような所では、必ずクリーン化推進部署があり、担当がきちんといて、生きた活動をしていました。単に、“ものづくり現場の環境を向上させ、高い品質の製品を提供する”という表現は抽象的であり、社員の心には届かないでしょう。経営者の心、思いを届けましょう。また活動を進めるにあたり、クリーン化担当だけの活動にはしないことが大切です。

     

    “担当者がやること”のようになると、周囲は傍観者になってしまいます。全員参加で成果が出るのです。1人(担当者)の100歩ではなく、100人(全員参加)の1歩からです。その中で、活動には核になる人や組織が欲しいのです。

    (1)活動の組織編成

     

     

    上図の中段に丸く書いた部分を説明する。その職場の職制・品質・技術・保全・クリーン化担当をメンバーとして活動する。そうすることで、情報共有ができるからです。クリーン化パトロールの実施や、そこで拾われた不具合の改善・対策会議をする時などは、このメンバーが揃って行うことです。その目的は、共通認識したいということです。例えば、メンバーの誰かが大きな不具合を発見したとします。その時他のメンバーがその場に集まり、その凄さ、ひどさを確認するのです。「これは至急対応しないと設備が故障してしまう」 というふうに、課題の共有ができる。また現場、設備の見方など着眼点のレベルも向上するのです。

     

    (2)現場は生き物

    現場という言葉に着目してみましょう。“現場とはその場に現れる”と書きます。今、皆でパトロールをして不具合を見つけた、その場のことです。さらに、“現場の状態は変化する”ということも知っておいてください。こんな例があります。

     

    保全担当が不在だったが、他のメンバーで予定通り現場のパトロールを実施したところ、先ほどのような情報共有ができた。メンバーの一人が、パトロールの時不在だった保全メンバーに、「今日こんなことがあった。後で見ておいてください」 と伝えた。ところがその保全担当は、その場にいなかったため、内容の凄さまでは分からない。また、やらなければいけない仕事もたくさんあるうえ、“後で”、と言われたため、対応の優先度は下がってしまった。それでも現場に行ってみようと思い、かなり時間が経ってから見に行った。ところが、その前にその場所を通った作業者が金属粉の堆積に気づき、雑巾で拭いてしまい、証拠が消えてしまったのです。

     

    結局どこのことだか、何のことだか分からないまま、曖昧になってしまった、“状態は変化する”という事例です。このような事例はたくさんあります。意識したいのは“現場は生き物”ということです。そして状態はどんどん変化するのです。このパトロールで拾われた不具合は、そのままにしておいたらどうなるか、一つ先、二つ先を考えて、優先順位をつけて緊急性の高いものから対応することが重要です。

     

    次回に続きます。

     

    クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。

    【参考文献】 
    清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
        同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
        同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

     

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