クリーン化について(その154)クリーン化の基礎(その16)クリーンルームの重要性を考える

前回の クリーン化について(その153)クリーン化の基礎(その15)の続きです。

【目次】

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    ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。

    高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。

    7. クリーン化のなぜを考える

    ◆ クリーンルームの重要性を考える

    (1) クリーンルームの必要性を知ろう

    山形県の工場ではクリーン化教育を立ち上げ、半導体前工程や後工程だけでなく、その他の業種や人事、総務、管理など間接部門はじめ全社員を対象に実施していました。この時、「なぜ更衣室があるのか」 について、このシートを使い説明し、教育の最後には、必ずアンケートに記入をお願いしていた。私が実施した教育は国内外、取引様など含め5000名超の方が受講しています。従って回収したアンケートもたくさんあり過ぎて、記入内容はもうほとんど忘れてしまいましたが、ある取引会社で行った時のアンケートに、2名の方が同じことを書いてあり、印象深かったので今でも覚えています。「私は更衣室がなぜあるか知りませんでした。悪いことをしていてすみません」 という内容です。

     

    その悪いことと言うのは「普通の日が...

    出勤の場合、管理職がいるためきちんと着替えていたが、出勤日が休日に当たった場合、管理職はいないので、一次更衣室を通過し、二次更衣室で防塵衣に着替えてクリーンルームに入っていました」 というのです。端的にいうと、関所破りです。クリーンルームにおけるルールは、その一つひとつになぜがあり、そのなぜを知ることが大切です。“なぜが抜けてしまう”とこのようになってしまうのです。 清浄度があまり高くないクリーンルーム(乱流方式)を採用している会社では、更衣室そのものがなく、自宅から社服を着て通勤するというところもありました。更衣室は外からの持ち込みを制限する関所ですから是非設置しましょう。 

     

    (2) なぜ防塵衣の着用が必要なのか

    最初に、クリーンルームの中で発生するゴミについて図で説明します。

     

    図.クリーンルームの中で発生するゴミ

     

    この図は半導体前工程の乱流式クリーンルーム内で採取されたゴミです。管理清浄度[1]は、0.5マイクロメートル(ミクロンと略す)でクラス1,000~5,000(Fed.Std.)くらいの現場です。採取ゴミを大別すると、以下のようになります。それぞれの具体的なゴミは上図を参照下さい。

    • 人体から出るもの
    • 人の活動、行動から出るもの
    • 建物から出るもの
    • メンテナンス作業から出るもの
    • 原材料から出るもの 

     

    各ゴミの数を比率でみると“人から出るもの、人の活動から出るもの”の合計が全体の半分以上を占めています。このことから“クリーンルームの中では、人がゴミの最大の発生源、汚染源”だということが分かりますね。つまり人がクリーンルームを汚すのです。これら人から出るゴミをクリーンルーム内に撒き散らさないために着る服が防塵衣です。

     

    【防塵衣についての不具合事例】

    防塵衣を着用する理由は、これまでも説明してきましたが、その理由を知らず、防塵衣という白い服を着ただけで安心してしまう事例が次のようにたくさんあります。

     

    a. 名札などを安全ピンで固定することで穴が開く

    ある会社の現場診断をした時、クリーンルームで作業者の服装を見ると、防塵衣の胸のところに名札を付けていました。安全ピンでとめているのです。また、「〇〇活動をしています」 といったプレートを安全ピンでとめているところもありました。安全ピンで固定するとどうなるか考えてみましょう。どんなに苦労しても一度に2つの穴が開きます。クリーニングに出す時に外し、戻ったら付けるという繰り返しで、胸の付近は穴だらけになります。ピンの太さは0.5ミリほど、管理レベルである0.5ミクロンよりも桁違いに大きな穴が開き、パーティクル(微粒子)は容易に通過してしまいます(参考:1ミクロンは1,000分の1ミリ)。さらに作業者の前面、つまり製品側に向かって吹き出すことになります。

     

    b. ポンピング現象

    防塵衣の腰の部分には紐、あるいはゴムが入っています。この紐やゴムを締めないと着用している人は楽です。他者から見ればみっともないと見えるでしょう。腰紐やゴムの目的は、防塵衣の中にできるだけ空気を溜めないという考え方です。防塵衣の中に空気がたくさん溜まってしまうと、様々な動作、行動時にその中の空気がその場所をはじめ、多くの場所から外に漏れます。その時、中のゴミも一緒に出てしまうのです。腹部、胸部を押さえると空気が出てしまうことを、ポンピング現象(ポンプの原理)と呼びます。箪笥の引き出しを押し込むと、他の引き出しが出てくるのと同じ原理です。

     

    c. クリーニングによる劣化

    防塵衣の自然劣化の最大の原因はクリーニングです。防塵衣には、縦または格子状に黒い糸(導電糸)が織り込んであります。静電気を逃がす目的です。クリーニングの回数を重ねると、この黒い糸が徐々に擦り切れます。すると、静電気が発生しても逃げ道が遮断され、中々減衰しない。そこにパーティクルが引き寄せられ付着するのです。防塵衣の毛羽立ちだけでなく、定期的に静電気性能を確認し、劣化が確認されたら交換していくことが必要です。

     

    次回に続きます。

     

    クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。

    【参考文献】 
    清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
        同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
        同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

     

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