クリーン化について(その158)クリーン化の基礎(その20)イベントの企画、実施

  
【目次】

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    ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。

     

    高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。

    1. 継続のための仕掛け イベントの企画、実施について

    クリーン化活動は、経営層の号令や命令だけでは維持、継続しません。そればかりか、管理監督者が興味を示さなくなると、衰退してしまいます。清掃の継続は面白いことではないので、本来の目的や意味を本当に理解していないと、面倒なことは手を抜きやすくなります。私も長い間現場を見て来ましたのでよくわかります。一旦、活動が途切れたり、止まってしまうと、その活動はなかなか元には戻りません。

     

    何でもそうですが、止まったものを動かそうとするときは、相当なエネルギーが必要です。それでもなかなか動かないか、全く動かないことがあります。イベントの企画、実施は、活動が途切れる前に兆候を掴み、元の状態に引き戻す、あるいはさらに活発な活動にしていくための手段です。上図の5.継続のための仕掛けについて解説します。

     

    クリーン化活動が定着しても毎日同じことの繰り返しになると、手抜きや意識低下が起きるのです。この状態を放っておくと、徐々に環境が悪くなり、品質、歩留まりが低下します。これは緩やかに変化していくので、気が付いた時には深刻な状態になっていたという場合があります。徐々に環境が悪くなると、何が、いつから変化したのか、その原因が掴めないことがあります。

     

    そこで闇雲にあちこち突いてみても、真因の究明には届かず、適切な対応ができないのです。このような事態になる前に管理、監督者は日々良く現場を見て、活動に弱さを感じたら、そのタイミングをみながらイベントを計画するのも一つの手です。緩んだ部分を元に戻そうというものです...

    。これによってまた活動に目を向け、その大切さに気付いて継続してもらうことが狙いです。さらに、クリーン化のDNA継承という意味もあります。

     

    先輩が後輩に伝えるのには限度、限界があります。イベントに参加しながら理論や理屈だけでなく、体験、経験から身に着け継承していくことも大切です。様々な会社から現場診断、指導、アドバイスを依頼され、訪問すると、依頼してくるところほど、色々な工夫やアイデアがみられます。人の知恵は無限だと考えさせられます。それでもさらに新たな考え方を求め、ものづくり基盤を高めていこうという気概を感じます。そのようになると、こちらも負けてはいけないと思い、さらに熱の入った指導になります。では、その一部を紹介しましょう。

     

    (1) イベントの企画、実施について

    前回の クリーン化について(その157)クリーン化の基礎(その19)の続きです。

    【宝探し活動】 

    これは私が指導をしていた中国の工場のイベント例です。製造ラインを決めておいて、私が訪問する前日に、現地の管理職、クリーン化担当が事前にチェックをしておきます。そこで不具合を発見しても記録は残すが改善はしない。また私に対しても、その不具合は知らせないでおくわけです。翌日私が現場に入って診断を実施します。すると昨日あんなに大勢で確認したのに、自分たちに発見できなかったものが出てくる。これはすべて宝であると考える訳です。
    もちろん私も立場上負けてはいけないと真剣に診断します。

     

    相互に緊張の場であり、学ぶ場でもあるのです。不具合の発見の仕方、考え方などをその場で指導することは、現場のノウハウ吸収の場になるのです。その場の彼らの真剣さは肌で伝わって来ます。これなら伸びると感じました。その場で褒めることも忘れずにやっておきたいですね。褒められたことは印象に残ります。そして日々の活動の継続や次回の診断、アドバイスに繋がるからです。この活動は、客先監査の事前診断にも活用していました。これによって監査者から指摘される不具合件数を減らしておきたいのです。お客様は、“このような奇麗な現場では、良い品質の製品が作られるだろうという安心感”が得られます。イベントは単なるお祭りではないのです。クリーン化活動の継続だけでなく、仕事の継続受注にも繋がるのです。 

     

    【異業種交流の価値】

    異業種との交流をすることで、業界によってもずいぶん考え方が違うことに気づきます。自分たちのこれまでの環境から形成されてきた固定観念を打破し、多面的に見ることができたり、新しい発想にも繋がります。会社の文化、風土の一部として、同じ見方、考え方に染まってしまいがちです。逆に転職してきた人は、前の会社との違いに気づきます。北陸のある会社に診断、指導に行った時、現場の不具合をどう発見するかとの話が出ました。「常に新鮮な目で、多面的に色々見ることができれば、もっとたくさん発見できるはずだが、それも最初だけで、後は発見できなくなってしまう」 とのことだった。これでは現場の改善が進まないわけです。そこでこの交叉パトロールを紹介しました。しばらくして、その会社から電話がきました。

     

    「自社の中国の工場から作業者にも来てもらい、先日紹介してもらった交叉パトロールを行ったところ、「なんだ本社の方が汚れているじゃないですか」 と言われたそうです。中国の工場の方がレベルが高くて恥ずかしかった」というのです。中国から日本の工場に来た。つまり本社に来たわけです。本社はお手本でもあるわけです。 その本社の方が汚れていたということです。私たちは日頃から自然に東南アジアを上から目線で見ていますね。でもそのことに気づかないのです。ところがこのように東南アジアの方が進んでいる例は多いのです。直接現場を見ると、衝撃や危機感を感じるのではないかと思います。

     

    そのことをここで強く伝えたい。日本のものづくりの強さは何だろうかと思う。若い頃、ユーモア発明クラブ発足の会合に誘われ、参加したことがありました。参加者の顔ぶれは、経済・財界人、弁護士、弁理士、特許管理士、落語家、音楽家、歌舞伎役者、声優(あのドラえもんの声)大山のぶ代さんなど多彩でした。その時の会長は、初代会長ですが、初代江戸や猫八さんでした。それぞれが発表では、業界が違えばものの見方考え方がこんなにも違うんだと感じました。また、社内では考えたこともない発想にも気づきます。

     

    会社に長くいると、知らずにその会社の色に染まってしまい、それを元に、考え方が固定されてしまいます。ブレークスルー(現状打破)が必要な場合は、異業種交流も効果があると思います。私も、定年退職後も異業種交流の場があれば、参加しています。今になってもこのような考え方があるのだと感心することがあります。刺激を受けます。

     

    【QCサークル発表会】

    多くの企業で導入しているQCサークル活動は、元々は品質改善、向上が根底にあります。その発端は米国ですが、日本に持ち込まれアレンジしながら定着したという経緯があります。グループの活動という意味では、品質に限らず小集団活動という表現で、幅広い分野で定期的な発表会を開催している企業は多いでしょう。

     

    毎年11月の品質月間に合わせQCサークルや小集団発表会などが催されます。皆さんの会社でも実施するところは多いでしょう。自社の品質を見直す良い機会になります。発表会の実施は、発表する側にとっても活動への取り組みに深みが出るでしょう。また聴講者は、現場の小集団活動とその苦労を理解することになり、協力も得られます。現場視点での見方、考え方を他の分野で採用することもできます。“クリーン化は現場だけがやること”から脱皮できるので、全社、技術、品質部門などにも聴講してもらい、共有化することが重要です。

    次回に続きます。

     

    クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。

    【参考文献】 
    清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
        同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
        同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

     

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