品質工学では、CAEを活用して「試作レス」「試験レス」「検査レス」で市場に出てからの商品の品質評価を行うことを提唱しています。 具体的には、「機能性評価(Functionality)」といって、商品の目的機能(Objective Function)や目的機能を満足する技術手段の基本機能(Generic Function)のあるべき姿(理想機能)を考えて理想機能からの距離を測ることで機能の安定性をSN比で評価することで、システム間の「劣化寿命の比較」を行うのです。 この評価は「絶対評価」ではなく「相対評価」ですから、技術開発や開発設計段階に行うことができるのです。勿論、信頼性試験や寿命試験は確認のために、最終的には出荷前にチェックのために行いますが、これは評価ではなく、検査のために行うだけです。これをValidationといいます。
このことは、長谷部光雄さんも技術解説で、「新製品開発の際に行われる信頼性テストは、ちょうど卒業試験のようなものである。」と述べておられます。従来のように勉強してきた知識をテストする卒業試験では、社会に出てからの学生の能力評価はできないのです。
信頼性試験は長い時間が必要ですが、機能性評価は短時間で評価できるのです。その理由は、市場におけるノイズ(使用環境条件や劣化)の正負の最悪条件を考えて、目的機能や基本機能の理想機能がノイズによってどれだけ乱れるかをSN比(顧客がほしい機能/ほしくない機能の比)で評価すれば、長時間評価しなくてもよいのです。さらに、過渡特性を活用すれば、瞬時に評価することができるのです。
従来の信頼性試験では、「品質特性」でスカラー量を評価することがほとんどでした。品質特性は部分的な評価であって、商品には品質特性がたくさんありますから、これらを全部つぶすとなると際限がないのです。たとえばコンデンサーの品質特性は、静電容量やtanδや絶縁特性など30項目以上あるのですが、機能は充電特性と放電特性が満足であれば、品質特性も問題ありません。品質特性は製造段階における管理特性ですから、改善は機能性評価で行えばよいのです。問題はモノの働きである機能をどのように考えるかが技術者の独創性の問題で、決まった答えがあるのではないのです。
血圧計の機能性評価はどうすればよいのか考えてみてください。インターネットで「血圧計の精度」を調べると、指血圧計、...
機能性評価では、心臓の位置を中心にして、腕の高さを変えて+90度からー90度の180度間のデータを取って、理想機能(y=βM)を定義して、ノイズは肌の上と衣服の上を正負の最悪条件と考えて、SN比(η=β^2/σ^2)で評価(詳細は省略)すればよいのです。体重計の評価は2個のバケツがあれば精度を評価できるのです。
正解は一つではありませんので、是非皆さんでじっくり考えてみて下さい。