オープン・イノベーションとしての「価値づくり」 研究テーマの多様な情報源(その18)
2015-09-16
前回の議論の繰り返しになりますが、重要なポイントですので、「価値づくり」におけるオープン・イノベーションの意義を、ここで再度簡単に触れておきたいと思います。
「価値づくり」の起点は市場のニーズにある、すなわち「価値づくりは自社の外で自社の能力とは独立
して発生するものであり、その実現のためには自社の経営資源だけでは不十分となる可能性が大きいとい
うことがあります。この自社の経営資源で不足しているものを、外部から調達して補完するのが、オープ
ン・イノベーションです。
欧米の先行事例があるために、オープン・イノベーションを積極的に進めようとしている企業は、多いものです。しかし、多くの企業で必ずしもうまくは行っていません。その大きな理由が、研究開発部門からの抵抗です。オープン・イノベーションは、従来では社内で研究開発を行っていた技術を、外部の企業や研究機関の技術で置き換えるのですから、研究開発部門にとっては、自部門の存在意義に挑戦し、それを危うくするものと捉えられても不思議はありません。
しかし、オープン・イノベーション実現においては、研究開発担当者の主体的な関与が必須です。研究
開発担当者がオープン・イノベーション推進に前向きに取り組まなければ、オープン・イノベーションは
うまくは行きません。
このような長年の企業内で共有され強化されてきた価値観、すなわち自前主義が、その実現を邪魔する
ため、オープン・イノベーションはお手軽に実行できるものでは残念ながらありません。したがって、オ
ープン・イノベーションを実現しようとすれば、このような強固な価値観を壊す大きな変革のドライバー
が必要となります。まさにこの変革のドライバーが、「ものづくり」から「価値づくり」への転...
換です。
なぜなら「ものづくり」は「自前主義」と表裏の関係にあると言え、逆に「価値づくり」はオープン・イ
ノベーションと表裏一体の関係にあるからです。
オープン・イノベーションを推進するには、まずは経営者がこの点について自身の認識を新たにし、「
価値づくり」の重要性を深く理解することが大前提となります。