シックスシグマの概要 シックスシグマ (その1)
2015-10-15
シックスシグマとは品質管理面での対日本戦略として生み出され、顧客に対し、ほぼ欠陥の無いサービスを提供するというビジョンに基づいた経営管理体系です。シグマ(=σ)は標準偏差を表す統計記号であり、100万個中の規格外が3.4個以内となるよう製品やサービスのばらつきを抑制する狙いが語源となっています。改善活動にはZD活動(Zero Defect)等もありますが、欠陥をゼロにする取り組みは現実的には不可能であり、シックスシグマは多少のばらつきは許容する考えとなっています。然しながらその名前の由来の通り100万個に対し3.4個という欠陥発生頻度(DPMO)は、ばらつき管理の目標値としては十分低いものだと言えます。
シックスシグマの説明では100万個に対する欠陥を3.4個程度に抑えることを概念として述べられていますが、実際正規分布における6σ相当の欠陥は0.001ppm即ち百万個に対して0.001個と極めて低い値となり、シックスシグマの概念とは異なります。これはシックスシグマは長期スパンで見た平均値の変動を考慮した工程能力で見ていることに由来します。一般的に母集団から採取されたデータの平均値を母平均とみなしますが、長期スパンで見ると母平均も変動し、その変動は1.5σ程度と言われています。
図1.母集団から採取されたデータの平均値
シックスシグマはプロセス設計として工程能力指数(Cp)1.5を目安としています。これはシグマレベルで言えば4.5相当です。統計的に4.5σ範囲内の欠陥数は百万個当り3.4個となるので、名前の由来を考慮するとFour and half sigma(4.5σ)となりそうなものです。
では何故4.5σなのにシックスシグマと呼称しているのかですが、上述の長期スパンでの平均値の変動1.5σ分を考慮しているからです。つまり短期採取のデータの変動が仮に4.5σであっても、長期変動を考えると6.0σ程度の工程能力になると考えているのです。よって6シグマなのに、4.5シグマ相当の欠陥数3.4以内を目指すよう提唱しているのです。
図2.シグマレベル
シックスシグマの特徴や強みとして次のようなポイントが挙げられます。
シックスシグマ代表的特徴として、経営上層部に明確な役割があり強力なトップダウンにより活動が推進される点が挙げられます。取り組み課題も事業戦略と一致したものが優先的に選択されます。単なる改善活動では無く企業の経営改善としての取り組みです。
シックスシグマの課題は顧客の声VOC(=Vice of Customer)から始まります。測定可能な顧客要求を満たせるかどうか、満たせない場合が欠陥に相当するという考えを持ち顧客要求とそれを実現するプロセスを定義する所からプロジェクトが開始されます。
シックスシグマはプロジェクト体制で実行されますが、プロジェクト実行のために単にメンバーが任命されるだけでなく、成功に収める為に必要な役割と責任を与え、任務遂行に必要な知識や手法(QC手法や統計ツール等)の教育を施します。
シックスシグマではプロジェクトの目標や成果の判定基準を、測定可能な指標で設定しデータの収集と解析を行います。欠陥数を6σレベルに低減する名の由来にあるように、品質ばらつき抑制を主眼においた活動を行う為、統計解析手法はデータ解析の中心となります。
COPQという言葉で表されるように、シックスシグマの根底には低品質のせいで無駄に垂れ流しているコストを6シグマレベルまで低減する考えがあります。品質の改善は必ずコスト改善に反映されるべきと考え、ゴール達成時の見込み効果を金額換算して設定します。
日本における伝統的品質改善活動と言えばQCサークルがあり、製造業を中心に老舗日本企業を中心に展開してきましたが、QCサークルが品質が上がれば利益もついてくると言う性善説的活動体系であるのに対し、シックスシグマは全ての改善はコスト改善に結びつくと考え、ゴール達成時の見込み成果をコスト換算して目標を...
設定します。
TQMは継続的品質改善が利益に結びつくと考えるやや漠然とした方針であるのに対し、シックスシグマは低品質によるコスト損失、COPQ(Cost of Poor Quality)を積極的に削減し、利益に結びつけようと言う考えに基づいています。ここで言う低品質とは主に品質のばらつきを指します。ばらつきをゼロにすることは不可能ですがポイントは製品やサービスにおけるばらつきが顧客要求の範囲に十分収まっているかどうかという点です。まとめとして、シックスシグマとTQMの対比表を下図に示します。
図3.シックスシグマとTQMの対比表