転ばぬ先の杖~RFCの備え
2016-01-08
例えば管理図で管理限界線外れが生じたとします。ケースに応じた事後対応をフローチャート形式で提示する物をRFCと呼称します。通常管理限界値外れが発生したらその原因を調査し、然るべき対処を行うと思います。再検査、再サンプリング、計器類のチェックなどケースに寄って対応は様々で、先のアクションも変わってきます。場合に寄っては工程を止める必要があるでしょう。
RFCとはチェック項目のYes/Noでその後の対処ルートを分岐させ、問題がクローズするまでそれに従い対応していく行動マニュアルの様なものです。
問題が生じた場合、現場で対応が出来なければ出来る部署へ連絡があります。技術的なものであれば技術部へ、機械や設備要因であれば設備部や保全部へ、出荷に関係する事なら生産管理部と言うように問題の性質に応じて別れますが、出来るだけ現場で対処出来たほうが良いのは言うまでもありません。少なくとも製品の流動是非は現場で対応出来た方がその後のバックアップも迅速です。
顧客からすれば管理値外れの製品がそのまま最後まで流動し、原因不明のまま出荷されないか?直ぐに対処しないと他の製品へも波及するのでは無いか?と不安を抱きます。この様な心配が、サプライヤーへRFCを整備して欲しいと言う要望で寄せられます。
日本企業はある意味現場スタッフでの対応に優れている為、この様な手順をシステム化しなくても対応出来る企業も多いです。ただし手順を組み込まなくても出来ると反論しても海外顧客は納得しません。「確実に出来る根拠はあるのか」と突っ込んできます。
マニュアル文化というカルチャーの違いもありますが、品質管理の面から出来るだけ現場での即時対応を可能とする事を求められている故です。それに近年現場でも契約社員や派遣社員の割合が増加し、教育が直ぐに行き届かない場合もありますからマニュアルは効果的なのです。
実際やってみるとわかりますがRFCを作成するのは本当に大変です。対処のパターンを分岐して記していると膨大な長さのチャートになります。普通標準類はA4紙で作成し、大きくてもA3ですが、アメリカ本社が作成したRFCを見せてもらったら研修で使う模造紙にプリントアウトされていた事もありました。どの程度まで詳細に記すか、という別の問題も出てきますが、詳しすぎるRFCは却って現場に混乱を招くので目的を考えると適切なものとは言えません。
日本企業の場合はQCサークルに代表されるように現場スタッフの品質意識や対応力を鍛錬する慣習がありました。しかし終身雇用が崩れリストラ=解雇と言う間違った和製英語が定着する現状ではベテランスタッフの育成が難しくなっているのも事実です。
また詳細過ぎるRFCはナンセンスですが、初期対応を適切に行い被害を拡大させない対処をタイムリーに行うための指針は品質管理面で必要です。ヒューマンエラーの対策でスタッフの再教育という一言をレポートに書いて提出している品質保証部も少なくあ...
りませんが、スタッフの力量は様々です。同じ教育を行っても同じ効果は期待出来ません。その為ISOでは力量評価を求めているのですが、一方通行教育がまだまだ多く趣旨を理解している所は少ない様です。
教育のばらつきを抑えるべくRFCの様な補助システムを備えますと回答する方が、単なる再教育という不透明感漂う回答よりも顧客は安心できると思います。顧客による品質監査があってもRFCの記録があれば大分印象が違います。
またRFCを作成することは品質問題への対処を見つめ直す良い機会になり、効率化アップにも繋がります。不要なものを加えず最低限必要なものをチェックし確実な対応のみを求めるチャートになるからです。RFCは現場と一緒に作成すると完成度及び現実度の点で更に優れるものとなります。