TRIZの定義と考え方 使えるTRIZ(その1)

  

 

【使えるTRIZ 連載目次】

【目次】

    1.TRIZとは何か

     TRIZは、ロシア語の「Τеория Решения Изобретательских Задач」(テオーリア・リシェーリア・イザブレタチェルスキフ・ザダーチ)の、頭文字をアルファベット表記したものです。これを英訳表記すると「Theory of Solving Inventive Problem」ですから、直訳すると「発明的問題解決の理論」となります。アルトシュラー達は、250万件の特許情報を分析した結果、「技術的問題に対する人間の思考にはパターンがみられる。」ことに気付きました。そしてそれらは、大きく以下の3つになります。

     1.技術システムの解決策は、分野を超えてパターン化できる。=発明原理

     2.技術システムの進化の法則は、分野を超えて繰り返される。=技術進化のパターン

     3.革新的な解決策は、他の分野の知識を活用して生まれた。=科学的知識DB

     この3本柱が、TRIZの基礎概念を構成しています。

     

     要は「他人のふんどしで相撲が取れて、しかも勝てるのなら使わない手はないでしょう?」と言うことになります。もちろんそこには、問題を解決したいと真剣に考える技術者でなければ、いくら他人のふんどしが良くてもダメなのですが…。

     つまり、この企業競争を勝ち抜くためには、他社よりも早く「より良い(ユニークな)答え」にたどり着く必要があり、そのために自分たちの知識経験だけに頼っていては、その競争に遅れてしまうわけです。もしかしたら、他の業界ではすでに似たような問題を解決しているかもしれません。だったら、それを使わない手はないはず…、ということです。

     またTRIZをうまく使うためには、若干精神的論的ですが、以下の3つの要素が必要だと考えます。

     1.問題解決における主体性と自律性をもつ=責任感ある楽観性
     2.その問題に関する知識経験の有無=全くの素人だけだと困る
     3.問題解決に対する情熱=どうでも良い問題は絶対解けない

     それと、どうしても知っていてほしいのが、TRIZとは単なる手法の集まりではないということです。TRIZの持つ思想的な面と実際に使用する手法的な面。その両面を意識することで、TRIZの思考プロセスの大切さがより深く理解できると思うものです。

     

     2.TRIZの思想

    (1) 心理的惰性の打破

     人間はほとんどの場合、過去の記憶にひきずられた思考をします。しかもそれが自分の経験だけの場合は性質が悪いです。賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。決して経験を軽んじるわけではなく、必要なものだがそれだけにとらわれてはいけません。見る方向を変えてみたり、遠くから見てみたり近寄ってみる、さらには製品の内側に入ったつもりで観察することで、従来と違った発想が生まれる可能性が高まるとTRIZは主張します。つまり、今までと違う見方を最初から否定しないということです。冷蔵庫は「食品を冷やすもの」という従来の常識にとらわれずに、「食品を保温するもの」と定義すれば高温のものを入れる発想が生まれます。あとは、それをどう実現させるのかという行動(開発)が大切です。 
     

    (2) 理想性の向上

     あらゆるシステム(機械でも電気でもソフトウエアなど)は、理想状態を目指して改善されます。究極の理想解とは、「機能は存在するがシステム(手段)は存在しない」と定義されます。つまり先の冷蔵庫の事例でいえば、冷蔵庫の目的機能は何か...

    ?「食品を冷やすこと?」ではなくて、「食品を長期間保存させること」です。言い換えれば、「食品が永遠に腐らない事」が理想でしょう。であれば、その理想が実現できれば冷蔵庫は「不要」になります。テレビも同様で、画像をきれいに映すことが理想ではなく、「人間の脳にイメージを描くこと」と考えれば、テレビも今とは異なったシステムになります。

     要は、顧客が求めているのは実はシステムではなく機能なのです。機能さえ向上すれば、システムは何でも構わないのです。逆説的にいうと、あなたが今取り扱っている商品がいずれ無くなる(置き換わる)運命にあるという「脅威」を意識するべきということになります。そしてそれを最初に定義し、現実性を考えてシステムを構築していかなければと思います。

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