【TRIZ・USIT活用法 連載目次】
前回のその2に続いて解説します。
3. 矛盾に関するパラメーター
開発の上流段階ではシステムの働きや各要素に要求される機能を考える場合が多く、そこでは機能的な特性に関する問題を想定することが考えられまする。また、開発設計が進んだ段階では、具体的な実現手段に関する問題が中心になりまする。そこで、このような2タイプの活用段階に対応できるように、機能パラメーターと設計パラメーターとに再編成しました。
機能パラメーターを選択する観点は
その1の表1に示しました。共通の観点の他、各利用分野毎の観点も併記したのでこれらを参照して下さい。
その2の表3で用いる設計パラメーターは重量や長さなど文字通りなのでガイドは省略しています。
AltshullerやMatrix 2003のパラメーターを、観点を明確にして整理統合することで問題文の中から抽出することが容易になり、またパラメーターの利用ガイド(その1の表1)を用意することで、更に使いやすくなっています。
表4. 発明原理 << クリックで拡大 >>
4.発明原理
矛盾を解消するための指標が発明原理です。これらを表4にまとめます。Altshullerの発明原理は類似のものが並列されているため、初心者はどちらを使ったらよいか迷ってしまうと思いますので、整理統合して分りやすくしてあります。
5.矛盾解決のやりかた
例で示します。前述の掃除機の問題で、「吸引力を強くしてゴミを吸い取る」と「操作しやすさ」の矛盾の解消には新矛盾マトリックス(機能)を用います。良化したい特性「吸引力を強くしてゴミを吸い取る」にはF10の物質の量を、その際に悪化する特性「操作しやすさ」にはF4の操作の容易性を選択します。その2の表2から発明原理1、4、8、12、16、21、22、24、25が得られ、下記のアイデアが生み出せます。
・発明原理1:分割/分離原理から、吸い取り口の外から全て吸気を取り込むのではなく、吸気蛇腹を二重にし排気の一部を外側から戻して、それで床面を叩き吸い取るようにする。
・発明原理4:代用/置換原理から、ゴミを取るために空気流れを用いるのではなく、静電気を用いる。あるいは空気流と静電気の併用をする。
・発明原理8:未然防止原理&21:つりあい原理から、吸引力に応じて吸引口の下の隙間が変わるようにする。
・発明原理12:セルフサービス原理から上記1と同じく排気を吸気に利用する。
・発明原理16:局所性質原理&発明原理24:特性変更原理(&発明原理1:分割/分離原理)から、吸引口を二重にし外側は床との距離を保ち空気流量を確保できる硬質のカバーを、内側には風量で動く柔軟性のある薄板を用いる。
・発明原理22:振動原理から、床面を叩きながら吸引することでゴミを効率よく吸引しやすくする。
・発明原理25:仲介原理から、吸引口の下に小車輪を設けて床や絨毯に吸い付かないようにする。等の解が考えられます。このように、その2の表2や表3の良くしたい特性(表2の場合はその1の表1を参照)と、その時悪化する特性との交点から発明原理が得られ、発明原理を指標として解決策を考えることができます。
【参考文献】
1) G.Altshuller、遠藤ら訳「超発明術TRIZシリーズ1入門編 原理と概念に見る全体像」日経BP、1997
2) 三菱総合研究所知識創造研究部「革新的技術開発の技法 図解TRIZ」日本実業出版社、1999
3) 三原祐治「VE関連技法「TRIZ」および日本TRIZ協会活動」日本VE協会誌2013年8月号P.33
4)・Ed. Sickafus「Unified Structured Inventive Thinking-How to Invent」NTELLECK、Michigan、USA、1997
・E.N.Sickafus著、川面、越水、中川共訳「USITの概要(統合的構造化発明思考法)」:e-Book by Ntelleck2004
5) http://www. triz-us...