普段の業務の中でも、取引先や外注先に対して仕様や性能を専門用語も交えながら詳しく説明することが必要ですが、その時は、相手方は説明を理解できるだけの技術的なバックグラウンドを持った人たちです。しかし、補助金申請の場合は異なる考え方が求められます。その理由は、2つあります。
第一は、申請内容を細かく吟味できる物理的な時間が審査員にはない、ということです。審査員は定められた期限内に大量の申請書類に目を通したうえで、個々の内容を審査しなければなりません。
第二は、審査員は公的機関の職員や企業支援に携わる方々が担当することが多い、という点です。つまり、自社の申請書を読む審査員は、自社の属する業界や自社技術のことを全く知らない可能性が高いのです。
従って、自社の優れた技術や製品を全く知らない人でも一度読めば概要がつかめるようなわかりやすい書きぶりが申請書類に求められるのです。では、「わかりやすさ」とは一体何か。私が企業と一緒に常に考えているのは、「シンプル」と「ビジュアル」です。
例えば、次の3点に留意が必要です。
1.家族に説明するつもりで、専門用語を平易な言葉に置き換えてみる
2.申請内容を50~100文字のキャッチフレーズで表してみる
3.図、写真、表を申請書に盛り込む
これらの工夫を盛り込むことで、審査員が申請書の中のアピ...
ールポイントを素早く拾って理解できるようになります。ただし、根底にあるべきは「補助金がもらえるから新しい事業を考える」のではなく、制度を的確に理解した上で「自社戦略を補助金を使って如何に実現するか」という視点であるこに相違ありません。
この文書は、 2015年12月10日の日刊工業新聞掲載記事を筆者により改変したものです。