1.公式発表事故1,300件の過半数は放置される
私たちは毎日多くの製品を使って生活していますが、反面、製品による事故に遭遇する危険性に囲まれています。製品による事故を製品事故といいますが、製品の安全性を守るステップが3つあります。製品の設計ステップ、生産ステップ、そして使用者である私たちの使用ステップに機能する表示物の安全です。
表示物とは、具体的には取扱説明書や注意喚起ラベルがその代表的なものです。PL法でも、製品によって拡大損害が発生すると、その原因をこの3つのステップに損害原因を求め、不具合があれば製品に欠陥があったとして、製造者に賠償責任が発生します。このような経緯で起きた製品事故の24年度分は1,300件と公式に発表されています。その内ではっきりと製品に起因するとされた事故は40%です。この事故については製造者によって安全化され、使用者が受けた損害は、製造者の責任で賠償が行われます。しかし、残りの過半数は事故原因が使用者ほかにあるとされ、再発防止の究明をされることはありません。公式に発表された製品事故1,300件のうち、過半数の事故は安全化されないまま再発が起きる可能性を持って市場で使い続けられています。
2.広告は表示の1手段としてPL責任がある
先述した3つのステップの損害原因の3ステップめ、すなわち表示は最も使用者に密接であると共に、最も幅広い世界です。取扱説明書や注意喚起ラベルのほか、製品の紹介記事や広告宣伝など、製品の情報を私たちに伝えるメディアの全てが対象になるります。
PL法上で広告は対象になるのか、という議論があります。PL法の法文の中には「広告」という言葉はありません。またPLの対象製品は、「動産である有体物」となっていますから、無体物である役務、サービスの一環である広告は、対象にならないことになります。しかし、PL法の「製品の欠陥」の定義をみると、PL法が使用者の保護を目的として立法化された以上、製品の情報を伝える広告は表示の一手段であり、それによって広告の読者、視聴者に危害が発生すれば、PL法に抵触することになります。
この考えを受けて、(社)日本広告審査機構(JARO)は、広告が視聴者に与える被害を未然に防ぐためのガイドライン「広告と消費者の安全」に下記の様な注意喚起を行っています。喚起の対象は広告関連業者ですが、製品を使用する私たちが読めば、広告によって受けるマインド・コントロールの防止になり事故の発生を防ぐことにつながります。
【消費者に安全な広告の条件】
1 安全性を無条件に保証しない。
2 使用者を危険な行動に導く影響力があることを忘れない。
3 使用者に安全な使い方を知らせる義務があることを忘れない。
4 製品を危険な状況のなかで紹介しない。
5 安全をドラマチックな効果のための犠牲にしない。
6 視聴者に「暗示にかかりやすい人」や「危険性の判断力に乏しい人」がいることを忘れない。
7 製品に関する全てのテスト結果を考慮に入れる。
8 「してはならないこと」の実演は音声や文字が理解されないと危険を生じる。
9 安全への配慮はPL訴訟を防ぐとともに企業のマイナスイメージも防ぐ。
10製品を無頓着や不注意な素振りで使う表現をしない。
11防具を着けることが望ましいのに、着けずに使用している様子を紹介しない。
12安全面で問題がある使用形態を紹介しない。
13製品の使用方法に法規制がある場合、それに合致していること。
14製品を危険な状況のまま放置することを紹介しない。
15擬人化した登場人物でも危険な行為をしてはならない。
以上が15条のガイドラインですが、次に実際にある広告表現と、それによる懸念される危ない影
響を紹介します。
3.危ない広告表現とその危ない影響、自招危難へ誘導する
事例1 おもちゃの広告
子供が、薬箱の中からおもちゃを見つけるシーンを見せている。
分析 広告製品に危険はないが、結果として子供たちを危険な行動へ誘導している。
影響:好奇心の強い子供たちに、薬に興味を持たせ誤飲する可能性が高まる。
事例2 電子レンジの広告
小学生くらいの男女二人が登場。二人は電子レンジからできたてのホットドックを取り出している。
音声ではこの電子レンジの使い方がいかに簡単かを説明している。
影響:このシーンに大人の姿が見えないため、子供たちは自分で操作が出来るという暗示にかかる。
危険性のある電子レンジをおもちゃのように表現してはならない。
事例3 湯沸器の広告
「傾斜防止装置付なので誰でも使える安全商品」と広告。
影響:安全についての保証をすると、使用者の使用方法に慎重さを欠くことになる。
事例4 自動車の広告
プロのドライバーの運転する車が、トラック...