この状態でできる限り、受注元の要請に応えなければなりません。留意すべき点があれば教えてください。
工場内設備個別の電力消費量は正確ではありませんが、大きい順にだいたい次のようになります。
1.NC加工機 5台
2.特注研磨機
3.中型裁断機
4.3次元測定器(個別空調付き)
5.現場および事務所照明
6.事務所の電灯線(PC、プリンタ、電話、CAD端末など)
7.空調(この時期はほとんど稼働せず、10月からは灯油ボイラー用に若干の電力を消費)
(これはものづくりドットコム運営スタッフによる仮想の、しかしありがちな質問です)
おすかあ様、過去にどのような質問があったのかと思い「ものづくりドットコム」を閲覧していたところ、回答がまだないこの質問を見つけました。しかもこれは「ものづくりドットコム運営スタッフの仮想質問」ということでしたので、気軽にクイズに答えるような気持ちで、私の考えを書いてみたいと思います。
最大生産量(最適化問題)
受注元は、北海道の地震の影響下で、御社がどれくらいの生産量を維持できるのか、まずはそれを知りたいのではないかと思います。80%に総電力量を絞った理論上(机上? )の最大生産量は、最適化問題を解く方法を使えば、ある程度見当がつくので、受注元にはそれを伝えればよいと思います。
製品一つにつき、単位時間当たりの電力消費量は、
WT = Wa * Ta + Wb * Tb + Wc * Tc + Wd * Td
として表され、単位時間当たりにn個生産する電力消費量は、
n * WT = n * (Wa * Ta + Wb * Tb + Wc * Tc + Wd * Td)
となります。制約条件は
n * WT < 0.8 * (総許容電力 – 事務所照明電力 – 電灯線電力 - 空調電力) * 単位時間
n * Wa * Ta < (WAI1 + WA2 + WA3 + WA4 + WA5) * 単位時間
n * Wb * Tb < WB * 単位時間
n * Wc * Tb < WC * 単位時間
n * Wd * Tb < WD * 単位時間
(WA1 + WA2 + WA3 + WA4 + WA5 + WB + WC + WD) * 単位時間 < 0.8 * (総許容電力 – 事務所照明電力 – 電灯線電力 - 空調電力) * 単位時間
となるでしょう。但し
n: 単位時間当たりの生産量
W: 消費電力
T: 単位時間に占める設備稼働時間
a: NC加工機(1..5は、NC加工機の番号)
b: 特注研磨機
c: 中型裁断機
d: 3次元測定器
WA、WB、WC、WD: それそれの生産設備の消費電力
とし、事務所照明電力、電灯線電力、空調電力は消費電力量が少ないことから、節電はせずに使い続けることとします。
このような数式と制約条件、具体的な数字をエクセルなどのソフトウェアに入れ、「nが最大になるように最適化」をかければ、理論上(机上? )の最大生産量nが求められるはずです。
エクセルの最適化ツール(ソルバー)にある非線形GRGやエボリューショナリーを使えば、簡単に答えが得られますし、他の統計ソフトの最適化ツールを使うこともできます。
理論上の最大生産量nを求めたら、受注先には余裕を見てその八割程度の数字を伝えておけば良いのではないでしょうか。
実際の現場
TOC (Theory of Constraints: 制約条件の理論) を考えれば、生産工程全体のスループットは、絶対にボトルネック工程(生産設備)のスループットを超えることはありません。
すべての生産設備の稼働率が均衡していればボトルネックは生じていません。しかしもし一つの生産設備の稼働率が他の生産設備の稼働率よりも高ければ、その稼働率の高い生産設備がボトルネックになっている可能性があります。
生産量を維持しつつ総設備電力消費量を20%削減するのであれば、まずは小ロット生産に切り替え、
1. ボトルネックの生産設備をフル稼働させながら、
2. それを維持できるだけの工程内安全在庫(ロット)量が溜まったところで、遊休設備の電源を切る
3. 工程内安全在庫量を切ったら、止まっていた生産設備を稼働させて、安全在庫量が溜まるまで生産を続ける。この時、総設備電力が上限の80%を超えないようにするため、すべての生産設備をいっぺんに稼働させることはせず、様子を見ながら順番に稼働させていく
それでも総設備電力消費量の20%削減が達成できなかったら、ボトルネックとなっている生産設備の稼働率を少し落としてから上記2と3を繰り返します。
そしてボトルネック生産設備の稼働率を調整しながら、最適解を見つけます。上手くやれば、理論上(机上?)の最大生産量に近づけることができると思います。
|