「経営方針」の意味 中小メーカ向け経営改革の考察(その8)
2016-02-26
前回のその7に続いて解説します。経営方針は主として将来展望を示すものです。年次別に将来展望に到達するに必要な問題解決のための課題設定は、事業計画に含めます。中小製造業では営業の機能が弱く、市場開拓をどのようにしたら良いのか明確な方法を確立できず、大手メ-カー、商社などからの受注で事業が進められている場合が多いようです。そのような企業では、経営方針を決める必要性をあまり強く感じていない傾向が強いか、または、決めた経営方針が空文化しています。
その結果、顧客から示された目先の処理に力が注がれて、長期展望に相当する経営方針を軽く扱いがちになります。長い間の習慣から、与えられた課題を処理する能力は向上していくが、「自ら課題設定する能力」を自己啓発する機会を作り出す事に恵まれていない場合がほとんどですが、そのような問題を解決するのが経営方針の設定です。経営方針で長期展望を描き出し、その実現のためにどのような手順を講じるのか、事業計画に反映させま。つまり、長期展望の実現性は事業計画の立て方に左右されることになります。
経営システムの主柱をなす経営方針(長期展望)が曖昧であると、技術蓄積が図られないことになります。経営方針を設定するに当たっては、代表者は心の中に描いている数年先以上の企業の将来像を描き出して示す事が何よりも大切です。つまり、経営を維持発展させていくために努力すべき方向を示すことで、企業内をまとめる論理が得られます。
代表者が心の深層に持っている近い将来の企業像を描き出す過程で、自企業の特徴を伸ばすことを根底に置くのが最も大切であって、欠点を意識し過ぎると判断を誤ります。
簡単明瞭に示され、その方向に徹底的に掘り下げた取り組み方をしている企業では、最初に見えなかった問題点が漸次見えてくるようになり、成果が明瞭になっている例があります。反面で、幾つもの方向性を設定している企業や欠点を意識し過ぎる企業では、企業内の活動にまとまりがなく、精力が分散しています。
上述した手順が逆になって業界の動向や環境問題から先に検討すると、その方向に引きずられて、代表者が描いている企業の将来像が歪んでしまいます。代表者の意思を貫くためにも手順は大切です。
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経営方針を決めるためにSWOT分析を使う方法が広く利用されています。この場合でも利用法を誤らないような配慮が必要です。前述したように代表者が心の深層に持っている企業像を先に描き出し、それ以降にSWOTをチェック項目として利用する方が、代表者の才能との整合性の取れた有用な経営方針が創られます。SWOT分析を先に利用すると、方法に引きずられて代表者自身の考え方を掘り下げる作業が弱くなります。経営方針に含まれる事項の例を下記に示します。