感性工学とはどんな手法?目的やメリット、活用方法を解説
検査という言葉はJISによって定義されていてその定義によれば「品物を何らかの方法で測定した結果を、判定基準と比較して、個々の品物の良品、不良またはロットの合格・不合格の判定を下すこと」となっています。しかしながら、感性工学でいう検査という言葉は、もっと広い意味を持っていて、感覚測定法・感覚工学・官能品質工学などとも呼べます。今回は、感性工学とはどんな手法?目的やメリット、活用方法を解説します。
1. 感性工学とは
感性工学は、人間の感性という主観的で論理的に説明しにくい反応を、科学的手法で分析し、活用することを探求する技術分野です。人間は脳の右側で感じ取り、左脳で論理的に思考します。感性はこの右脳の機能ですから、いつ、なぜ、どのように感じるかは論理がないとも言えますが、ユーザーが製品を購入する判断には感性が多分に関わるため、製品企画への感性工学適用が重要となり、次第に普及してきました。感性を物理特性に落とし込むには、コンセプトを段階的に分解したり、大勢の感性データを統計的に解析したり、AIでパターンを認識させるなどの方法があり、今後も発達していくとみられます。
(1)感性工学の目的
感性工学は、製品やサービスのデザインにおいて、人々の感情や感覚に焦点を当てる学問です。その目的は、製品やサービスをより使いやすく、魅力的にすることで、ユーザーの満足度や快適性を向上させることにあります。感性工学は、人間の感性や行動を科学的に理解し、それを製品やサービスのデザインに活かすことで、より良いユーザーエクスペリエンスを提供することを目指しています。
(2)感性工学のメリット
感性工学は、製品やサービスのデザインや開発において、ユーザーの感情や感性に焦点を当てるアプローチです。感性工学のメリットは次の通りです。
①ユーザーエクスペリエンスの向上
感性工学を取り入れることで、製品やサービスがユーザーにとってより使いやすく、満足度の高い体験を提供することができます。
②製品の差別化
感性工学を活用することで、他社との差別化を図ることができます。ユーザーの感情や感性に合わせた製品やサービスを提供することで、競合他社との差をつけることができます。
③ブランド価値の向上
感性工学を通じて、ユーザーに対する配慮や思いやりを示すことができます。これにより、ブランド価値が向上し、ユーザーからの信頼や支持を得ることができます。
④ユーザーのニーズの理解
感性工学を取り入れることで、ユーザーの感情や感性に対する理解が深まります。これにより、ユーザーのニーズや要求をより正確に把握し、それに応じた製品やサービスを提供することができます。
(3)感性工学の事例
感性工学は製品やサービスのデザインにおいて、ユーザーの感性や感情に焦点を当てる手法です。その中でも、Apple(アップル)は感性工学を取り入れた成功例として知られています。Appleは製品のデザインやユーザーエクスペリエンスにおいて、ユーザーの感性や感情に訴えかけることを重視しています。例えば、iPhoneやMacBookなどの製品は使いやすさや美しさにこだわり、ユーザーに感動を与えるデザインが特徴です。また、Apple Storeの店舗デザインやカスタマーサポートも、ユーザーの感性を大切にする取り組みがされています。その結果、Appleは感性工学を活用した製品やサービスで多くのユーザーから支持を得ています。
(4)感性工学の研究結果と活用ポイント
感性工学は、製品やサービスのデザインにおいて人々の感情や感性を考慮することを目的とした研究分野です。感性工学の研究結果には、以下のようなポイントがあります。
- ①製品やサービスのデザインにおいて、人々の感情や感性を考慮することで、ユーザーの満足度や快適性を向上させることができる。
- ②色や形、質感などのデザイン要素が人々の感情や行動に影響を与えることが分かっており、それらを適切に活用することで製品やサービスの魅力を高めることができる。
- ③ユーザーの感性や感情を理解するための調査手法やツールが開発されており、それらを活用することで効果的なデザインを行うことが可能となっています。
活用ポイントとしては、製品やサービスのデザイン段階から感性工学の考え方を取り入れることが重要です。ユーザーの感情や感性を重視したデザインを行うことで、製品やサービスの魅力を高め、ユーザーの満足度を向上させることができます。また、感性工学の手法やツールを活用してユーザーの感性を理解し、それに基づいたデザインを行うことが重要です。
(5)研究結果について
感性工学の最近の研究では、人間の感情や感性を数値化するための新しい手法やツールの開発が進んでいます。また、AIや機械学習を活用して、製品やサービスのデザインにおける感性要素をより効果的に取り入れる方法が研究されています。感性工学は、製品やサービスのユーザーエクスペリエンスを向上させるために重要な役割を果たしており、今後もさらなる進化が期待されています。
2. 感性工学を活かすポイント
次の4点が、感性工学を活かすポイントです。他にもさまざまな要素がありますが、これらを意識して取り組むことで、ユーザーにより良い体験を提供することができます。
- ①ユーザーの感情やニーズを理解することが重要です。感性工学は、ユーザーの感情や心理状態に焦点を当てて設計されています。
- ②ユーザビリティテストやフィードバックを積極的に取り入れることで、ユーザーの感性に合った製品やサービスを提供することができます。
- ③視覚、聴覚、触覚など、さまざまな感覚を刺激するデザインやコンテンツを取り入れることで、感性工学の効果を最大限に引き出すことができます。
- ④デザインやコンテンツの一貫性を保つことも重要です。ユーザーが安心感や信頼感を持てるような環境を提供することが大切です。
3. 感性工学の今後
感性工学は、人間の感情や感覚に焦点を当てた学問であり、デザインやテクノロジーの分野で重要な役割を果たしています。過去の歴史から見ると、感性工学は人間中心の設計やユーザーエクスペリエンスの向上に貢献してきました。今後も、AIやロボティクスの進化により、感性工学はさらに重要性を増すと考えられます。人間と機械の共生や、感情を理解するAIの開発など、感性工学はますます発展していくでしょう。
4. まとめ
感性工学分野のデータサイエンティストの社会的需要が高まっています。社会的な需要にこたえる人財となると、最低でも実務経験を積みながら2、3年は必要でしょう。その後、センスの有無や適性の有無が明らかになってきます。AI(人工知能)化と感性工学の関係ですが、深層学習(ディープラーニング)をはじめとした機械学習技術やデータサイエンス技術などを組み合わせ、特定のタスクを実行するものです。例えば、得られたデータ(数値であったり画像であったり文字であったり音声であったり)を処理し数値化し、その数値化したデータに対し異常検知を実施し、異常が起こればその要因を分析し特定し、異常が起こらなければ起こっていないと判断し、それらを踏まえた上で幾つかのシナリオで将来予測つまりシミュレーションを行い、今何をすべきを導き出したりします。感性工学ですから人が関わり、人と発生したデータの相互作用から学習します。今後、ますますAIと感性工学の関係は深まります。