物流会社に敬遠される荷主会社とは

1. 輸送価格の値上げ

 最近輸送価格の値上げが一般的になりつつあります。今まで価格の値上げなど夢のまた夢だった物流会社だったわけですが、人員不足を契機に荷主と値上げ交渉を始めました。もちろんすべての荷主会社が値上げを受け入れているわけではありませんが、多くの荷主会社が理解を示し、あるいは渋々と受け入れました。輸送価格に限らず人手不足に起因する値上げが市場に発生しつつあります。値上げと共に、物流会社では供給規制をかけている会社もあります。
 
 その結果として物流会社の利益率が向上しつつあるようです。繰り返しになりますが、このような状況が来るとは物流会社にとって夢のような話です。一方で利益率が向上していない大変な会社が存在することも事実です。物流会社は何も自分たちだけで輸送を行っているわけではありません。
 
 協力会社に依頼し、実輸送を行ってもらっていることが一般的です。ということは、それらの会社にとっても人員不足の事実があり、親会社に値上げを要請しているのです。このような状況下、今まで考えられなかった現象が発生しています。それは物流会社が荷主を選別するという現象です。過去は何としても仕事が欲しくて、荷主の言うことは神の声の様に扱ってきた会社が少なくありません。しかしもう物理的に運べない状況ですから、すべての荷主の言うことを聞いてなんかいられません。
 
 特に値上げ要請を拒否した荷主とは契約を解除する物流会社が出始めました。これはある意味経済原則に基づく結果ではあると思います。一方で契約を解除した荷主はもっとよい条件で別の物流会社と契約したかもしれませんし、そうでない場合もあったことでしょう。今や荷主会社と物流会社の立場が逆転したとの見方もあります。もちろん、物流会社にとって荷主会社はお客様です。
 
 ただしお客様だからといって、今まで一部で発生していた「無理難題」まで引き受ける必要はありません。その意味で物流会社はより条件のよい荷主と取引をするようになったわけです。荷主会社ももし今まで「無理難題」を押し付けていた、あるいはそれが当たり前と思って何でも物流会社にやらせていたとしたらそれは改める必要がありそうです。このような状況を放置していたら、本当に大変なことが起きてしまいかねません。そこで荷主として考えなければならないことについて確認していきたいと思います。
 
  
 

2. トラックを待機させる荷主

 物流会社、特に運送事業者の場合、自社で保有しているトラックだけで荷主の荷物を運んでいるわけではありません。庸車というものが存在します。これは平たくいうと下請会社のトラックのことです。自社の下請会社に自社が受注した輸送を委託します。運送事業者は荷主から請け負った運送を行なえない状態は絶対に避けなければなりません。そこで庸車を使って自社で不足する分を補っているわけです。
 
 ところが最近ではこの庸車を集めることが困難になってきています。要因はトラックドライバーの不足です。そこで下請けからも値上げの要請を受け、運送事業者のコストアップになってきているのです。運送事業者も下請会社から「あの荷主には行きたくない」という話を受けることがあります。では物流会社から敬遠される荷主会社とはどのような会社なのでしょうか。その筆頭が「トラックを平気で待たせる荷主(着荷主)」でしょう。
 
 皆さんは自分が乗る予定の飛行機や電車が待ってくれた経験はありますでしょうか。皆さんに何かしらの理由があって待ってくれたことはないと思います。一方でトラックを平気で待たせることがまかり通っています。まずこのような荷主、着荷主から物流会社は離れていくことでしょう。生産が遅れ、そのトラックに載せないと得意先のラインを止めてしまうという理由から、トラックを待たせる工場があります。
 
 しかも一回だけでなく、年に何度もそのような状況が発生している会社は多々あります。さらに悪いことに、待たせた時間を補償するための待機料を支払っていません。自分の都合しか考えない荷主の典型ですが、これらの荷主が選別されることは時間の問題でしょう。そしてどの物流会社からも敬遠されることになり、サプライチェーンが寸断します。
 
 ですから、トラックを待たせているような荷主、着荷主は早急に待機させる要因を解消しなければなりません。改善が完了するまでは何とか待機料を支払うことで勘弁してもらいたいものです。次に敬遠される荷主、着荷主は輸送以外の作業、たとえば積み込み、荷降ろし、棚入れ、ライン供給などさまざまな作業をトラックドライバーに行わせる荷主です。トラック輸送の本業は荷を積んでトラックを走らせることであり、トラックを止めて行う作業は極力小さくすべきです。この考え方は荷主の構内で行われる本業の作業と付随作業との考え方と同様です。本業に特化できていなければ改善を進めていると思いますが、それとまったく同じなのです。
 

3. 余分な作業を解消する

 積み込み、荷降ろし、棚入れ、ライン供給などはトラック輸送作業においては極力無くしたい作業です。その内積み込み、荷降ろしは無くしたいけれど無くせない付随作業でしょう。しかし棚入れ、ライン供給などは輸送作業ではありません。それとの因果関係があるわけでもありません。ただ単に荷物を運んできたのだからそのついでに棚入れして欲しい、ライン供給して欲しいといった、着荷主側の要望を実現しているにすぎません。積み込み、荷降ろしはトラックを止めていないと実行することができません。トラックを止めて積み込み、荷降ろしを行っている間、トラックドライバーは手待ちになります。だからどうせ待つならば自分も積み込みあるいは荷降ろしすることで、少しでも早く出発したいと...
考えることがあると思います。
 
 しかし、着荷主の構内での棚入れやライン供給は明らかにやらせすぎです。しかも着荷主は運送事業者との契約当事者ではありません。運送事業者と契約するのは荷主です。荷主が運送事業者との契約の中に着荷主構内での棚入れやライン供給を入れてあるのであれば、それに対価も支払われますので、問題ありません。着荷主が強い立場を利用して契約当事者でもない第三者に余計なことをやらせることは行き過ぎとしかいいようがありません。このような着荷主やそれを改善できない荷主は物流会社から敬遠されることになるでしょう。
 
 さらに積み込み、荷降ろし作業を「手荷役」で行わせる会社は敬遠されます。フォークリフトで行えば20分で済む作業を2時間かけて手作業で行わせると、それだけ運転時間が圧迫されることになります。また手積み手降ろしは明らかに重労働です。それでなくても若い人がやりたがらない仕事です。なおさらドライバーが集まらなくなること必至です。このように荷主、着荷主の中には物流会社から敬遠され、仕事を引き受けてもらえなくなる会社が出てくることが想定されます。
 
 思い当たることがある会社は即改善を行うことをお勧めします。そのまま放置しておくと、ある日突然サプライチェーンが寸断するなんてことになりかねません。今手を打てばまだ間に合います。ぜひ会社内で問題点を共有化し、改善を進めていきましょう。
 

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