中国語通訳の使い方には細心の注意が必要 中国企業の壁(その18)
2018-07-04
前回は、中国工場での指示が伝言ゲームになっている事例を紹介しました。これに関連して、今回は、中国語通訳の使い方の事例です。
ある会社で、通訳を介した伝言ゲームで工場が大混乱に陥ったことがあったそうです。
中国に初めて工場を立ち上げたその会社は、総経理と工場長には日本人を就かせました。中国工場の総経理や工場長は、日本で考えている以上に忙しい仕事です。加えて同社の場合、日本本社から日々の報告を義務付けられており、それも輪をかけた忙しさとなっていました。
現場で問題が起きたときでも本来であれば、総経理や工場長が自ら現場に出向きその場で(通訳に訳させて)指示をするのが、あるべき姿です。しかし、あまりの忙しさに問題の報告を受けても現場に駆けつけず、自分の部屋から通訳に「これこれこういう指示をしておけ」とやっていたのです。
指示を出した本人にすれば日本でもやる方法だし問題ないと思っていました。ところが、現場のスタッフからすると総経理ではなく通訳から指示されている感覚です。中国人の副工場長も通訳が総経理や工場長の名をかたって指示していると感じていたそうです。
結果的には、このような指示が続くと、通訳に指示されていると感じた中国人スタッフは面白くないので、その指示に従わなくなり、ものごとが進まず大混乱におちいったそうです。
これは伝言ゲームの側面もありますが、通訳を使うときに注意しなければならない典型的な事例のひとつです。
他にも総経理や工場長などの通訳をしていると、他の中国人スタッフには知ることのできない情報に触れることも多々あります。そうなると、通訳は他の中国人が知らない情報を自分が知っているので、自分が偉くなったと勘違いすることがあります。
また、この会社の通訳の場合どうだったかわかりませんが、総経理の指示...
を自分がするので、やはり偉くなったと思ってしまうことも起きるようです。
そのうちに通訳が勝手に中国人に指示を出すようになってしまい、指揮命令系統がおかしくなってくるのです。
これは通訳を使う日本人の側にも問題があります。日本語が出来ると優秀だと思いがちで、特別扱いをしてしまうことが少なくないからです。中には通訳に相談する人もいます。中国人通訳の役割を今一度確認してみてはどうでしょうか。