中国語通訳の使い方には細心の注意が必要 中国企業の壁(その18)

投稿日

  
 生産マネジメント
 
 前回は、中国工場での指示が伝言ゲームになっている事例を紹介しました。これに関連して、今回は、中国語通訳の使い方の事例です。
 
 ある会社で、通訳を介した伝言ゲームで工場が大混乱に陥ったことがあったそうです。
 
 中国に初めて工場を立ち上げたその会社は、総経理と工場長には日本人を就かせました。中国工場の総経理や工場長は、日本で考えている以上に忙しい仕事です。加えて同社の場合、日本本社から日々の報告を義務付けられており、それも輪をかけた忙しさとなっていました。
 
 現場で問題が起きたときでも本来であれば、総経理や工場長が自ら現場に出向きその場で(通訳に訳させて)指示をするのが、あるべき姿です。しかし、あまりの忙しさに問題の報告を受けても現場に駆けつけず、自分の部屋から通訳に「これこれこういう指示をしておけ」とやっていたのです。
 
 指示を出した本人にすれば日本でもやる方法だし問題ないと思っていました。ところが、現場のスタッフからすると総経理ではなく通訳から指示されている感覚です。中国人の副工場長も通訳が総経理や工場長の名をかたって指示していると感じていたそうです。
 
 結果的には、このような指示が続くと、通訳に指示されていると感じた中国人スタッフは面白くないので、その指示に従わなくなり、ものごとが進まず大混乱におちいったそうです。
 
 これは伝言ゲームの側面もありますが、通訳を使うときに注意しなければならない典型的な事例のひとつです。
 
 他にも総経理や工場長などの通訳をしていると、他の中国人スタッフには知ることのできない情報に触れることも多々あります。そうなると、通訳は他の中国人が知らない情報を自分が知っているので、自分が偉くなったと勘違いすることがあります。
 
 また、この会社の通訳の場合どうだったかわかりませんが、総経理の指示...
  
 生産マネジメント
 
 前回は、中国工場での指示が伝言ゲームになっている事例を紹介しました。これに関連して、今回は、中国語通訳の使い方の事例です。
 
 ある会社で、通訳を介した伝言ゲームで工場が大混乱に陥ったことがあったそうです。
 
 中国に初めて工場を立ち上げたその会社は、総経理と工場長には日本人を就かせました。中国工場の総経理や工場長は、日本で考えている以上に忙しい仕事です。加えて同社の場合、日本本社から日々の報告を義務付けられており、それも輪をかけた忙しさとなっていました。
 
 現場で問題が起きたときでも本来であれば、総経理や工場長が自ら現場に出向きその場で(通訳に訳させて)指示をするのが、あるべき姿です。しかし、あまりの忙しさに問題の報告を受けても現場に駆けつけず、自分の部屋から通訳に「これこれこういう指示をしておけ」とやっていたのです。
 
 指示を出した本人にすれば日本でもやる方法だし問題ないと思っていました。ところが、現場のスタッフからすると総経理ではなく通訳から指示されている感覚です。中国人の副工場長も通訳が総経理や工場長の名をかたって指示していると感じていたそうです。
 
 結果的には、このような指示が続くと、通訳に指示されていると感じた中国人スタッフは面白くないので、その指示に従わなくなり、ものごとが進まず大混乱におちいったそうです。
 
 これは伝言ゲームの側面もありますが、通訳を使うときに注意しなければならない典型的な事例のひとつです。
 
 他にも総経理や工場長などの通訳をしていると、他の中国人スタッフには知ることのできない情報に触れることも多々あります。そうなると、通訳は他の中国人が知らない情報を自分が知っているので、自分が偉くなったと勘違いすることがあります。
 
 また、この会社の通訳の場合どうだったかわかりませんが、総経理の指示を自分がするので、やはり偉くなったと思ってしまうことも起きるようです。
 
 そのうちに通訳が勝手に中国人に指示を出すようになってしまい、指揮命令系統がおかしくなってくるのです。
 
 これは通訳を使う日本人の側にも問題があります。日本語が出来ると優秀だと思いがちで、特別扱いをしてしまうことが少なくないからです。中には通訳に相談する人もいます。中国人通訳の役割を今一度確認してみてはどうでしょうか。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
改善は全員で:改善のヒント(その9)

【改善のヒント連載目次】 1. 儲かる現場づくりとは 2. チームとして改善を進める 3. 現場から人を抜く 4. からくり改善とは 5...

【改善のヒント連載目次】 1. 儲かる現場づくりとは 2. チームとして改善を進める 3. 現場から人を抜く 4. からくり改善とは 5...


視点を変える 現場改善:発想の転換 (その5)

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...


外部の刺激を利用する 現場改善:発想の転換(その8)

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
中国工場と省力化

1. 中国工場の省力化  中国の最低賃金の大幅な上昇を続けている状況は、まだ終わりそうになく、中国に工場進出した企業は、対応に追われています。以前は...

1. 中国工場の省力化  中国の最低賃金の大幅な上昇を続けている状況は、まだ終わりそうになく、中国に工場進出した企業は、対応に追われています。以前は...


3次元データ加工のセオリー 伸びる金型メーカーの秘訣 (その15)

 今回紹介する部品加工メーカーは、T鉄工所です。同社は、フォークリフトの構成部品の機械加工を行っており、特に溶接製缶品の切削や穴あけに特化した加工技術が得...

 今回紹介する部品加工メーカーは、T鉄工所です。同社は、フォークリフトの構成部品の機械加工を行っており、特に溶接製缶品の切削や穴あけに特化した加工技術が得...


ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その3)

  『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~ 第1章7ゼロ生産意識改革PICQMDS(ピックエムディーエス)...

  『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~ 第1章7ゼロ生産意識改革PICQMDS(ピックエムディーエス)...