中国工場と省力化

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1. 中国工場の省力化

 中国の最低賃金の大幅な上昇を続けている状況は、まだ終わりそうになく、中国に工場進出した企業は、対応に追われています。以前は潤沢に人を使って生産をしていた企業も生産性を強く意識し、改善していかなければならない状況になっています。今回は、ある日系中国工場の人員削減の取組みを紹介します。
 
 この会社が人件費上昇への対応として「20%人員削減」に取り組んだのは、5年前のことでした。この会社は広東省に5000人規模の工場を2つ持っていました。
 
 これだけの人員がいると最低賃金の大幅な引き上げが大きな負担となります。たちまち経営危機に陥ることはないのですが、大きな影響があったのは確かです。そこでこの会社では、人件費高騰の影響を最小限にするために工場人員の削減を行なうことを決めたのです。
 
 具体的には、1年間で工場人員の20%を削減するという目標を設定しました。
 
 もちろんただ減らせばいいということではありません。現状の生産能力をキープすることが大前提です。20%もの人員削減は容易ではありません。単純な工程改善だけでは到底達成は出来ません。そこでこの会社では、人の代わりに機械/設備を導入することを検討しました。
 
 今までの中国では、機械/設備の代わりに人が作業をすることで生産していたのを今回は、人の代わりに機械による生産という逆の発想をしたのです。どのくらいの機械/設備が必要か、また、設備にかけられる費用も人件費から逆算して算出しました。
 
 設備の導入や工程改善による生産性向上は、日系企業が今まで日本でずっと取り組んできたことです。日系企業の得意分野と言ってよいでしょう。賃金の上昇は、日系中国工場だけなく中国企業にも同じように起きています。生産性向上という得意分野で中国企業に差をつけるチャンスと捉えて取組み、乗り切りたいものです。
  
 省力化
 

2. 機械化のポイント

 現在指導している中国企業の製品はユニットもので、お客様のところで組立をして使用します。この企業のユニット製品のセールスポイントのひとつは、お客様での組立工数を可能な限り少なくするために、中国工場でプリアッセンブリ―を行って出荷していることです。
 
 プリアッセンブリ―は大きく分けて2つあります。1つは、製品をほぼ組立ててしまい、お客さんの方では、組立角度を調整するだけで済むようにしているもの。もう1つは、組立に使うボルトやナットを部品に仮組みしておくというものです。それによって、お客さんがボルトやナットを組み込む手間を省くとともに紛失を防ぎます。
 
 こうしたお客様の「面倒くさい」を工場側でやっておくことで、付加価値を高めているのです。実際に部品にボルト・ナットの組み込みは、作業者が手で回してやるという面倒な作業です。
 
 この工場の方針として、生産量が多いものは機械による自動化を進めるというのがあり、それに対する投資を積極的に行っています。部品へのタップ加工は自動化が完了しているものもあります。
 
 前述した部品にボルト・ナットを組み込む作業も自動化を検討しており、試作機が入っています。ところが組み込む部分は自動化されていますが、部品の供給は自動化されていないため人が供給しなくてはなりません。
 
 これでは、機械1台に作業者1人...

1. 中国工場の省力化

 中国の最低賃金の大幅な上昇を続けている状況は、まだ終わりそうになく、中国に工場進出した企業は、対応に追われています。以前は潤沢に人を使って生産をしていた企業も生産性を強く意識し、改善していかなければならない状況になっています。今回は、ある日系中国工場の人員削減の取組みを紹介します。
 
 この会社が人件費上昇への対応として「20%人員削減」に取り組んだのは、5年前のことでした。この会社は広東省に5000人規模の工場を2つ持っていました。
 
 これだけの人員がいると最低賃金の大幅な引き上げが大きな負担となります。たちまち経営危機に陥ることはないのですが、大きな影響があったのは確かです。そこでこの会社では、人件費高騰の影響を最小限にするために工場人員の削減を行なうことを決めたのです。
 
 具体的には、1年間で工場人員の20%を削減するという目標を設定しました。
 
 もちろんただ減らせばいいということではありません。現状の生産能力をキープすることが大前提です。20%もの人員削減は容易ではありません。単純な工程改善だけでは到底達成は出来ません。そこでこの会社では、人の代わりに機械/設備を導入することを検討しました。
 
 今までの中国では、機械/設備の代わりに人が作業をすることで生産していたのを今回は、人の代わりに機械による生産という逆の発想をしたのです。どのくらいの機械/設備が必要か、また、設備にかけられる費用も人件費から逆算して算出しました。
 
 設備の導入や工程改善による生産性向上は、日系企業が今まで日本でずっと取り組んできたことです。日系企業の得意分野と言ってよいでしょう。賃金の上昇は、日系中国工場だけなく中国企業にも同じように起きています。生産性向上という得意分野で中国企業に差をつけるチャンスと捉えて取組み、乗り切りたいものです。
  
 省力化
 

2. 機械化のポイント

 現在指導している中国企業の製品はユニットもので、お客様のところで組立をして使用します。この企業のユニット製品のセールスポイントのひとつは、お客様での組立工数を可能な限り少なくするために、中国工場でプリアッセンブリ―を行って出荷していることです。
 
 プリアッセンブリ―は大きく分けて2つあります。1つは、製品をほぼ組立ててしまい、お客さんの方では、組立角度を調整するだけで済むようにしているもの。もう1つは、組立に使うボルトやナットを部品に仮組みしておくというものです。それによって、お客さんがボルトやナットを組み込む手間を省くとともに紛失を防ぎます。
 
 こうしたお客様の「面倒くさい」を工場側でやっておくことで、付加価値を高めているのです。実際に部品にボルト・ナットの組み込みは、作業者が手で回してやるという面倒な作業です。
 
 この工場の方針として、生産量が多いものは機械による自動化を進めるというのがあり、それに対する投資を積極的に行っています。部品へのタップ加工は自動化が完了しているものもあります。
 
 前述した部品にボルト・ナットを組み込む作業も自動化を検討しており、試作機が入っています。ところが組み込む部分は自動化されていますが、部品の供給は自動化されていないため人が供給しなくてはなりません。
 
 これでは、機械1台に作業者1人が張り付くことになり、機械化した意味がありません。部品の供給部分も自動化した全自動機にする必要がありますが、もう少し時間がかかると思われます。
 
 一方で、作業者が組み込む作業の半自動化の検討も進めていました。これは部分的に導入しており、手作業に比べると速いし作業者の負担も減っています。現時点で手作業に比べ50%以上の効率アップが確認できていますが、更に突き詰めてどこまで効率を上げることができるか検討しています。
 
 自動化機械の出来によっては、半自動を進めた方がよい可能性もあります。並行して進めて、よい方を選択すればいいので、とても楽しみです。作業を機械化、自動化するときに注意することは、機械化する前に作業のムダを取り除いておくことです。それをやらないと作業のムダも一緒に機械化してしまいます。
 

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この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

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