今回は、地震災害等を想定して、デジタルデータの保存に焦点を当てて、主なバックアップ方法と長所短所を解説します。
1. 主なバックアップ方法と長所短所
バックアップにも色々と運用形態があるのですが、ここでは便宜的に以下のように分類します。
(1) 企業内にバックアップデータを保管する。
バックアップしたデータを企業の内部(自社の社員)で保管します。保管先として、主に以下の媒体が考えられます。
(1)-1. 共有ファイルサーバ (LAN上で共用しているコンピューター内のディスク領域)
共用のコンピューターに共有フォルダなど設けて、そこにバックアップデータを保管していく。
- 【長所】導入が比較的容易である。(共有フォルダを設けるだけ)
- 【短所】天変地異などで故障したらデータ消失の可能性がある。
(1)-2. NAS (LAN接続のハードディスク)
LAN接続できるハードディスクに、バックアップデータを保管していく。
- 【長所】一部ディスクの故障ならば、データ復旧できる可能性がある。(RAIDによる冗長構成の場合)
- 【短所】天変地異などで故障したらデータ消失の可能性がある。
(1)-3. リムーバブルメディア (USBメモリ、SDカード、光ディスク等といった小型の記憶媒体)
抜き差しが容易な小型の記憶媒体に、バックアップデータを保管していく。
- 【長所】導入が比較的容易である。(メディアをPCに抜き差しするだけ)
- 【短所】小型で持ち運び可能である故に、媒体を紛失しやすい。データ保存可能サイズが小さい。どのデータがどの媒体に保管されているか調べ難い。
(2) 企業外にバックアップデータを保管する。
バックアップしたデータを企業の外部(委託先の事業者)で保管します。保管先として、主に以下の媒体が考えられます。
(2)-1. オンラインストレージ (DropBoxを代表とするクラウドサービス)
インターネット上のサーバーにバックアップデータをアップロードし、保管していく。
- 【長所】場所や媒体などの物理的な制約を受けず、インターネットさえあれば運用可能である。バックアップのみならず、ファイル共有などの用途でも使える。
- 【短所】クラウド事業者がサービス停止や変更をする可能性がある。クラウド事業者の過失でデータ消失のリスクも0ではない。現状では、データ保存可能サイズに比して、サービス代金が割高である。
(2)-2. ディザスタリカバリサービス (法人向けの商用サービス)
IT企業が提供しているディザスタリカバリサービスを導入する。
- 【長所】IT企業による専門サービスであることから、災害対策(BCP)としては一番行き届いている。
- 【短所】IT企業がサービス停止や変更をする可能性がある。IT企業の過失でデータ消失のリスクも0ではない。大企業向けのサービスが多く、導入や運用維持のコストは高めである。
2. バックアップの運用
バックアップの運用も「ピンからキリまで」の世界です。制約条件(前提条件)となってくるのは、下記のように数多くの項目があります。費用、導入のハードル、バックアップ運用の容易さ、障害発生時の堅牢性、対象とするデータの重要性や機密性やアクセス頻度によって、ベストな...
解決手段は上記の要因に依存するため、紋切り型に「これが常に一番」と断言は出来ません。
強いて言うならば、中小の規模でしたら、まずは、(2)-1. オンラインストレージ (DropBoxを代表とするクラウドサービス)を試しに導入してみて、本格的な災害対策(BCP)システムを導入したくなった(当然、それに見合った予算が準備できた)時点で、(2)-2. ディザスタリカバリサービス (法人向けの商用サービス)の検討を行うというのも一案かと存じます。