今回は、物流事業者が真の物流事業者となるための人財育成についてです。従来の運送業、倉庫業では、顧客から指示されたことを正確にこなすことが業務でした。今後は積極的に顧客に提案できることが重要で、受け身の仕事では顧客の要求を満たせません。よく物流事業者の方は「提案」という言葉を口にします。この提案の意味をしっかりと解釈しておく必要があります。
1. 物流設計の提案
提案の意味としては、一つには『改善提案』があります。これは、顧客の物流を少しでも効率的に実行できるアイデアを出すことです。そしてもう一つ重要な提案が、『物流設計』の提案です。人財育成に取り組んでいる会社は、この物流設計の技術を身につけさせる教育が必要です。メーカーでも試行錯誤で行っていますから、物流事業者でできない話ではありません。
物流設計の改善提案例としては、次のようなことが考えられます。
- 「いかに物流を発生させない流れをつくるか」
- 「物流が発生してしまった場合、それをいかに効率的に実行できるか」
- 「いくつかの物流パターンについて数値で比較できるか」
2. 真の物流事業者となるための人財育成
物流設計の技術を身につけさせることに的を絞って人財教育を実施してみてはいかがでしょうか。この人財教育の中には「発想力の育成」や、「数値で物事を判断する力」が必要になってきます。これらについては一般的な物流の教科書には載っていません。そこで、コストの計算や物流工数の計算などは独自にテキストを作って実施していくことが望ましいでしょう。
スタッフには極力外部企業の見学に行かせるとよいでしょう。メーカーではどのような工夫をしているのか、現場、現物、現実を実際に見てくるのです。
トラックと倉庫しかイメージできないようでは積極的に顧客に提案する、『物流設計』はできません。...
モノを購入してくるところの工夫は何か、構内でモノをジャストインタイムで動かす工夫やモノづくりを行うポイントなど、物流では今まで経験してこなかった領域に足を踏み入れて、サプライチェーン全体を俯瞰することが重要です。
真の物流事業者とはサプライチェーン全体について知識を持ち、さらに物流領域でも深い知識を持つT字型人財が望ましいといえるのです。ぜひ顧客から頼られる存在となるよう、努力を重ねていきましょう。