◆ 機械加工現場の管理者(班長/主任)になったら何をするべきか
今回は、機械加工現場での仕事を題材に、班長や主任になったらどのような役割を担うべきか、私自身の経験も踏まえ、具体的に見ていきたいと思います。
1. 管理対象となる機械は全て扱えること
まずは、自分やその部下が扱う工作機械、例えばマシニングセンターやワイヤーカット、ラジアルボール盤など、管理対象となる機械について、全て自分が扱えることが望ましいでしょう。理由としては、次のようなことがあります。
- 部下に欠勤が出た場合にいつでも応援に入れる
- 保守点検を行う際、機械操作と保守内容は密接に関係しているため
- 後述する差し立てを行うため、各機械の工数を正確に見積もりするため
- 難易度の高い加工品を部下にやらせる際、指示に説得力を持たせるため
その他、これらの理由のため、自分が管理するよう指示を受けた機械は、全て自分が操作できることが前提となります。
2. 常に最善の状態で扱えるよう機械の保守点検をルール化する
これも班長や主任の仕事になります。まずは、機械ごとの取扱説明書を元に、定期点検を行う内容を精査することから始まります。特に、冷却ファンや潤滑油供給関係など、故障に直結する点検項目は、優先的に管理する対象になります。
また、毎日の点検項目や週に一回、月に一回など、内容によって点検頻度は異なりますが、いかに抜け漏れなく、部下に定期的に点検させるか、仕組みを整えることも班長・主任の仕事になります。
「気がついたときにやってます」・・・これは仕組みがきちんと機能しているとは言えません。きちんとルールを整備し、仕組み化しましょう。
3. 最善のリードタイムで仕事ができるよう差し立てを行う
私は、この差し立てがどのくらいできるかが、最も班長や主任の力量が問われるスキルだと思っています。自分が管理するよう指示を受けた機械や人について、下図の事例のようにそれぞれ、毎日のスケジュールを計画します。複数台のマシニングセンターやワイヤーカット放電加工機について、加工工程ごとのリードタイムを意識しながら、自分が管理する機械それぞれに対し、差し立てを行います。
これをできるだけ正確に行うためには、図面を見て、各工程に必要な工数を見積もりできなければいけません。見積もりする工数は、①段取りするための工数と、②加工に要する工数です。
この差し立てにより、人と機械が、最善の稼働率と出来高を発揮できるようスケジューリングします。
4. 自分が最も得意とする機械については模範オペレーターになる
まさにタイトル通りのことなのですが、部下に対して知識だけ教えても、生産性はすぐに上がるというものではありません。きちんと標準化された手順を、間違えなく正確に、かつ迅速に作業できる人こそが、機械オペレーターにおける「上級者」と呼ばれる人になります。
自社にある全ての機械で、誰よりも早く、正確に作業できるということは難しいと思いますが、自分が担当し、最も得意とする機械については、部下の手本となる作業オペレーションができるようにしておきたいところです。
5....
これも、班長や主任の重要な業務の一つだと思っています。私の現役時代では、5軸マシニングが該当しました。自社で最も高度な最先端設備について、自分でやっておかないと、例えばこれまで自社では経験のない高度な仕事の引き合いを受けた際、もしスキルがまだ未熟な一般職の社員がこうした高度な設備を担当していた場合、その低いレベルがイコール自社の技術レベルの水準になってしまうためです。
もちろん、自分の技術者としての市場価値を高めることになりますし、会社の最も進んだ最先端設備については、責任ある班長や主任が率先して担当するべきだと思っています。
次回のその2に続きます。