金型メーカーCAM工程の業務診断事例(その2)

更新日

投稿日

 

 前回のその1に続いて解説します。

1. 3D 加工の等高線と走査線加工で、加工条件を変えているか

 ここでいう3D加工とは、CAMで点群データを計算しなければならない自由曲面を指しており、ボールエンドミルによる仕上げ加工を対象としています。

 具体的には、3次元CAMで計算したNCデータで使われる等高線加工と走査線加工について、同じ工具であってもそれぞれの主軸回転速度(S値)と、送り速度(F値)を別々に使い分けているかという確認です。

 そもそも等高線加工と走査線加工は、加工する形状の傾斜部において、それぞれ得意とする角度エリアを加工するよう使い分けするべきで、一般的には30~40度あたりで分割されています。

 最近のCAMは、等高線加工と走査線加工を一緒にした加工パターンも用意されており、そういった機能を使うと上記の使い分けは気にしなくてもよくなりますが、原則は形状に応じてそれぞれを使い分けします。

 加工するエリアを角度で分割した場合、下図のようにそれぞれの加工でワークに接触するボールエンドミルの箇所が異なってきます。

生産マネジメント

 図中におけるそれぞれの接触点は等高線加工と走査線加工、それぞれの加工においてボールエンドミルの最外周が接触する点を表しており、等高線加工であれば90度の立ち壁が接触する点、走査線加工であれば本例で最も角度が立っている30度の部位が接触する点になります。

 主軸回転速さのS値の計算式「S値=周速×1,000÷工具直径×π」によりますと、工具直径が小さいほどS値が大きくなり、図の工具接触点を見ると、等高線加工よりも走査線加工の方が小さい直径で接触するため、等高線加工よりも走査線加工の方が速いS値で加工できるということになります。

 次に送り速度であるF値の計算式「F値=S値×1刃あたりの送り量×刃数」によりますと、S値が大きくなれば比例してF値が上がり加工が早くなるため、緩い角度しか加工しない走査線加工については接触する最外周の工具径でS値を計算し、速い送り速度で加工した方が効率が上がります。

 そういった意味で最近のCAMを使い等高線加工と走査線加工が一緒になった加工設定ができる機能があったとしても、あえて別々に分け、...

 

 前回のその1に続いて解説します。

1. 3D 加工の等高線と走査線加工で、加工条件を変えているか

 ここでいう3D加工とは、CAMで点群データを計算しなければならない自由曲面を指しており、ボールエンドミルによる仕上げ加工を対象としています。

 具体的には、3次元CAMで計算したNCデータで使われる等高線加工と走査線加工について、同じ工具であってもそれぞれの主軸回転速度(S値)と、送り速度(F値)を別々に使い分けているかという確認です。

 そもそも等高線加工と走査線加工は、加工する形状の傾斜部において、それぞれ得意とする角度エリアを加工するよう使い分けするべきで、一般的には30~40度あたりで分割されています。

 最近のCAMは、等高線加工と走査線加工を一緒にした加工パターンも用意されており、そういった機能を使うと上記の使い分けは気にしなくてもよくなりますが、原則は形状に応じてそれぞれを使い分けします。

 加工するエリアを角度で分割した場合、下図のようにそれぞれの加工でワークに接触するボールエンドミルの箇所が異なってきます。

生産マネジメント

 図中におけるそれぞれの接触点は等高線加工と走査線加工、それぞれの加工においてボールエンドミルの最外周が接触する点を表しており、等高線加工であれば90度の立ち壁が接触する点、走査線加工であれば本例で最も角度が立っている30度の部位が接触する点になります。

 主軸回転速さのS値の計算式「S値=周速×1,000÷工具直径×π」によりますと、工具直径が小さいほどS値が大きくなり、図の工具接触点を見ると、等高線加工よりも走査線加工の方が小さい直径で接触するため、等高線加工よりも走査線加工の方が速いS値で加工できるということになります。

 次に送り速度であるF値の計算式「F値=S値×1刃あたりの送り量×刃数」によりますと、S値が大きくなれば比例してF値が上がり加工が早くなるため、緩い角度しか加工しない走査線加工については接触する最外周の工具径でS値を計算し、速い送り速度で加工した方が効率が上がります。

 そういった意味で最近のCAMを使い等高線加工と走査線加工が一緒になった加工設定ができる機能があったとしても、あえて別々に分け、走査線加工を速い送り速度で加工する意義はあります。

 腕の良いCAMオペレーターは同じ工具を使っていても、パスの形状や今回のような工具の使われ方によってエンドミル条件を使い分けており、無料診断においては、工数を少しでも少なくできる加工条件を使っているかを確認しています。

 この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「型技術」掲載』の記事を筆者により改変したものです。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

村上 英樹

金型・部品加工業専門コンサルティングです!販路開拓・生産改善・外注費削減の3つを支援するトライアングル支援パッケージ、技術を起点とする新しい経営コンサルタント

金型・部品加工業専門コンサルティングです!販路開拓・生産改善・外注費削減の3つを支援するトライアングル支援パッケージ、技術を起点とする新しい経営コンサルタント


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
台車化して早く移動し仕掛を削減する レイアウトと物流(その9)

  1.粗材、部品、加工品、完成品は資産ではなく経費である 工場内にある粗材、部品、加工品や組立品といった仕掛品、そして完成品は、会計上...

  1.粗材、部品、加工品、完成品は資産ではなく経費である 工場内にある粗材、部品、加工品や組立品といった仕掛品、そして完成品は、会計上...


自動化設備の評価方法

 設備の自動化を検討する場合に、その設備がどれだけ要求する機能を満足しているか、そして導入設備の規模や範囲をどのように決めたらよいかを評価する方法について...

 設備の自動化を検討する場合に、その設備がどれだけ要求する機能を満足しているか、そして導入設備の規模や範囲をどのように決めたらよいかを評価する方法について...


部材保管管理の基本

    【目次】◆部材保管管理を構成する5つの要素 1. 5S 2. 保管環境 3. 荷扱い 4. 保管条件 5. 現場の教育 ...

    【目次】◆部材保管管理を構成する5つの要素 1. 5S 2. 保管環境 3. 荷扱い 4. 保管条件 5. 現場の教育 ...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
物流仕事の保有能力とは

  1. 重量能力とは  物流現場を見ているととても残念なことに気づきます。それは保有する能力を使いきっていないために本来得られるべき効率をムダに...

  1. 重量能力とは  物流現場を見ているととても残念なことに気づきます。それは保有する能力を使いきっていないために本来得られるべき効率をムダに...


難加工材 伸びる金型メーカーの秘訣 (その22)

 今回、紹介する機械加工メーカーは、フライス加工や旋盤加工などの機械加工を主力事業とする株式会社Zです。同社は、航空宇宙産業分野で高い実績を誇っており、扱...

 今回、紹介する機械加工メーカーは、フライス加工や旋盤加工などの機械加工を主力事業とする株式会社Zです。同社は、航空宇宙産業分野で高い実績を誇っており、扱...


3ムの中の第三番目とは

◆3ムの中の第三番目の『ムリ』とは何でしょうか  工程能力や製造能力の許容を越えた行動や、定められた決まりや手順から故意に逸脱する状態を指します。例...

◆3ムの中の第三番目の『ムリ』とは何でしょうか  工程能力や製造能力の許容を越えた行動や、定められた決まりや手順から故意に逸脱する状態を指します。例...