抜取検査では品質保証できない事例から

 

 鉄製の支柱(長さ2000~4000mm)を生産している中国企業があり、その工場では支柱の加工のひとつとしてプレスで穴あけをしていました。この穴はお客さんが他の部品と組み立てるときに使うためのもので、穴位置の寸法精度が重要でした。

 穴あけ加工をする時の支柱の位置決め方法は支柱を下型にセットします。当然クリアランスがあるので位置は正確には固定されていません。この工場では、金型の外側にガイドピンを立て、そこに支柱を押し当てることで所定の位置になるようにしていました。

 支柱がガイドピンにきちんと当たっていれば問題ないのですが、当たらなければ穴位置がずれることになります。しかし、ガイドピンは1本だけなので、プレスにセットしたときに支柱が自動的にピンに当たる構造にはなっていません。

 案の定、穴位置がずれてお客さんから組立が出来ないというクレームが発生していました。こうした作業方法や位置決め方法に対して、品質管理リーダーや生産の班長は

 「作業者が手で押さえることになっている」

 「手で押さえる決まりになっている」

 だから問題ないと言うのです。

 作業を見た範囲では作業者は手で支柱を押えてガイドピンに当てていましたが、いつ何らかの拍子で押えたつもりでも押えが不十分だったりして、押えていないものが発生する可能性があります。(現に不良が発生している)

 この作業は品質を作業者に委ねていることになります。作業者がちゃんとやっていれば品質は確保できますが、そうでなければ品質は確保されません。このような作業方法は、品質的に非常に危険であると認識しなければなりません。

 しかしながら、中国人の品質管理リーダーや生産班長は、この作業での不良発生の可能...

性に気が付かず、品質保証が不十分であるという認識は持っていなかったのです。穴位置ずれクレームが発生したことへの対策は、作業者に手で押さえるというルールを徹底させる、品管部の抜取り検査数量を増やすというものでした。

 こうした作業方法のものは、抜取検査では品質が保証できないことは読者のみなさんお気づきだと思います。なぜなら、この不良はいつ発生するかわからないからです。

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者