【トヨタとサムスンの違い 連載目次】
トヨタとサムスンの違い(その1)社内コミュニケーションの国際性に続いて解説します。
◆ 業態変革のスピード
トヨタ自動車は、100年に一度の危機として変革を図っています。モビリティカンパニーと称して、メーカーから輸送や移動の全てまでを対象とした会社への脱却です。
それでも所詮(しょせん)、輸送機器から輸送関連ビジネスへの変化です。東富士の工場跡地に作るスマートシティは、それらも包括したインフラ開発と日常生活での利用であり、そのさらに先を目指した実験のようで注目しています。
一方のサムスン、こちらは、ありとあらゆる業種に取り組んでいます。コングロマリット、つまり複合企業です。節操なく儲かりそうなところは何でも手掛けているともみえます。
サムスンとは企業集団、サムスングループです。日本でのサムスンは、実はそのグループの一企業(利益と規模は圧倒的ですが)であるサムスン電子を示していることがほとんどです。
では、サムスングループを簡単に説明します。
そもそもは日本統治下の1938年に設立された商社、サムスン(三星)商会に由来します。朝鮮戦争後、初めて製造に進出し、戦後消費の急拡大が見込まれる砂糖と繊維製造を始めました。その後、建築、造船、電池等々も手掛けています。
BMWの電気自動車へのバッテリーはサムスンSDIから供給、高層ビル世界一のブルジュ・ハリファ(ドバイ)はサムスン物産が主たる建設会社です。1969年にはサンヨーと合弁で家電に進出し、現在のサムスン電子となっています。アジア通貨危機で撤退しましたが、一時は自動車も作っていました。今でもルノーサムスンというブランドを残し、ルノー車を輸入販売しています。
昨今、アメリカから新型コロナ治療薬の大規模な製造委託で話題の会社はサムスンバイオロジクスです。
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サムスンは収益性が下がると事業売却します。合成樹脂や砂糖は売却され、別会社としてビジネスを継続しています。20年に一度程度、大規模な変革があるように見受けられます。
トヨタは自動車関連一本での成長、一方のサムスンは業態を変えながらの成長です。
次回は、トヨタとサムスンの違い(その3)組織形態と運用を解説します。
【出典】技術オフィスTech-T HPより、筆者のご承諾により編集して掲載