◆ 品質管理-中国工場の品質が良くないのはなぜか(その2)
今回は、ある日系中国工場で取り組んだ事例を紹介します。この工場では従来型の作業からの転換を目指しました。次に従来型の作業と目指した形の違いを示します。
(1) 従来型作業
・作業の単純化(作業の分解)
・マニュアル化
- 熟練不要
- 作業者の入替可
(2) 目指した作業の形
・作業の複数化(作業の組み合せ)
・スキルの養成
- 熟練必要
- 作業者の入替不可
従来型作業というのは、前回書いたような「単純化・標準化、マニュアル通り、熟練不要」のことです。
目指した形というのは、作業を「複数化・組合せ」するセル生産型の作業になります。そのためには作業者のスキルアップと熟練が必要になり、熟練が達成できれば、そこにはノウハウが蓄積され会社の財産になると考えた訳です。
一方で次のような側面も持っています。従来型作業であれば、作業者の入替は問題なくできます。つまり単純な作業なので作業者が辞めても別の人を連れてくれば代わりはすぐ務まるということです。しかしセル生産型作業では、作業者の入替は簡単にはできません。熟練した作業者なので、誰でも代わりが務まるということにはなりません。
さて、この日系工場が目指した結果ですが、実は志半ばで挫折してしまいました。
理由は、これらを進めていた途中に起きたリーマンショックを境に、作業者の定着率が急激に悪化したためです。セル生産型作業は定着が前提となるのですが、その前提が崩れてしまった訳です。もともと中国は日本に比べ定着率は悪いのですが、この日系工場では従来程度の定着率があれば「できる」と考えて始めたのでした。
この日系工場が目指したセル生産型作業は間違っていないと思います。ただし中国工場の工程や作業者のすべてを、この目指した形...
ここで頭に入れておくべきことは、中国では日本に比べ作業者の入れ替わりは激しいですが、全員が入れ替わる訳ではないということ。定着してくれている人もいるはずなので、そういう人たちをコアにしてスキルの向上を図ることです。
次回は、作業者を定着させるためには何が必要かについて考えます。