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機能を起点に形を考案するというプロセスの成功例として,品質工学会でも多くの方々に大きなインパクトを与えた事例がマツダのスカイアクティブエンジンの技術開発です.(掲載の写真は、本稿と無関係です)
通常の自動車開発では燃費,馬力,トルクなどのカタログスペックを大目標として技術開発や製品設計を実施しますが,マツダのスカイアクティブエンジンの技術開発では,熱効率という本質的な機能を大目標に設定し,熱効率の目標値を達成するための下位機能の因果展開を最初に実施しています.
下位機能がCS-T法の現象説明因子に相当します.例えば,着火速度,燃料粒子径,シリンダー内部での化学反応などです.これら現象説明因子のあるべき姿を定義した後...
まさに機能を起点とした理想の技術開発プロセスですが,このプロセスを成功させるためには大前提があることを忘れてはいけません.それは十分な技術蓄積です.長年にわたる経験ベースの技術を蓄積した人財がいない場合,このプロセスを可能にするための技術蓄積の期間が必要なのです.そのゴールのイメージは次のコメントから垣間見ることができます.
「データには現れないエンジンの訴えに愛着を持って謙虚に耳傾ける.そうすると,データに込められたエンジンの声が聞こえてくる.文字には表れないデータの意味が見えてくる」【出典】 ”つくりたいんは世界一のエンジンじゃろうが” 羽山信宏 日刊工業新聞社
このレベルにいかに早く到達するかが本質的な課題と言えます.特に従来にない機能やダントツ性能を実現する新規技術の技術開発ではこれが最大の課題なのです.いきなり形から入って試作品を作り,出口の見えない部分最適のデバックサイクルを続けるよりも,機能を実験的に見出すアプローチの方が結果的には早くゴールに到達するのです.それがCS-T法を起点とした技術開発プロセスです.
◆関連解説記事:品質工学による技術開発(その23)CS-T法とベイズ最適化の融合
【出典】QECompass HPより、筆者のご承諾により編集して掲載
◆[エキスパート会員インタビュー記事] 品質工学の魅力とその創造性への影響(細川 哲夫 氏)
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