CS-T法を起点とした技術開発プロセスとは、乗用車用エンジンの技術開発事例

投稿日

CS-T法を起点とした技術開発プロセスとは、乗用車エンジンの技術開発事例

▼さらに深く学ぶなら!
「品質工学」に関するセミナーはこちら!

機能を起点に形を考案するというプロセスの成功例として,品質工学会でも多くの方々に大きなインパクトを与えた事例がマツダのスカイアクティブエンジンの技術開発です.(掲載の写真は、本稿と無関係です)

 

通常の自動車開発では燃費,馬力,トルクなどのカタログスペックを大目標として技術開発や製品設計を実施しますが,マツダのスカイアクティブエンジンの技術開発では,熱効率という本質的な機能を大目標に設定し,熱効率の目標値を達成するための下位機能の因果展開を最初に実施しています.

 

下位機能がCS-T法の現象説明因子に相当します.例えば,着火速度,燃料粒子径,シリンダー内部での化学反応などです.これら現象説明因子のあるべき姿を定義した後...

CS-T法を起点とした技術開発プロセスとは、乗用車エンジンの技術開発事例

▼さらに深く学ぶなら!
「品質工学」に関するセミナーはこちら!

機能を起点に形を考案するというプロセスの成功例として,品質工学会でも多くの方々に大きなインパクトを与えた事例がマツダのスカイアクティブエンジンの技術開発です.(掲載の写真は、本稿と無関係です)

 

通常の自動車開発では燃費,馬力,トルクなどのカタログスペックを大目標として技術開発や製品設計を実施しますが,マツダのスカイアクティブエンジンの技術開発では,熱効率という本質的な機能を大目標に設定し,熱効率の目標値を達成するための下位機能の因果展開を最初に実施しています.

 

下位機能がCS-T法の現象説明因子に相当します.例えば,着火速度,燃料粒子径,シリンダー内部での化学反応などです.これら現象説明因子のあるべき姿を定義した後に,圧縮比,空燃比などの本質的な制御因子の具体的な水準設定に入ります.

 

まさに機能を起点とした理想の技術開発プロセスですが,このプロセスを成功させるためには大前提があることを忘れてはいけません.それは十分な技術蓄積です.長年にわたる経験ベースの技術を蓄積した人財がいない場合,このプロセスを可能にするための技術蓄積の期間が必要なのです.そのゴールのイメージは次のコメントから垣間見ることができます.

 

「データには現れないエンジンの訴えに愛着を持って謙虚に耳傾ける.そうすると,データに込められたエンジンの声が聞こえてくる.文字には表れないデータの意味が見えてくる」【出典】 ”つくりたいんは世界一のエンジンじゃろうが”  羽山信宏 日刊工業新聞社

 

このレベルにいかに早く到達するかが本質的な課題と言えます.特に従来にない機能やダントツ性能を実現する新規技術の技術開発ではこれが最大の課題なのです.いきなり形から入って試作品を作り,出口の見えない部分最適のデバックサイクルを続けるよりも,機能を実験的に見出すアプローチの方が結果的には早くゴールに到達するのです.それがCS-T法を起点とした技術開発プロセスです.

 

関連解説記事:品質工学による技術開発(その23)CS-T法とベイズ最適化の融合

 

【出典】QECompass HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

◆[エキスパート会員インタビュー記事] 品質工学の魅力とその創造性への影響(細川 哲夫 氏

 

◆関連解説記事:品質工学による技術開発 【連載記事紹介】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

▼さらに深く学ぶなら!
「品質工学」に関するセミナーはこちら!

   続きを読むには・・・


この記事の著者

細川 哲夫

お客様の期待を超える感動品質を備えた製品を継続して提供するために、創造性と効率性を両立した新しい品質工学を一緒に活用しましょう。

お客様の期待を超える感動品質を備えた製品を継続して提供するために、創造性と効率性を両立した新しい品質工学を一緒に活用しましょう。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
トポロジー最適化とは

  トポロジー最適化は、以前から存在する技術です。古くは、ミシガン大学と京都大学の教授がトポロジー最適化論文を発表しています。そして多数の...

  トポロジー最適化は、以前から存在する技術です。古くは、ミシガン大学と京都大学の教授がトポロジー最適化論文を発表しています。そして多数の...


政治の統治機構 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その38)

        この連載では、将来の市場環境に大きく影響を与えるPESTEL(Political:政治、Ec...

        この連載では、将来の市場環境に大きく影響を与えるPESTEL(Political:政治、Ec...


素材の市場開発とは

 素材の市場開発においては、既存の製品に市場喚起可能な商品価値を見出さなければなりません。その為に商品アイデアを考え出し、より価値ある商品に仕上げていくこ...

 素材の市場開発においては、既存の製品に市場喚起可能な商品価値を見出さなければなりません。その為に商品アイデアを考え出し、より価値ある商品に仕上げていくこ...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
プロジェクトの進捗管理 プロジェクト管理の仕組み (その4)

 前回のその3プロジェクトの計画策定に続いて解説します。最後は、プロジェクトの監視と制御、そして、測定と分析です。まとめて進捗管理といっても問題ないと思い...

 前回のその3プロジェクトの計画策定に続いて解説します。最後は、プロジェクトの監視と制御、そして、測定と分析です。まとめて進捗管理といっても問題ないと思い...


トレーサビリティの保証 プロジェクト管理の仕組み (その45)

 前回のその44に続いて解説します。    ハードウェア設計の場合も、要件と回路ブロックの仕様(スペック)、回路ブロックのスペックと部品のス...

 前回のその44に続いて解説します。    ハードウェア設計の場合も、要件と回路ブロックの仕様(スペック)、回路ブロックのスペックと部品のス...


‐市場の観察から開発テ-マを得る‐  製品・技術開発力強化策の事例(その6)

 前回の事例その5に続いて解説します。新技術が社会に普及し始めると、それに関連した新商品を顧客の要求に即応して供給出来ないで、新技術搭載製品の供給不足が起...

 前回の事例その5に続いて解説します。新技術が社会に普及し始めると、それに関連した新商品を顧客の要求に即応して供給出来ないで、新技術搭載製品の供給不足が起...