企業においてオープン・イノベーションを実現するには 研究テーマの多様な情報源(その26)

更新日

投稿日

1.『価値づくり』経営と表裏一体の関係にある「オープン・イノベーション」

 
 前回のその25に続いて解説します。オープン・イノベーションは、世の中に広く存在します。つまり、「オープン」な環境に存在する「価値創出」機会を見つけ、それをこれもまた世の中に広く存在するオープン」な技術やその他の能力を縦横無尽に活用し、それを製品・事業として実現、すなわち「イノベーョン」を起していこうという考え方です。このように、オープン・イノベーションは『価値づくり』経営と表裏一体の関係にあります。
 


2.「ものづくり」の何十倍、何百倍もの収益機会を生むオープン・イノベーション

 
 これは、これまで日本企業が追求してきた「ものづくり」とは対極の概念です。「ものづくり」では、自社の従来からの「ものづくり」における強みを活用し、製品や事業を展開していこうという概念です。そのため、収益機会は、自社の得意とする能力の近傍の極めて限られた領域を対象としています。 しかし、オープン・イノベーション(『価値づくり』)では、広い世界の中で、自社の従来からの強みに拘泥せず、広く価値創出・収益機会を見つけて行こうという考え方です。したがって、自社にとってのオープン・イノベーション(『価値づくり』)では、「ものづくり」の何倍、何十倍、何百倍もの収益の機会の実現が可能ということです。
 


3.日本企業では市民権を得ていないオープン・イノベーション

 
 このようにオープン・イノベーションは、企業経営の歴史の中でも、まさに「画期的」な経営の概念と言えることができます。したがって、オープン・イノベーションはもはや一部の学者やコンサルティング会社の作った一時的な経営上の流行ではありません。しかし、日本企業においては、オープン・イノベーションは、市民権を得ているとは到底言える状況にはありませえん。
 


4.日本企業における大きな誤解:オープン・イノベーションは『目的』

 
 一部の日本企業においては、オープン・イノベーション担当部門が置かれ、この活動に積極的に取組む姿勢が見られます。しかし、オープン・イノベーションの本質が理解されることなく、空回りをしている感もあります。その大きな理由が、オープン・イノベーションは『手段』に過ぎないということです。
 
 『価値づくり』経営とオープン・イノベーションは表裏一体の関係であると述べましたが、重要な点で異なります。それは『価値づくり』経営は企業の『目的』である一方で、オープン・イノベーションは、この目的を実現するためのあくまでも『手段』であるということです。日本企業においては、この点が理解されずに、オープン・イノベーションがあたかも『目的』であるがごとく取り扱われているように思えます。本来の企業の『目的』である『価値づくり』経営の重要性・その背景を理解せずに、『手段』に過ぎないオープン・イノベーションを追求する、させることは大変危険です。
 
 欧米の企業においては、組織の指示命令系統は極めて強力であり、組織の下部にいる社員がオープン・イノベーションの意味・意義を理解していかなくても、オープン・イノベーションは実行されていきます。しかし、良くも悪くも、社員の主体性に任される傾向の強い日本企業においては、社員がこのオープン・イノベーションの意味・意義を理解していない中で、オープンイノベーションを追求しても、それは機能しません。研究者に、自分達の仕事を奪うものだと誤解されることの多いオープン・イノベーションでは、なおさらです。
 

5.『価値づくり』の追求の中で、オープン・イノベーションが実行される

 
 『価値づくり』経営の「もの...

1.『価値づくり』経営と表裏一体の関係にある「オープン・イノベーション」

 
 前回のその25に続いて解説します。オープン・イノベーションは、世の中に広く存在します。つまり、「オープン」な環境に存在する「価値創出」機会を見つけ、それをこれもまた世の中に広く存在するオープン」な技術やその他の能力を縦横無尽に活用し、それを製品・事業として実現、すなわち「イノベーョン」を起していこうという考え方です。このように、オープン・イノベーションは『価値づくり』経営と表裏一体の関係にあります。
 


2.「ものづくり」の何十倍、何百倍もの収益機会を生むオープン・イノベーション

 
 これは、これまで日本企業が追求してきた「ものづくり」とは対極の概念です。「ものづくり」では、自社の従来からの「ものづくり」における強みを活用し、製品や事業を展開していこうという概念です。そのため、収益機会は、自社の得意とする能力の近傍の極めて限られた領域を対象としています。 しかし、オープン・イノベーション(『価値づくり』)では、広い世界の中で、自社の従来からの強みに拘泥せず、広く価値創出・収益機会を見つけて行こうという考え方です。したがって、自社にとってのオープン・イノベーション(『価値づくり』)では、「ものづくり」の何倍、何十倍、何百倍もの収益の機会の実現が可能ということです。
 


3.日本企業では市民権を得ていないオープン・イノベーション

 
 このようにオープン・イノベーションは、企業経営の歴史の中でも、まさに「画期的」な経営の概念と言えることができます。したがって、オープン・イノベーションはもはや一部の学者やコンサルティング会社の作った一時的な経営上の流行ではありません。しかし、日本企業においては、オープン・イノベーションは、市民権を得ているとは到底言える状況にはありませえん。
 


4.日本企業における大きな誤解:オープン・イノベーションは『目的』

 
 一部の日本企業においては、オープン・イノベーション担当部門が置かれ、この活動に積極的に取組む姿勢が見られます。しかし、オープン・イノベーションの本質が理解されることなく、空回りをしている感もあります。その大きな理由が、オープン・イノベーションは『手段』に過ぎないということです。
 
 『価値づくり』経営とオープン・イノベーションは表裏一体の関係であると述べましたが、重要な点で異なります。それは『価値づくり』経営は企業の『目的』である一方で、オープン・イノベーションは、この目的を実現するためのあくまでも『手段』であるということです。日本企業においては、この点が理解されずに、オープン・イノベーションがあたかも『目的』であるがごとく取り扱われているように思えます。本来の企業の『目的』である『価値づくり』経営の重要性・その背景を理解せずに、『手段』に過ぎないオープン・イノベーションを追求する、させることは大変危険です。
 
 欧米の企業においては、組織の指示命令系統は極めて強力であり、組織の下部にいる社員がオープン・イノベーションの意味・意義を理解していかなくても、オープン・イノベーションは実行されていきます。しかし、良くも悪くも、社員の主体性に任される傾向の強い日本企業においては、社員がこのオープン・イノベーションの意味・意義を理解していない中で、オープンイノベーションを追求しても、それは機能しません。研究者に、自分達の仕事を奪うものだと誤解されることの多いオープン・イノベーションでは、なおさらです。
 

5.『価値づくり』の追求の中で、オープン・イノベーションが実行される

 
 『価値づくり』経営の「ものづくり」経営に対する優位性は、理解しやすいものです。一方で、オープン・イノベーションは、それ自体では、一般の社員にはその意味・意義はピントこない概念です。そのため、企業のイニシャティブや組織名称としてオープン・イノベーションを使うことは、私はあまり賛成しません。一部の経営陣や、経営企画部門の人達には理解されても、実際に日々の活動の中でオープン・イノベーションを実行する立場にある社員には、オープン・イノベーションは無関心で済まされるどころか、誤解や反発を招くものです。オープン・イノベーションは『価値づくり』の追求の中で、実行されるのです。その為、オープン・イノベーションを実現するためには、『価値づくり』の概念を組織全体に浸透させる活動や体制が必要となります。
 
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
設計部門の仕組み改革 【連載記事紹介】おすすめセミナーのご紹介  

  設計部門の仕組み改革の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆設計部門と製造部門 製造部門における設備投資は、設備...

  設計部門の仕組み改革の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆設計部門と製造部門 製造部門における設備投資は、設備...


リーン製品開発の基本原則(その2)

   前回の「リーン製品開発の基本原則(その1)」に続けて解説します。 3. リーン製品開発の基本原則3 【コミュニケーションの見える...

   前回の「リーン製品開発の基本原則(その1)」に続けて解説します。 3. リーン製品開発の基本原則3 【コミュニケーションの見える...


普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その182)妄想とイノベーション創出

  ・見出しの番号は、前回からの連番です。 【目次】 国内最多のものづくりに関するセミナー掲載中! ものづくりドットコ...

  ・見出しの番号は、前回からの連番です。 【目次】 国内最多のものづくりに関するセミナー掲載中! ものづくりドットコ...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
「調整」の仕組み 擦り合わせ型開発 基本の仕組み (その1)

       【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わ...

       【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わ...


羽のない扇風機が創られた時の目標設定、横並び競争と何が違うのか?

【目次】 1. 福原流QFDは技術者の創造性を引き出す技法 私も含めて我々技術者の思考は知らず知らずにうちに技術手段のHOWを考え...

【目次】 1. 福原流QFDは技術者の創造性を引き出す技法 私も含めて我々技術者の思考は知らず知らずにうちに技術手段のHOWを考え...


技術経営を考える

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...