技術戦略 研究テーマの多様な情報源(その32)

更新日

投稿日

 
inf08
 
前回の『価値づくり』に向けての三位一体の技術戦略 第2回では、『価値づくり』に向けての三位一体モデルのスパーク(新結合)の原料について、議論しました。今回の第3回では、このスパークをどういう仕組みの中で起こすのか、すなわち個人単位なのか、組織単位なのか、について議論をしたいと思います
 

◆スパークを起こす単位:まずは個人単位でのスパークを目指す

 
 セミナーなどで、革新的なテーマ(大きな顧客価値を実現するテーマと定義)の創出のためのスパークの話をすると良く受ける質問に、スパークは個人単位で起こすのが良いのか、組織単位で起こすのが良いのかがあります。現実には、両方で起こすことが良いのです。
 
 なぜなら、全体としてスパークは数多く起きれば起きるほど良いですし、また、革新的なテーマ創出できれば、そのメリットは大きく、それだけの投資をする価値は十分にあるからです。しかし、個人単位か組織単位かと問われれば、マネジメントの視点からは、まずは個人単位でスパークを起こすことに多くの時間とエネルギーを注ぐことが必要です。理由は3つあります。
 

(1)個人単位でスパークを起こすことが重要な理由:

         スパークの頻度

 
 まず、個人単位の方がずっとスパークの頻度が高まるからです。個人の頭の中にスパークの原料である市場と技術の知識が詰まっていれば、スパークは通勤途上、風呂の中、トイレの中、睡眠中ですら起こる可能性があり、時間と場所を選びません。極論すると24時間スパークが起こる可能性があります。
 
 しかし、組織単位となると、ある人の頭の中にある原料と他の人の頭の中にある原料が新結合(スパーク)する必要性があり、複数の社員が一同に会し、議論する機会が求められます。そのような機会を始終持つことは、現実的にはほとんど不可能です。
 

(2)個人単位でスパークを起こすことが重要な理由:

         スパークが起こる場の数

 
 加えて、組織単位でスパークを起こすとなると、スパークの回数はスパークのための議論の機会の数によって規定されてしまい、そのような場を公式、非公式に沢山持つにしても、限定的です。
 
 しかし、個人単位であれば、関連する社員一人一人の頭の中でスパークが起こる可能性がある訳で、その数は組織単位での議論の場の数よりも相当多くなるでしょう。
 

(3)個人単位でスパークを起こすことが重要な理由:

   これまで多くの企業が個人単位でスパークを体系的に起こすことに工夫をしてこなかった

 
 もちろん多くの企業で、これまでは個人単位で良いテーマを出すことが期待されてきたわけですが、そのためのマネジメントが不在であったとい事実があります。スパークには前回議論したように、市場知識、技術知識(自社内に存在する技術に限定せず広く世の中に存在する技術)が必要となりますが、自社に存在する技術は置いておいて、その他の市場知識や社外に存在する技術を集め、個人単位で共有する仕組みとその運用には、多くの企業において経営資源が使われてきていません。
 
 しかし、言い換えると、だからこそそのような活動をこれから積極的に行えば、革新的テーマが数多く創出できる余地が大きいと言えます。
 
 以上より、個人単位でスパークを起こすため、すなわち自社の多くの社員を対象...
 
inf08
 
前回の『価値づくり』に向けての三位一体の技術戦略 第2回では、『価値づくり』に向けての三位一体モデルのスパーク(新結合)の原料について、議論しました。今回の第3回では、このスパークをどういう仕組みの中で起こすのか、すなわち個人単位なのか、組織単位なのか、について議論をしたいと思います
 

◆スパークを起こす単位:まずは個人単位でのスパークを目指す

 
 セミナーなどで、革新的なテーマ(大きな顧客価値を実現するテーマと定義)の創出のためのスパークの話をすると良く受ける質問に、スパークは個人単位で起こすのが良いのか、組織単位で起こすのが良いのかがあります。現実には、両方で起こすことが良いのです。
 
 なぜなら、全体としてスパークは数多く起きれば起きるほど良いですし、また、革新的なテーマ創出できれば、そのメリットは大きく、それだけの投資をする価値は十分にあるからです。しかし、個人単位か組織単位かと問われれば、マネジメントの視点からは、まずは個人単位でスパークを起こすことに多くの時間とエネルギーを注ぐことが必要です。理由は3つあります。
 

(1)個人単位でスパークを起こすことが重要な理由:

         スパークの頻度

 
 まず、個人単位の方がずっとスパークの頻度が高まるからです。個人の頭の中にスパークの原料である市場と技術の知識が詰まっていれば、スパークは通勤途上、風呂の中、トイレの中、睡眠中ですら起こる可能性があり、時間と場所を選びません。極論すると24時間スパークが起こる可能性があります。
 
 しかし、組織単位となると、ある人の頭の中にある原料と他の人の頭の中にある原料が新結合(スパーク)する必要性があり、複数の社員が一同に会し、議論する機会が求められます。そのような機会を始終持つことは、現実的にはほとんど不可能です。
 

(2)個人単位でスパークを起こすことが重要な理由:

         スパークが起こる場の数

 
 加えて、組織単位でスパークを起こすとなると、スパークの回数はスパークのための議論の機会の数によって規定されてしまい、そのような場を公式、非公式に沢山持つにしても、限定的です。
 
 しかし、個人単位であれば、関連する社員一人一人の頭の中でスパークが起こる可能性がある訳で、その数は組織単位での議論の場の数よりも相当多くなるでしょう。
 

(3)個人単位でスパークを起こすことが重要な理由:

   これまで多くの企業が個人単位でスパークを体系的に起こすことに工夫をしてこなかった

 
 もちろん多くの企業で、これまでは個人単位で良いテーマを出すことが期待されてきたわけですが、そのためのマネジメントが不在であったとい事実があります。スパークには前回議論したように、市場知識、技術知識(自社内に存在する技術に限定せず広く世の中に存在する技術)が必要となりますが、自社に存在する技術は置いておいて、その他の市場知識や社外に存在する技術を集め、個人単位で共有する仕組みとその運用には、多くの企業において経営資源が使われてきていません。
 
 しかし、言い換えると、だからこそそのような活動をこれから積極的に行えば、革新的テーマが数多く創出できる余地が大きいと言えます。
 
 以上より、個人単位でスパークを起こすため、すなわち自社の多くの社員を対象として、それら社員の頭の中でスパークを起こし、テーマの創出量を増やすことに向けた大胆な工夫を含む様々な施策や、そこへの経営資源(社員やマネジメントの時間と資金)の投入が、極めて重要となります。
 
 しかし、組織単位でのスパークの機会を持つことも、個人単位でのスパークを期待することと同様に重要です。また、組織単位でテーマ創出するには、テーマ創出専任部門という組織的なアプローチもあります。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
環境 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その42)

        現在、この連載ではマクロ環境分析の解説をしていますが、今回は、PESTEL(Politica...

        現在、この連載ではマクロ環境分析の解説をしていますが、今回は、PESTEL(Politica...


開発テーマ選定における3つの視点 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その6)

        新規事業・新商品を開発するにあたって「何を」開発するべきかを決定することは難しく、結果を左右...

        新規事業・新商品を開発するにあたって「何を」開発するべきかを決定することは難しく、結果を左右...


MVP(minimum viable product:実用最小限の製品)とは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その57)

1. 新規事業や新商品の立ち上げは、なぜスピードが問われるのか  新規事業や新商品の立ち上げをミッションに活動する際に必ずといっていいほどトップから...

1. 新規事業や新商品の立ち上げは、なぜスピードが問われるのか  新規事業や新商品の立ち上げをミッションに活動する際に必ずといっていいほどトップから...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
プラント建設業者の効率的・効果的な探し方とは

        今回は、配管、土木建築、電気・計装、機器の設計を担当する設計業者に設計を注文する事例で、大型プラント建設に対応できるような業者を効率...

        今回は、配管、土木建築、電気・計装、機器の設計を担当する設計業者に設計を注文する事例で、大型プラント建設に対応できるような業者を効率...


技術資源の有効活用: 事例紹介 (その1)

 今回から2回に分けて、TRMによる活動の事例紹介をいたします。TRM(Technical Resource Management)は自社が保有する潜在的...

 今回から2回に分けて、TRMによる活動の事例紹介をいたします。TRM(Technical Resource Management)は自社が保有する潜在的...


トレーサビリティの保証 プロジェクト管理の仕組み (その43)

 前回までシステム設計について、その基本の考え方や実施方法について解説してきました。多くの組織で、システム設計は、できる人だけの作業になっており、設計の最...

 前回までシステム設計について、その基本の考え方や実施方法について解説してきました。多くの組織で、システム設計は、できる人だけの作業になっており、設計の最...