技術戦略 研究テーマの多様な情報源(その30)

更新日

投稿日

 
 前回のその29に続いて解説します。「市場起点の思考と活動」、「オープン・イノベーションの徹底」および「コア技術戦略の追求」の3つの要素による、「『価値づくり』に向けての三位一体の技術戦略 」を解説します。なぜ三位一体なのかというと、『価値づくり』を実現し、その結果、高収益を得るには、これら3つの要素から構成される技術戦略が必須であり、加えてこれら3つの要素は互いに密接な相乗効果的関係を持つからです。なぜこの3つの要素により、高収益を実現することができるかを解説します。
 

1.「市場起点の思考と活動」

 
 まず高収益を実現するには、市場という場で、その充足により大きな顧客価値を生み出す対象としての市場ニーズを見つけなければなりません。なぜなら、顧客が認識する価値の大きさが、顧客が支払ってもよいと思う対価を決め、最終的に自社の収益の多寡を規定するからです。
 
 しかし、市場でそのような機会を見つけることは容易ではなく、またその方法にはマジックはありません。王道はあくまで市場を徹底して理解する活動を継続して続けることです。顧客価値を認識しその大きさを決めるのは、自社ではなく、顧客です。いくら自社が市場の知識なしに提供すべき顧客価値を想定しようと努力しても、その効果は極めて限定的です。自社が机上で考えるのではなく、市場の現場に身を置き、市場やその構成者である顧客を理解しようとする活動を積極的にかつ継続的に行うことです。それが「市場起点の思考と活動」です。
 

2.「オープン・イノベーションの徹底」

 
 しかし、そのような「市場起点の思考と活動」により市場で見つけた市場ニーズを充足し、顧客価値として実現するには、自社の自力だけで事足りる可能性は低いのです。なぜなら、規定される市場ニーズは、自社の都合や能力とは独立して存在し、それが起点だからです。そこには自社には欠けた技術や能力が必要とされるのが普通です。そのような場合、一から自社でそのための技術や能力を構築していては、競合企業にその実現機会を奪われてしまいます。そこで、必要なのがそういった技術や能力を既に持つ企業を探し、その機能や能力の提供を受け、早期に製品・サービスを実現し、上市することです。それが「オープン・イノベーションの徹底」です。
 

3.「コア技術戦略の追求」

 
 自社の強い技術や能力がないところで、他社の力を借りて製品やサービスを実現しても、高い収益は期待できません。なぜなら、自社が保有する能力の顧客価値創出への貢献度が、その製品・サービスの利益率を規定するからです。そのために、自社が強い能力・技術を常に保持しておく必要があります。またその強い技術は、できるだけ広い適用範囲を持ちまた、その数はできるだけ多い方が良いのです。
 
 なぜなら、その3つがあれば、「市場起点の思考と活動」に広がりが生まれ、広い領域から顧客価値の提供機会が創出され、そして大きな収益をもたらすからです...
 
 前回のその29に続いて解説します。「市場起点の思考と活動」、「オープン・イノベーションの徹底」および「コア技術戦略の追求」の3つの要素による、「『価値づくり』に向けての三位一体の技術戦略 」を解説します。なぜ三位一体なのかというと、『価値づくり』を実現し、その結果、高収益を得るには、これら3つの要素から構成される技術戦略が必須であり、加えてこれら3つの要素は互いに密接な相乗効果的関係を持つからです。なぜこの3つの要素により、高収益を実現することができるかを解説します。
 

1.「市場起点の思考と活動」

 
 まず高収益を実現するには、市場という場で、その充足により大きな顧客価値を生み出す対象としての市場ニーズを見つけなければなりません。なぜなら、顧客が認識する価値の大きさが、顧客が支払ってもよいと思う対価を決め、最終的に自社の収益の多寡を規定するからです。
 
 しかし、市場でそのような機会を見つけることは容易ではなく、またその方法にはマジックはありません。王道はあくまで市場を徹底して理解する活動を継続して続けることです。顧客価値を認識しその大きさを決めるのは、自社ではなく、顧客です。いくら自社が市場の知識なしに提供すべき顧客価値を想定しようと努力しても、その効果は極めて限定的です。自社が机上で考えるのではなく、市場の現場に身を置き、市場やその構成者である顧客を理解しようとする活動を積極的にかつ継続的に行うことです。それが「市場起点の思考と活動」です。
 

2.「オープン・イノベーションの徹底」

 
 しかし、そのような「市場起点の思考と活動」により市場で見つけた市場ニーズを充足し、顧客価値として実現するには、自社の自力だけで事足りる可能性は低いのです。なぜなら、規定される市場ニーズは、自社の都合や能力とは独立して存在し、それが起点だからです。そこには自社には欠けた技術や能力が必要とされるのが普通です。そのような場合、一から自社でそのための技術や能力を構築していては、競合企業にその実現機会を奪われてしまいます。そこで、必要なのがそういった技術や能力を既に持つ企業を探し、その機能や能力の提供を受け、早期に製品・サービスを実現し、上市することです。それが「オープン・イノベーションの徹底」です。
 

3.「コア技術戦略の追求」

 
 自社の強い技術や能力がないところで、他社の力を借りて製品やサービスを実現しても、高い収益は期待できません。なぜなら、自社が保有する能力の顧客価値創出への貢献度が、その製品・サービスの利益率を規定するからです。そのために、自社が強い能力・技術を常に保持しておく必要があります。またその強い技術は、できるだけ広い適用範囲を持ちまた、その数はできるだけ多い方が良いのです。
 
 なぜなら、その3つがあれば、「市場起点の思考と活動」に広がりが生まれ、広い領域から顧客価値の提供機会が創出され、そして大きな収益をもたらすからです。それが「コア技術戦略の追求」の部分になります。つまり、自社のコア技術を設定し、常にそれを意識し、そのような強みが使える市場での機会の発見の努力を行い、大きな顧客価値創出機会が見つかった場合には、自社に欠けている技術や能力をオープン・イノベーションで見つけ、早期に自社のものとすることです。
 
 以上の『価値づくり』に向けての三位一体の技術戦略3要素により、『価値づくり』が実現できるのですが、実はこれらに加えて、3要素間には互いに相乗効果的な関係があります。これらの相乗効果については、第2回で、解説します。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
改革をやりきる秘訣とは~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その15)

【目次】 ◆ 両利きの経営に成功する最初で最後の一手 今回は、両利きの経営に成功する最初で最後の一手とはを解説します。 &nbs...

【目次】 ◆ 両利きの経営に成功する最初で最後の一手 今回は、両利きの経営に成功する最初で最後の一手とはを解説します。 &nbs...


新商品開発リーダーに必要なスキルとは  新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その55)

        今回は、新商品開発リーダーに必要なスキルで最も大切な考え方として、「チームで成果を出すための...

        今回は、新商品開発リーダーに必要なスキルで最も大切な考え方として、「チームで成果を出すための...


ミドルマネージャーのリーダーシップとは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その67)

◆ ミドルマネージャーが組織をリードしよう 1、環境変化に伴う計画変更  2020年新型コロナウィルスの影響も大きく、昨年度の目標が未達成となって...

◆ ミドルマネージャーが組織をリードしよう 1、環境変化に伴う計画変更  2020年新型コロナウィルスの影響も大きく、昨年度の目標が未達成となって...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
仕組みの見直しに成功する組織2 プロジェクト管理の仕組み (その26)

 前回の仕組みの見直しに成功する組織1に続いて解説します。    仕組みの見直しに成功する組織の考察ですが、今回は、マネジメントのコミットメ...

 前回の仕組みの見直しに成功する組織1に続いて解説します。    仕組みの見直しに成功する組織の考察ですが、今回は、マネジメントのコミットメ...


羽のない扇風機が創られた時の目標設定、横並び競争と何が違うのか?

【目次】 1. 福原流QFDは技術者の創造性を引き出す技法 私も含めて我々技術者の思考は知らず知らずにうちに技術手段のHOWを考え...

【目次】 1. 福原流QFDは技術者の創造性を引き出す技法 私も含めて我々技術者の思考は知らず知らずにうちに技術手段のHOWを考え...


作業要素の進捗分析2 プロジェクト管理の仕組み (その19)

  前回のその18:作業要素の進捗分析1に続いて解説します。    図50は製品構造の観点から管理単位にブレークダウンした例です。製品がどの...

  前回のその18:作業要素の進捗分析1に続いて解説します。    図50は製品構造の観点から管理単位にブレークダウンした例です。製品がどの...