オープン・イノベーションを社内で実現する方法 研究テーマの多様な情報源(その29)

更新日

投稿日

1.自社のコア技術を外部に発信する理由

 
 前回のその28に続いて解説します。それでは、まず自社のコア技術を外部に発信する理由は何なのでしょうか、それは、外部の目で自社の存在を見つけてもらい、先方からの自社へのコンタクトを期待するものです。
 

2.コア技術の外部発信対象は多様であることを前提に

 
 コア技術はまだ見ぬ潜在パートナーを対象とするわけで、どのような企業、個人、研究機関が問い合わせしてくるかは事前にはわかりません。というよりも、むしろ多様な対象に積極的にアピールするように外部発信をしなければなりません。そのためには、潜在パートナーは多様であることを前提に情報発信をする必要があります。
 
 コア技術の発信内容を考える場合に考えなければならない多様性の軸は、次の3点があります。
 
(1)対象者の技術についての知識レベルです。技術について良く知っているパートナーのみを対象とするわけではありません。むしろ、技術については知らない潜在パートナーにもアピールできるような工夫をする必要があります。技術を良く知っている潜在パートナーであれば、コア技術の多少の内容と自社がパートナーを求めていることを発信すれば、先方の努力で探してくれる可能性がありますが、技術について知らない潜在パートナーはそのようなことは期待できません。
  
(2)先方の関心度、切迫度です。既に非常に困っていて、積極的に対象技術を探している潜在パートナーと、何か面白い技術があればというレベルの潜在パートナーが考えられます。それにより当然、発信内容や発信媒体に工夫が必要です。前者であれば、先方は積極的にインターネットを使い検索するでしょうが、後者はそのようなことはありません。
 
(3)使用言語です。英語で十分と思うのは早計で、潜在パートナーにはさまざまなレベルが考えられ、英語が分からないパートナーの存在も十分考えられます。多言語、例えば中国語、韓国語、スペイン語と言った言語でも発信する必要があります。中国語も簡体字(中国本土で利用)と繁体字(台湾・香港で利用)の両方を含めるぐらいの、細かい対応が求められます。
 

3.発信情報の視点(アウトバウンドを例に)

 
 上で議論した1つ目の多様性の軸への対応には、以下の視点での情報が必要です。
 

(1)その技術のメカニズム

 
 技術について良く知っている顧客は、当然その技術そのものへの関心は大きいと考えられます。具体的に必要な技術を特定し、それをネット検索等で探すことが想定されます。そのために、その技術のメカニズムの特徴を明確に発信する必要があります。
 

(2)その技術で実現できる機能

 
 オープン・イノベーションの対象者は多様で、自ら必要技術を特定できるパートナーは限定的であろうと思われます。むしろ、技術は知らないが、その技術で実現できる『機能』を求めているパートナーは多いと想定されます。そのような対象者を前提には、その技術で何ができるのかすなわち『機能』を発信する必要があります。ここで一点注意しな...

1.自社のコア技術を外部に発信する理由

 
 前回のその28に続いて解説します。それでは、まず自社のコア技術を外部に発信する理由は何なのでしょうか、それは、外部の目で自社の存在を見つけてもらい、先方からの自社へのコンタクトを期待するものです。
 

2.コア技術の外部発信対象は多様であることを前提に

 
 コア技術はまだ見ぬ潜在パートナーを対象とするわけで、どのような企業、個人、研究機関が問い合わせしてくるかは事前にはわかりません。というよりも、むしろ多様な対象に積極的にアピールするように外部発信をしなければなりません。そのためには、潜在パートナーは多様であることを前提に情報発信をする必要があります。
 
 コア技術の発信内容を考える場合に考えなければならない多様性の軸は、次の3点があります。
 
(1)対象者の技術についての知識レベルです。技術について良く知っているパートナーのみを対象とするわけではありません。むしろ、技術については知らない潜在パートナーにもアピールできるような工夫をする必要があります。技術を良く知っている潜在パートナーであれば、コア技術の多少の内容と自社がパートナーを求めていることを発信すれば、先方の努力で探してくれる可能性がありますが、技術について知らない潜在パートナーはそのようなことは期待できません。
  
(2)先方の関心度、切迫度です。既に非常に困っていて、積極的に対象技術を探している潜在パートナーと、何か面白い技術があればというレベルの潜在パートナーが考えられます。それにより当然、発信内容や発信媒体に工夫が必要です。前者であれば、先方は積極的にインターネットを使い検索するでしょうが、後者はそのようなことはありません。
 
(3)使用言語です。英語で十分と思うのは早計で、潜在パートナーにはさまざまなレベルが考えられ、英語が分からないパートナーの存在も十分考えられます。多言語、例えば中国語、韓国語、スペイン語と言った言語でも発信する必要があります。中国語も簡体字(中国本土で利用)と繁体字(台湾・香港で利用)の両方を含めるぐらいの、細かい対応が求められます。
 

3.発信情報の視点(アウトバウンドを例に)

 
 上で議論した1つ目の多様性の軸への対応には、以下の視点での情報が必要です。
 

(1)その技術のメカニズム

 
 技術について良く知っている顧客は、当然その技術そのものへの関心は大きいと考えられます。具体的に必要な技術を特定し、それをネット検索等で探すことが想定されます。そのために、その技術のメカニズムの特徴を明確に発信する必要があります。
 

(2)その技術で実現できる機能

 
 オープン・イノベーションの対象者は多様で、自ら必要技術を特定できるパートナーは限定的であろうと思われます。むしろ、技術は知らないが、その技術で実現できる『機能』を求めているパートナーは多いと想定されます。そのような対象者を前提には、その技術で何ができるのかすなわち『機能』を発信する必要があります。ここで一点注意しなければならなのが、その技術で実現できる機能は1つではないことが多いということです。したがって、その技術で実現できる『機能』を複数、できるだけ網羅的に考え、それらを発信する必要があります。
 

(3)その技術で実現できる製品・サービス用途例

 
 中には機能レベルでの説明だけでもピントこないというステーク・ホルダーもいるでしょう。そのためにも、その技術で実現できる用途例、すなわちその技術で実現できる機能を一歩進めて、その技術(機能)を使って実現できる製品やサービスの用途事例を示すことです。
 
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
新規事業、新商品開発に対する3つの成功要因

 新規事業成功への鍵は、コンセプトづくり、試作開発、製造販売へのプロジェクトで常に①創れるか、②売れるか、③儲かるかを問い続けることと言われます。  ポ...

 新規事業成功への鍵は、コンセプトづくり、試作開発、製造販売へのプロジェクトで常に①創れるか、②売れるか、③儲かるかを問い続けることと言われます。  ポ...


内発的動機付け 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その79)

 前回は内発的動機付けと外発的動機付けについて、そして内発的動機付けが好奇心であるということを解説しました。今回は、内発的動機付けを生み出すために重要...

 前回は内発的動機付けと外発的動機付けについて、そして内発的動機付けが好奇心であるということを解説しました。今回は、内発的動機付けを生み出すために重要...


設計の信頼性・安全性を考える

 設計のしくみ確立と設計品質作り込み法として、今回は、設計ミスと信頼性・安全性について考えてみます。新製品を開発する場合、お客様の要求を理解して、デザイン...

 設計のしくみ確立と設計品質作り込み法として、今回は、設計ミスと信頼性・安全性について考えてみます。新製品を開発する場合、お客様の要求を理解して、デザイン...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
管理力より技術力を磨け

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...


R&Dマネジメントの基本

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...


設計部門の仕組み構築(その1)

【設計部門の仕組み構築 連載目次】 1. 設計部門の仕組み構築 2. 設計部門の仕組み構築(解決すべき根本原因) 3. 設計部門の仕組み構築(具...

【設計部門の仕組み構築 連載目次】 1. 設計部門の仕組み構築 2. 設計部門の仕組み構築(解決すべき根本原因) 3. 設計部門の仕組み構築(具...