研究者の抵抗を払拭する 研究テーマの多様な情報源(その22)

更新日

投稿日

1.研究者へのインパクトが見えない(オープン・イノベーションへの抵抗理由)

 
 研究者に限らず企業の社員は、会社の新しい取組に対しては、まずは抵抗します。そのため、まずオープン・イノベーションにも否定的な反応をとります。その理由は、なにでしょう。
 

(1)研究者の直観的な脅威

 
 オープン・イノベーションは技術を含む外部のアイデアを社内に取り込みましょう、ということですので、研究を生業としている研究者にとっては、自分達の存在価値への脅威と考えても不思議はありません。特に前回から議論しているのは、「既存」のコア技術の強化ですので、まさにこの領域は、日々の研究者の活動領域そのものです。自社にない領域の技術であれば納得感はありますが、自分達の活動のコアの分野ですので、抵抗はより大きくなるものです。
 

(2)見えないが故の抵抗

 
 上のような直観的な脅威があることもあり、オープン・イノベーションという横文字言葉の活動には、具体的に自分達の活動へのインパクトが見えない段階では、とりあえず抵抗しておこうということになります。これは人間のごく自然の対応です。
 

2.研究者の活躍の場や視野を広げるオープン・イノベーション

 
 従って、企業の視点だけではなく、研究者にとってオープン・イノベーションはどういう意味があるのかをきちんと説明し、理解を求める必要があります。そして、現実的には既存コア技術の強化のための(その他の目的のオープン・イノベーションも同様の効果がありますが)オープン・イノベーションは以下のように、研究者により広い活躍の場や視野を与えるものとして十分説明し、納得してもらう必要があります。
 

(1)研究者の活動対象領域を広げる

 
 市場の変化・ニーズに合わせてコア技術を強化しなければなりませんが、コア技術を対象としたオープン・イノベーションでは、外部から導入された技術は組織の中に強みとして内部化されます。その結果、当該技術を使ったより多くの製品群が市場に投入され、また隣接した周辺には新たな研究対象分野が広がります。そのため、研究者としての存在価値が損なわれるどころか、その存在価値はより高まることになります。
 

(2)導入技術の評価には研究者が保有する知識は必須

 
 すでに社内の研究者は、そのコア技術分野の知見を深く保...

1.研究者へのインパクトが見えない(オープン・イノベーションへの抵抗理由)

 
 研究者に限らず企業の社員は、会社の新しい取組に対しては、まずは抵抗します。そのため、まずオープン・イノベーションにも否定的な反応をとります。その理由は、なにでしょう。
 

(1)研究者の直観的な脅威

 
 オープン・イノベーションは技術を含む外部のアイデアを社内に取り込みましょう、ということですので、研究を生業としている研究者にとっては、自分達の存在価値への脅威と考えても不思議はありません。特に前回から議論しているのは、「既存」のコア技術の強化ですので、まさにこの領域は、日々の研究者の活動領域そのものです。自社にない領域の技術であれば納得感はありますが、自分達の活動のコアの分野ですので、抵抗はより大きくなるものです。
 

(2)見えないが故の抵抗

 
 上のような直観的な脅威があることもあり、オープン・イノベーションという横文字言葉の活動には、具体的に自分達の活動へのインパクトが見えない段階では、とりあえず抵抗しておこうということになります。これは人間のごく自然の対応です。
 

2.研究者の活躍の場や視野を広げるオープン・イノベーション

 
 従って、企業の視点だけではなく、研究者にとってオープン・イノベーションはどういう意味があるのかをきちんと説明し、理解を求める必要があります。そして、現実的には既存コア技術の強化のための(その他の目的のオープン・イノベーションも同様の効果がありますが)オープン・イノベーションは以下のように、研究者により広い活躍の場や視野を与えるものとして十分説明し、納得してもらう必要があります。
 

(1)研究者の活動対象領域を広げる

 
 市場の変化・ニーズに合わせてコア技術を強化しなければなりませんが、コア技術を対象としたオープン・イノベーションでは、外部から導入された技術は組織の中に強みとして内部化されます。その結果、当該技術を使ったより多くの製品群が市場に投入され、また隣接した周辺には新たな研究対象分野が広がります。そのため、研究者としての存在価値が損なわれるどころか、その存在価値はより高まることになります。
 

(2)導入技術の評価には研究者が保有する知識は必須

 
 すでに社内の研究者は、そのコア技術分野の知見を深く保有していますので、補強すべき技術についての高い評価能力を持っています。まさに研究者の知識が積極的に生かされる場が拡大します。
 

(3)知識や視野が拡大する

 
 海外を含め外部の技術や研究者・技術者に触れる機会が増え、その結果研究者の知識が拡大し、そしてその視野も大きく広がります。このような効果は、長期的には当然組織に大きなインパクトを与えます。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
ABテストの代替、統計的因果推論の反実仮想アプローチ データ分析講座(その300)

  ABテストとは、例えばユーザをA群(処置群)とB群(統制群)に分け、どちらのほうが好成績を納めるのかをデータで確かめたりするアプローチ...

  ABテストとは、例えばユーザをA群(処置群)とB群(統制群)に分け、どちらのほうが好成績を納めるのかをデータで確かめたりするアプローチ...


予測分析とは、予測分析の利点:データ分析講座(その317)

  【記事要約】 「どうなっているの」に応える、振り返りのための分析を超えて、先を見通した予測分析(Predictive Analyti...

  【記事要約】 「どうなっているの」に応える、振り返りのための分析を超えて、先を見通した予測分析(Predictive Analyti...


統計的機械学習で使用する混同行列と評価指標 データ分析講座(その296)

  統計的機械学習の世界に、2 値分類問題というものがあります。例えば、受注 or 失注、継続 or 離反、異常 or 正常、死亡 or ...

  統計的機械学習の世界に、2 値分類問題というものがあります。例えば、受注 or 失注、継続 or 離反、異常 or 正常、死亡 or ...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
Excelの帳票を見直そう

 オフィス業務においては、マイクロソフトOfficeがデファクトスタンダードになっています。とりわけ活用されているのはExcelでしょう。Excelを使う...

 オフィス業務においては、マイクロソフトOfficeがデファクトスタンダードになっています。とりわけ活用されているのはExcelでしょう。Excelを使う...


守秘義務は情報社会の命綱

  1. 顧客データの管理  O社は、技術志向のエンジニアリング会社です。 扱う製品の設計図には、さまざまな情報が含まれています。クライアントから...

  1. 顧客データの管理  O社は、技術志向のエンジニアリング会社です。 扱う製品の設計図には、さまざまな情報が含まれています。クライアントから...


P値で行う統計リテラシー判定

 「ピーチ」って聞いたら何を連想しますか、統計を学んでいる人に取っては「 P値 」が思い浮かぶはずです。統計学の素養がある程度備わっているか一言で知ろうと...

 「ピーチ」って聞いたら何を連想しますか、統計を学んでいる人に取っては「 P値 」が思い浮かぶはずです。統計学の素養がある程度備わっているか一言で知ろうと...