中小企業のデジタル投資余力や人材不足の課題解決に貢献したい
中部電力株式会社
製造業企業のデジタル化を⽀援する「ものづくり共創プラットフォーム」を構築中の中部電力(愛知県名古屋市・代表取締役社長 林 欣吾氏)は、生産性向上や設計進化を推進するため、生産や設計のデジタルツインを一つの柱として掲げている。インタラクティブなコラボレーションやビジュアライゼーション環境としてNVIDIA Omniverse™を採⽤するのとあわせ、その実⾏環境としてNTTPCコミュニケーションズの「VDIクラウド for デジタルツイン(R)」を導⼊した。導入の背景には、中部圏の製造業企業のほとんどが中⼩企業で、デジタル投資余⼒やデジタル⼈材が不⾜していることに加え、電⼒会社という中⽴的な⽴場を⽣かしながら、労働⼈⼝の減少をはじめとする社会課題の解決に貢献したいといった考えがあるという。
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導入の背景:中小企業を対象に、投資コストの抑制とデジタル化を実現
中部電⼒が電⼒を供給しているエリア[*1]には、⾃動⾞関連企業や産業機器関連企業など多くの製造業企業 が拠点を構えている。同社先端技術応⽤研究所所長の⽥中和⼠氏は「中部圏はものづくりが盛んな地域です。中部電力では、安定した電⼒を供給するだけでなく、当研究所の前⾝である電気利⽤技術研究所が中⼼となって省エネ技術などを開発し、これら企業の競争⼒を⽀えてきました。さらにデジタル化の観点でも貢献したいと考え、投資がなかなかできない中⼩企業を主な対象に、多くの企業が利⽤できる共通的な『ものづくり共創プラットフォーム』を構想しました」と話す。
ものづくり共創プラットフォームのイメージを図1に示す。プラットフォームの仕組みは、たとえばユーザーである製造業企業(図の「お客さま」「⼀般ユーザー」)が、⾃社設備から収集した様々なデータをプラットフォームに集約する。合わせて、省エネ、CO2排出削減(GX)、生産性向上、工場ライン設計、製品設計、サプライチェーン最適化などのメニュー(図の青部分)に応じたアプリケーションやサービスを利用して改善や改革を進めていく。こうした仕組みを活用することで、投資余力やデジタル人材の足りない中小を含め、企業は投資コストを抑えながらデジタル化を進めることができる。
中部電⼒はプラットフォームの利⽤料などを新たなビジネスに据えるとともに、まずは⾃社の電⼒供給エリアを対象としたコンソーシアムを結成し、地域での標準化を図りつつ、将来的には共通データ基盤の「ウラノス・エコシステム」[*2]などとも結びながら、日本全体へと広げていく考えだ。
図1. ものづくり共創プラットフォームの全体イメージ。(図提供・中部電力)
[*1] 愛知県、岐⾩県(⼀部を除く)、三重県(⼀部を除く)、静岡県(富⼠川以⻄)、⻑野県
[*2] ウラノス・エコシステム:2023年4⽉に経済産業省が命名したことを発表した、企業や業界を横断してデータを連携・活⽤する取り組み。
詳しくは https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digital_architecture/ouranos.html
導入の経緯:スモールスタートに対応、共創活動にも最適
ものづくり共創プラットフォームの柱のひとつがデジタルツインである(図2)。生産ラインを3Dでバーチャルに構築して、設備の干渉や作業動線などを事前に検証する。生産の状況やIoTで収集したデータをバーチャル環境にもリアルタイムに反映し、設備異常や品質問題をいち早く検知する。設計データを関係者間で共有・レビューし、設計のフロントローディングを進める。といった目的に対して、デジタルツインが有効との考えだ。
中部電力は、デジタルツインにおけるインタラクティブなコラボレーションやビジュアライゼーション環境として、「NVIDIA Omniverse™」を採用した。3Dデータ(3Dモデル)の共有、閲覧、編集を通じて、設計部門や生産部門のほか、発注者、ユーザー、外注先など、複数の部署や企業をまたがる作業に適したツールである。このNVIDIA Omniverse™の実行環境として中部電力が選んだのが、NTTPCが提供する「VDIクラウド for デジタルツイン(R)」だった。
同研究所の⽵内章浩⽒は、採用理由を次のように説明する。「いくつかの選択肢を検討したなかで中⼩企業が利⽤しやすいスモールスタートにも対応していること、国内のサーバー上に構築されていて安⼼できること、Innovation LAB[*3]というコラボレーション・プログラムを推進していること、などを評価して選定しました。われわれのニーズにピンポイントで合致したのが「VDIクラウド for デジタルツイン(R)」でした」。「VDIクラウド for デジタルツイン(R)」は名前のとおり、デジタルツインを実現するためのクラウドサービスで、グラフィックス性能の⾼いNVIDIA GPUが使える仮想デスクトップを1クライアントから利⽤でき、NVIDIA Omniverse™の動作も検証済み。さら...