CSRの歴史 CSR(その1)
2016-11-02
ニッセイ基礎研『日本の「企業の社会的責任」の系譜』(2004年5月)によりますと、第1期は1960年代の産業公害に対して、第2期は1970年代の石油ショック時の便乗値上げに対して、第3期は1980年代の急激な円高&地価高騰に対して、第4期は1990年代のバブル経済破綻&銀行倒産に対して、そして、第5期が2000年代の食品偽装事件等の企業の不祥事対してです。そして、2003年にCSR組織を設置する企業が増大しました。(CSR経営元年)
日本でCSRの言葉が広まり始めたのは、経済同友会が2003年にまとめた第15回企業白書の中に記載された頃になります。経済同友会の第15回企業白書は、前代表幹事小林陽太郎氏のイニシャティブでまとめられたもので、「市場主義宣言」や、「市場主義宣言」を超えて、「市場の進化」等、の議論の中で、企業のあるべき姿として、取り上げられました。その経緯は、書籍「小林陽太郎―性善説の経営―」の中で詳しく紹介されています。小林陽太郎氏によれば、そもそもCSRは、企業活動全般のことであって、企業が上げた利潤の中から、メセナ活動を行ったり、環境保護活動を行ったりと言うことではないと明言されています。私も、至極当たり前のことと思いますが、日本では、これまでも、今も、本業とは必ずしも繋がらないメセナや環境保護活動がCSR(=企業の社会的貢献)と誤解されている部分があります。
ヨーロッパにおけるCSRとは、社会的な存在としての企業が、企業の存続に必要不可欠な社会の持続的発展に対して必要なコストを払い、未来に対する投資として必要な活動を行うことです。時として、これはアメリカ型の市場中心主義へのアンチテーゼとして語られることもありますが、EUが主導的に様々な基準を整備していることや、環境、労働等に対する市民の意識が高いこともあり、総じて企業としてCSRに対する取り組みは包括的で、企業活動の根幹として根付いています。
アメリカでは、1990年代の後半から、企業は利益を追求するだけでなく、法律の遵守、環境への配慮、コミュニティーへの貢献などが求められ、企業の社会的責任 (CSR) が問われるようになり、2000年代になると企業改革・更生法ともいえるサーベンス・オックスレー法(SOX法)が...
成立されていくなど、企業に対する社会的責任を法律で定めていくというような法的整備・拘束等が進められていくようになりました。
また、そのような法的整備と企業の社会環境が整えられ、変わっていくと同時に、労働者の人権の保護に関しても、国際的に関心が高まるようになりました。その背景には、企業活動がグローバル化し、先進国の多国籍企業が発展途上国の労働者を雇うケースが増え、さまざまな問題が発生したことがあります。その為、アメリカ政府は、企業が起すこれらの諸問題に対応していく為、様々な対策を講じていく事となりました。
次回、その2では日本のCSRが歩んできた歴史を振り返ります。