CSRの歴史 CSR(その1)

投稿日

1.日本の「企業の社会的責任(CSR以前)」の歴史

 CSR日本では、CSRの言葉が広まり始める前から、「企業の社会的責任」の議論は行われてきております。戦後の企業の不祥事や企業批判が起こる度に、企業が反省・自戒するパターンが繰り返されてきました。
 
 ニッセイ基礎研『日本の「企業の社会的責任」の系譜』(2004年5月)によりますと、第1期は1960年代の産業公害に対して、第2期は1970年代の石油ショック時の便乗値上げに対して、第3期は1980年代の急激な円高&地価高騰に対して、第4期は1990年代のバブル経済破綻&銀行倒産に対して、そして、第5期が2000年代の食品偽装事件等の企業の不祥事対してです。そして、2003年にCSR組織を設置する企業が増大しました。(CSR経営元年)
 

2.日本のCSR

 日本でCSRの言葉が広まり始めたのは、経済同友会が2003年にまとめた第15回企業白書の中に記載された頃になります。経済同友会の第15回企業白書は、前代表幹事小林陽太郎氏のイニシャティブでまとめられたもので、「市場主義宣言」や、「市場主義宣言」を超えて、「市場の進化」等、の議論の中で、企業のあるべき姿として、取り上げられました。その経緯は、書籍「小林陽太郎―性善説の経営―」の中で詳しく紹介されています。小林陽太郎氏によれば、そもそもCSRは、企業活動全般のことであって、企業が上げた利潤の中から、メセナ活動を行ったり、環境保護活動を行ったりと言うことではないと明言されています。私も、至極当たり前のことと思いますが、日本では、これまでも、今も、本業とは必ずしも繋がらないメセナや環境保護活動がCSR(=企業の社会的貢献)と誤解されている部分があります。
 

3.世界のCSR(ウィキペディア)

(1)ヨーロッパ企業における考え方と特徴

 ヨーロッパにおけるCSRとは、社会的な存在としての企業が、企業の存続に必要不可欠な社会の持続的発展に対して必要なコストを払い、未来に対する投資として必要な活動を行うことです。時として、これはアメリカ型の市場中心主義へのアンチテーゼとして語られることもありますが、EUが主導的に様々な基準を整備していることや、環境、労働等に対する市民の意識が高いこともあり、総じて企業としてCSRに対する取り組みは包括的で、企業活動の根幹として根付いています。
 

(2)アメリカ企業における考え方と特徴

 アメリカでは、1990年代の後半から、企業は利益を追求するだけでなく、法律の遵守、環境への配慮、コミュニティーへの貢献などが求められ、企業の社会的責任 (CSR) が問われるようになり、2000年代になると企業改革・更生法ともいえるサーベンス・オックスレー法(SOX法)が...

1.日本の「企業の社会的責任(CSR以前)」の歴史

 CSR日本では、CSRの言葉が広まり始める前から、「企業の社会的責任」の議論は行われてきております。戦後の企業の不祥事や企業批判が起こる度に、企業が反省・自戒するパターンが繰り返されてきました。
 
 ニッセイ基礎研『日本の「企業の社会的責任」の系譜』(2004年5月)によりますと、第1期は1960年代の産業公害に対して、第2期は1970年代の石油ショック時の便乗値上げに対して、第3期は1980年代の急激な円高&地価高騰に対して、第4期は1990年代のバブル経済破綻&銀行倒産に対して、そして、第5期が2000年代の食品偽装事件等の企業の不祥事対してです。そして、2003年にCSR組織を設置する企業が増大しました。(CSR経営元年)
 

2.日本のCSR

 日本でCSRの言葉が広まり始めたのは、経済同友会が2003年にまとめた第15回企業白書の中に記載された頃になります。経済同友会の第15回企業白書は、前代表幹事小林陽太郎氏のイニシャティブでまとめられたもので、「市場主義宣言」や、「市場主義宣言」を超えて、「市場の進化」等、の議論の中で、企業のあるべき姿として、取り上げられました。その経緯は、書籍「小林陽太郎―性善説の経営―」の中で詳しく紹介されています。小林陽太郎氏によれば、そもそもCSRは、企業活動全般のことであって、企業が上げた利潤の中から、メセナ活動を行ったり、環境保護活動を行ったりと言うことではないと明言されています。私も、至極当たり前のことと思いますが、日本では、これまでも、今も、本業とは必ずしも繋がらないメセナや環境保護活動がCSR(=企業の社会的貢献)と誤解されている部分があります。
 

3.世界のCSR(ウィキペディア)

(1)ヨーロッパ企業における考え方と特徴

 ヨーロッパにおけるCSRとは、社会的な存在としての企業が、企業の存続に必要不可欠な社会の持続的発展に対して必要なコストを払い、未来に対する投資として必要な活動を行うことです。時として、これはアメリカ型の市場中心主義へのアンチテーゼとして語られることもありますが、EUが主導的に様々な基準を整備していることや、環境、労働等に対する市民の意識が高いこともあり、総じて企業としてCSRに対する取り組みは包括的で、企業活動の根幹として根付いています。
 

(2)アメリカ企業における考え方と特徴

 アメリカでは、1990年代の後半から、企業は利益を追求するだけでなく、法律の遵守、環境への配慮、コミュニティーへの貢献などが求められ、企業の社会的責任 (CSR) が問われるようになり、2000年代になると企業改革・更生法ともいえるサーベンス・オックスレー法(SOX法)が成立されていくなど、企業に対する社会的責任を法律で定めていくというような法的整備・拘束等が進められていくようになりました。
 
 また、そのような法的整備と企業の社会環境が整えられ、変わっていくと同時に、労働者の人権の保護に関しても、国際的に関心が高まるようになりました。その背景には、企業活動がグローバル化し、先進国の多国籍企業が発展途上国の労働者を雇うケースが増え、さまざまな問題が発生したことがあります。その為、アメリカ政府は、企業が起すこれらの諸問題に対応していく為、様々な対策を講じていく事となりました。
 
 次回、その2では日本のCSRが歩んできた歴史を振り返ります。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石原 和憲

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター


「CSR」の他のキーワード解説記事

もっと見る
理念経営4つの要件

 理念経営を構成する人間らしい生き生きとした地域活動には4つの要件がありますので、今回はそれらを一つ一つ解説します。  1.一人一人の個性が生...

 理念経営を構成する人間らしい生き生きとした地域活動には4つの要件がありますので、今回はそれらを一つ一つ解説します。  1.一人一人の個性が生...


「清富」を目指す理念経営にするには

1.清富の反対語  今回は前に述べた「清富」の言葉を、私なりに定義して言葉の理念を解説したいと思います。そのためには反対語を考えるのが有効です。「清富」...

1.清富の反対語  今回は前に述べた「清富」の言葉を、私なりに定義して言葉の理念を解説したいと思います。そのためには反対語を考えるのが有効です。「清富」...


理念経営の重要性、人間生活の在り方の指針

1.理念経営とは  「理念経営=人本位経営」とは企業活動、社会活動や経済活動をいかに営むかということだけではなく、この地球環境の中に存在する人間の意義を...

1.理念経営とは  「理念経営=人本位経営」とは企業活動、社会活動や経済活動をいかに営むかということだけではなく、この地球環境の中に存在する人間の意義を...


「CSR」の活用事例

もっと見る
教育現場でのCSR CSR(その3)

1.CSR教育の現状  その1:現在、大学の特別講座として「CSR」が実施されています。ある大学において、2009年の4月~7月にかけて、夕方の90...

1.CSR教育の現状  その1:現在、大学の特別講座として「CSR」が実施されています。ある大学において、2009年の4月~7月にかけて、夕方の90...


永続地帯: 新環境経営 (その41)

   前回のその40から続いて、今回も永続地帯についての紹介です。永続地帯とは、再生可能エネルギーによるエネルギーの自給と、食料の自給が可能な地域です。...

   前回のその40から続いて、今回も永続地帯についての紹介です。永続地帯とは、再生可能エネルギーによるエネルギーの自給と、食料の自給が可能な地域です。...


エコロジーな経営とは :新環境経営 (その18) 

 前回は、作り過ぎる無駄を減らすについて紹介しました。今回は、生産工程で生じるロスを減らすと、生産設備に関わる無駄を減らすです。   <5つの「エコロ...

 前回は、作り過ぎる無駄を減らすについて紹介しました。今回は、生産工程で生じるロスを減らすと、生産設備に関わる無駄を減らすです。   <5つの「エコロ...