塑性加工のばらつき改善事例

 これは2012年の品質工学研究発表大会で、コニカミノルタテクノプロダクト(株)の犬塚祐樹さんが発表した「製品開発・生産技術のコラボレーションによる塑性加工技術開発の効率化」を、要約掲載したものです。

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

1.技術と課題

 射出成型機から取り出された対象部品に対して、「熱、力」を加えて、要求形状に塑性加工させる装置において、加工時の製品部品温度により、加工後の製品部品の品質特性が大きくばらついてしまう問題がありました。

2.原理と機能

 従来は加工前に温度を測定し、それに応じた加工条件に調整していました。 しかしこの部品は複数の経路の入射光を集めて出射する用途であったため、品質工学の手順に則り、「入射光をロス無く、出射すること」を基湘機能と考えました。

3.実験方法

  誤差因子として機能の対称性と加工時の環境温度を調合し、制御因子は、加熱、力に関連する8因子を選定し、L18直交表に割り付けて36個のサンプルに対しそれぞれ3水準の入射光量を与えて評価しました。

4.実験結果

  解析の結果、加熱に関する制御因子の影響が大きく、力やヒータの位置に関する制御因子の影響は小さいことがわかり、最適組み合わせで確認実験したところ、初期条件に対するSN比の利得が13.66dbでほぼ推定値と一致し、感度の利得1.58dbは推定値より5db以上小さかったものの、入射光量に対して出射光量に上限がある為であり、全体としては信頼できる結果と考えられます。 

5.成果

  SN比13.66dbの向上は平均二乗誤差では約1/20に相当...

し、損失関数から換算すると393円/台の改善になり、総生産台数が2万台であるので、経済効果は約780万円と推定されます。 さらにばらつき改善の為に検討していた環境室、管理費などの設備投資(推定3000万円)が抑制され、従来の加工温度計測も不要となりました。  既に市場には数千台設置していますが、対象部品の品質課題は皆無です。

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録