SCMの基本 (その1)
2017-01-13
半導体製造装置に搭載する研削工具を作っているある工場の大きな課題は、いわゆる“シリコンサイクル”をどう捉えて、乗り切っていくかでした。先の予想を立てて、景気の下降期には在庫を絞り、上昇期にはいちはやく生産体制を増強するという活動を繰り返していました。
しかし、予想がずれた場合には、在庫が増えたり、欠品が発生したりして、特に景気の上昇期には部品の調達リードタイムも長くなり、お客様への供給リードタイムが長くなる傾向にありました。そこで、生産方式を改革して、受注生産(プル生産)方式を確立する活動を開始しました。それまで製造課長の立てた生産計画に従い、各職場でまとめ生産していたものを、加工機の配置を変え、流れを作って3つほどの島にしました。
この3つの島をストアで繋いで仕掛かり量の基準を決め、ストアが空になる前に補充する、逆に満杯であれば作らない、という単純なルールだけを生産指示としてものづくりを進めることにしました。ストアが空かない時には後工程で何か起こっていないか見に行ったり、何か手伝えば進むのかを確認したり付随するルールも決めました。
問題は購入品でした。外部のサプライヤーに自社のルールを押し付けるわけにもいかず、行き詰まっていたので、「毎日使った数をファックスで先方に送っておいてください」と指示しました。そうすると、発注という事務作業や計画数量の提供などの業務が軽減され、スムーズにものが流れるようになりました。
どのような難しい仕組みを作ろうか悩んでいた製造課長は、「嘘のように解決した」と言い、「使った数量を前工程にできるだけ早く伝えるという基本を再...
認識させられた」とも言っていました。使った数量を伝えるというのは、使う(買う)側は素材なり部品が切れずに後ろのストアなどにあればいいだけなのですから、計画数量策定や発注作業などという作業が軽減されます。
供給する(売る)側にとっても実需のタイムリーな把握により、フォーキャストの精度が上がります。この例のように、『使った数量を前工程にできるだけ早く伝える』というのはSCMの基本の一つです。