パフォーマンスを示すKPI 物流現状把握の重要性 (その4)
2017-03-02
今行っている物流作業が本当に必要な作業なのかどうかは、『現状把握』を実施していくと見えてきます。「必要だからやっている」、という声が聞こえてきそうですが、でもここは盲点になりがちです。試しに会社の別の拠点や職場を見て下さい。その必要と思われる作業を実施していないかもしれません。
仮にやっていたとしても、別のやり方で実施しているかもしれません。その別のやり方の方が効率がよいかもしれません。このように社内で同じ業務をやっている、やっていない、やっていてもやり方にバラつきがあるといった事例は多々あるのではないでしょうか。そこで複数拠点、複数職場がある会社の場合には類似業務の洗い出しと比較をやってみるとよいのではないでしょうか。
業務の洗い出しとともに「作業の方法」、「その作業に要している時間」、できれば「原単位」、つまり1部品あたりの作業時間やコストなどを調査するとよいでしょう。もしかしたら社内で業務にばらつきがあるということは標準化できていないということかもしれません。標準化はすべての物流作業に必要ですが意外と行われておらず現場任せになっている可能性があります。標準化できていない場合には効率がよくない可能性があります。
また、標準が無ければそれに対する効率、すなわち仕事のパフォーマンスが測定できないことになります。同じ仕事をしていても職場で効率に差があるはずなのにそれが見えないということは問題です。『仕事のパフォーマンス=標準からの乖離度』とも考えられます。仕事のパフォーマンスに差があるにもかかわらず同じ給料をもらうとするとこれは平等とは言えません。
一方で、このような状態を放置しているということは現場を管理できていないということになります。ということで作業の標準化は現状把握と同時に並行して進めていくことが望ましいでしょう。一気に標準化は難しいとしたら第一歩として、その作業のボリュームを示すKPIを設定しましょう。これはこれで難しいという会社もあるでしょう。では簡単にある程度のパフォーマンスが見えるKPIの把握方法について考えてみましょう。
簡単に物流のパフォーマンスを測ることができるKPIについて考えてみましょう。物流にはさまざまな業務がありますからKPIの種類は多岐にわたります。倉庫でも工場でも共通に使えるKPIとして一人一時間あたり処理数が挙げられるでしょう。このKPIはいろいろな業務に応用できますのでぜひ覚えておいて下さい。
もし運搬作業であればこのKPIは「一人一時間あたり運搬量」ということになります。ここで取り決めておかなければならないのは運搬量の定義です。物流では一般的にはkgやトンが使われます。ということでこのいずれかということで始めてみてはいかがかと思います。主として嵩が張るものを扱っているのであれば「kg」、重たいものを扱っているのであれば「トン」でよいと思います。これを「箱数」とすることもありだと思います。要は「容易にその基礎データを把握できるか」です。いくつものデータを引っ張り出して計算しなければつかめないKPIは長続きしません。シンプルイズザベストです。
ピッキング作業であれば「一人一時間あたり処理件数」となります。処理件数は個数であったりオーダー件数であったりします。物流業界では「ピッキング行数」をデータに持ってくる指標を使うことが多いようです。「行数」は聞き慣れない言葉かもしれません。これはオーダーシートの中にある「オーダー」のことを示しています。一行の中に一つの品目をいくつ、と表現されていることが多いと思います。将来的に市場ベンチマークをするのであればこういった今あるKPIに合わせておくことも一つの方法です。まずは無理せずにその会社ですぐに把握できるデータを使ってKPIとしましょう。
別の角度から見ると「一出荷あたり労働時間」というKPIも考えられ...
ると思います。一回の出荷にどれくらいの労働時間をかけているかという指標になります。その物流現場でかけている経費が把握できればもう少し高度化した物流KPIを設定することができます。この経費には人件費や倉庫費、設備費や燃料費、本社経費などさまざまな費目が含まれます。
これをデータで持って来て「売上高」と比較してみましょう。つまり売上高物流経費比率というKPIが出来上がるのです。まず物流現状把握では実態を客観的に示す数値データが必要になるのです。そこで簡単なKPIを作ってそれを運用していくことが望ましいと思われるのです。最初は無理せず、あまり背伸びせずに数値管理を始めてみましょう。