改めて新環境経営 :新環境経営 (その34)

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 「新環境経営」の取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。今回からは、積み上げられてきたそれらの知恵の上に、今後の新環境経営について解説します。
 

1. 新環境経営

 「環境経営」は、“環境”をマネジメントするところから始まった。環境マネジメントシステムや環境報告書、環境会計などの手段は多くの企業に普及し、環境経営は当たり前の時代になっていますが、今後の法規制の強化に伴って、“環境”にかかわる経営リスク(不確実性)はさらに高まるでしょう。このため、企業価値を高めることを目的として、“環境”を考慮して全社横断的に取り組むことが、持続可能な企業経営に必要不可欠です。“環境”のための環境経営というよりも、むしろ持続可能な企業経営のために“環境”を考えるという発想が必要です。このような発想に基づく経営を「新環境経営」と呼び、従来の環境経営と区別しています。(野村総研の定義より抜粋)
 

2. 新環境経営は、持続可能な企業経営

CSR
 企業の「企業の社会的責任(CSR)」を考えますと、日本でもヨーロッパ発のCSRに取り組むことは当たり前のこととなっていますが、ヨーロッパでは「社会的共通資本」の考え方が既に定着しており、基本的人権を保障する社会インフラの整備で先行しています。その上で、「社会的共通資本」を、企業活動を通じて維持発展させていく責任があるという意味でCSRが浸透しています。一方、日本の場合は、「社会的共通資本」に対する国民的コンセンサスが不十分で、国民の基本的人権を守るためのインフラ整備が遅れています。日本では、まずは国民の基本的人権を守るための過剰労働の禁止や、健全な家庭生活を維持しながら経済を回す社会システムの構築が急務でした。持続可能な企業経営を実現させるためには、そこで働く社員こそが胆であり、社員の基本的人権の尊重なくして企業の存続はありえませんでした。然るに、日本では、未だに長時間労働でコストを削減しようとする企業が後を絶ちません。家庭生活と労働をバランスさせて、かつ、万が一のセフティーネットで落ちこぼれる不安を取り除くことで、安心して豊かな気持ちで仕事に打ち込めることが最優先です。その環境を整備してこそ、持続可能な企業経営となります。日本でCSRや、CSV(共通価値の創造)が話題になっても、そのベースとなる「社会的共通資本」の整備が遅れているため、CSRや、CSVが表面的な議論になっていると感じています。日本は、国や官僚のリーダーシップに頼れない分、企業が「社会的共通資本」に関与を深め、安心して豊かな気持ちで仕事に打ち込める環境を整備する必要があると考えます。
 

3. グローバル経済下での新環境経営

 国連のグローバルコンパクト(UNGC)『企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み』の10項目の原則のうち、人権の尊重がトップで2項目、続いて労働についての原則が4項目、環境についての原則が3項目となっています。高度成長期の日本が行...
 「新環境経営」の取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。今回からは、積み上げられてきたそれらの知恵の上に、今後の新環境経営について解説します。
 

1. 新環境経営

 「環境経営」は、“環境”をマネジメントするところから始まった。環境マネジメントシステムや環境報告書、環境会計などの手段は多くの企業に普及し、環境経営は当たり前の時代になっていますが、今後の法規制の強化に伴って、“環境”にかかわる経営リスク(不確実性)はさらに高まるでしょう。このため、企業価値を高めることを目的として、“環境”を考慮して全社横断的に取り組むことが、持続可能な企業経営に必要不可欠です。“環境”のための環境経営というよりも、むしろ持続可能な企業経営のために“環境”を考えるという発想が必要です。このような発想に基づく経営を「新環境経営」と呼び、従来の環境経営と区別しています。(野村総研の定義より抜粋)
 

2. 新環境経営は、持続可能な企業経営

CSR
 企業の「企業の社会的責任(CSR)」を考えますと、日本でもヨーロッパ発のCSRに取り組むことは当たり前のこととなっていますが、ヨーロッパでは「社会的共通資本」の考え方が既に定着しており、基本的人権を保障する社会インフラの整備で先行しています。その上で、「社会的共通資本」を、企業活動を通じて維持発展させていく責任があるという意味でCSRが浸透しています。一方、日本の場合は、「社会的共通資本」に対する国民的コンセンサスが不十分で、国民の基本的人権を守るためのインフラ整備が遅れています。日本では、まずは国民の基本的人権を守るための過剰労働の禁止や、健全な家庭生活を維持しながら経済を回す社会システムの構築が急務でした。持続可能な企業経営を実現させるためには、そこで働く社員こそが胆であり、社員の基本的人権の尊重なくして企業の存続はありえませんでした。然るに、日本では、未だに長時間労働でコストを削減しようとする企業が後を絶ちません。家庭生活と労働をバランスさせて、かつ、万が一のセフティーネットで落ちこぼれる不安を取り除くことで、安心して豊かな気持ちで仕事に打ち込めることが最優先です。その環境を整備してこそ、持続可能な企業経営となります。日本でCSRや、CSV(共通価値の創造)が話題になっても、そのベースとなる「社会的共通資本」の整備が遅れているため、CSRや、CSVが表面的な議論になっていると感じています。日本は、国や官僚のリーダーシップに頼れない分、企業が「社会的共通資本」に関与を深め、安心して豊かな気持ちで仕事に打ち込める環境を整備する必要があると考えます。
 

3. グローバル経済下での新環境経営

 国連のグローバルコンパクト(UNGC)『企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み』の10項目の原則のうち、人権の尊重がトップで2項目、続いて労働についての原則が4項目、環境についての原則が3項目となっています。高度成長期の日本が行ってきた集中豪雨的な輸出は、それが高残業による低賃金労働で成り立っているとすれば、UNGCの枠組みに照らすと、フェアでありません。労働環境による不当な競争を仕掛けて相手国を壊すことになり、持続可能な経営とは言えないでしょう。
 
 日本が独自の労働慣行により、不公平な競争を続けることは、グローバル経済下での潜在的なリスクとなります。エンタープライズ・リスク・マメジメント(ERM)の観点で乗り越えていかなければならない壁です。以上を受けて、今後、「製品開発/調達/生産/物流」、「広報/営業」、「人材開発」、「ERMリスクマネジメント」、「エネルギー・省エネ」、「ワークライフバランス」等の観点から、「新環境経営=持続可能な企業経営」について解説を続けます。次回は、ワーク・ライフ・バランスです。
 

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この記事の著者

石原 和憲

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター

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