永続地帯: 新環境経営 (その42)

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 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。感性工学についての紹介が終わり、現在は永続地帯について紹介しています。今回は、「永続地帯」に向けて、どのような取り組みが可能かを考えます。
 

1. エネルギーの自給自足への取り組み

 平成23年3月11日の東日本大震災の原発事故以来、これまで原子力に頼っていた発電が、一気に再生可能エネルギーからの発電への置き換えに向かいました。大手資本がFIT制度に乗じて、メガソーラーに投資し、一時、制度の悪用などもありましたが、再生可能エネルギーへのシフトを加速させた意義は大きいと言えます。又、伸び悩んでいた風力発電も2014年度に102基の風力発電設備が運転を開始、国内の設置総数が2000基を超え、発電能力は合計で294万kWに達して、原子力発電所3基分に相当する電力源となったようです(NEDO)
 
 地熱も再生可能エネルギーですが、環境影響評価に時間がかかる等で、目に見える形での普及はこれからです。家庭用の太陽光発電はシステムの価格低下もあり、普及も進みましたが、全体の普及率は高くは有りません。平成25年のデータで住宅用太陽光発電システム普及率は全国平均で5.6%%です。佐賀県がトップで10.5%でした。
 
 メガソーラーと風力発電に対し、電力会社から接続拒否の問題が起きていますが、電力会社間の電力の融通枠を拡大する設備投資が警句されており、又、大規模蓄電池のレドックスフロー電池の実証実験も始まり、今後も再生エネルギー拡大の流れは変わらないでしょう。家庭用については、最新の省エネ基準に基づく断熱住宅の推進や空家対策と絡めた住宅対策が検討されており、それらと絡めて太陽光を熱として利用したり、電気として利用したりが進み、省エネ化と再生エネルギーの利用が進む見通しです。
 
 約20年前から始まった家庭用の太陽光発電は、これまではエネルギーを専ら購入して消費するしかなかった生活スタイルから、太陽エネルギーを活用して、自分でエネルギーを創りだすことができる画期的なものです。風力発電として、最近、小さな羽根で電気を起こすものや、風のエネルギーを振動に変えて、振動エネルギーから電気を生み出す技術も出てきました。太陽光発電に加え、家庭での第2の再生可能エネルギー利用の可能性が出てきました。又、蓄電池の技術開発も急速に進み、「省」「創」「畜」で再生可能エネルギーの利用が進んでいきます。
 

2. 食料の自給自足への取り組み

 食料自給率の把握については、過去から農水省が取り組んできており、既にデータが蓄積されています。今回、永続地帯の切り口で、エネルギーと食料を併せて見られるようにするために、永続地帯としての尺度で食料自給率を試算しました。その結果、永続地帯試算と農水省試算の差は0.98程度で、永続地帯試算がやや低めに出ています。
 
 日本全体の食料自給率は、概ね39%です。都道府県別にみると、北海道、秋田、山形、青森、新潟、岩手の6道・県が100%を超えて食料自給自足状態です。50~99%は14県あり、50%越えは20道・県です。一方、大都市圏は、東京都:1%(47位)、大阪府:2%(46位)、神奈川県:2%(45位)、埼玉県:11%(44位)、愛知県:12%(42位)、兵庫県:15%(40位)、福岡県:19%(38位)、千葉:28%(34位)です。東京、大阪、神奈川が極端に低いようです。この8都道府県の人口総計は、62.8百万人で、全人口127.6百万人の約50%を占めます。大都市の、食料依存の状況が良く解ります。
 
 戦後、工業化による高度成長時代に、工業製品を輸出して、それによって得た外貨で食料を買う時代が長く続き、結果としてこのような不均衡な状態を創りだされたと言えます。国は、農業の生産性向上の為に、農業経営を、家族経営体から組織経営体への移行を推進しており、2004年のデータで、家族経営体数は134万2千経営体で、5年前に比べて18.6%減少、一方、組織経営体数は3万3千経営体で6.3%増加したとしています。
 
 特に、組織経営体の法人経営数は2...
CSR
 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。感性工学についての紹介が終わり、現在は永続地帯について紹介しています。今回は、「永続地帯」に向けて、どのような取り組みが可能かを考えます。
 

1. エネルギーの自給自足への取り組み

 平成23年3月11日の東日本大震災の原発事故以来、これまで原子力に頼っていた発電が、一気に再生可能エネルギーからの発電への置き換えに向かいました。大手資本がFIT制度に乗じて、メガソーラーに投資し、一時、制度の悪用などもありましたが、再生可能エネルギーへのシフトを加速させた意義は大きいと言えます。又、伸び悩んでいた風力発電も2014年度に102基の風力発電設備が運転を開始、国内の設置総数が2000基を超え、発電能力は合計で294万kWに達して、原子力発電所3基分に相当する電力源となったようです(NEDO)
 
 地熱も再生可能エネルギーですが、環境影響評価に時間がかかる等で、目に見える形での普及はこれからです。家庭用の太陽光発電はシステムの価格低下もあり、普及も進みましたが、全体の普及率は高くは有りません。平成25年のデータで住宅用太陽光発電システム普及率は全国平均で5.6%%です。佐賀県がトップで10.5%でした。
 
 メガソーラーと風力発電に対し、電力会社から接続拒否の問題が起きていますが、電力会社間の電力の融通枠を拡大する設備投資が警句されており、又、大規模蓄電池のレドックスフロー電池の実証実験も始まり、今後も再生エネルギー拡大の流れは変わらないでしょう。家庭用については、最新の省エネ基準に基づく断熱住宅の推進や空家対策と絡めた住宅対策が検討されており、それらと絡めて太陽光を熱として利用したり、電気として利用したりが進み、省エネ化と再生エネルギーの利用が進む見通しです。
 
 約20年前から始まった家庭用の太陽光発電は、これまではエネルギーを専ら購入して消費するしかなかった生活スタイルから、太陽エネルギーを活用して、自分でエネルギーを創りだすことができる画期的なものです。風力発電として、最近、小さな羽根で電気を起こすものや、風のエネルギーを振動に変えて、振動エネルギーから電気を生み出す技術も出てきました。太陽光発電に加え、家庭での第2の再生可能エネルギー利用の可能性が出てきました。又、蓄電池の技術開発も急速に進み、「省」「創」「畜」で再生可能エネルギーの利用が進んでいきます。
 

2. 食料の自給自足への取り組み

 食料自給率の把握については、過去から農水省が取り組んできており、既にデータが蓄積されています。今回、永続地帯の切り口で、エネルギーと食料を併せて見られるようにするために、永続地帯としての尺度で食料自給率を試算しました。その結果、永続地帯試算と農水省試算の差は0.98程度で、永続地帯試算がやや低めに出ています。
 
 日本全体の食料自給率は、概ね39%です。都道府県別にみると、北海道、秋田、山形、青森、新潟、岩手の6道・県が100%を超えて食料自給自足状態です。50~99%は14県あり、50%越えは20道・県です。一方、大都市圏は、東京都:1%(47位)、大阪府:2%(46位)、神奈川県:2%(45位)、埼玉県:11%(44位)、愛知県:12%(42位)、兵庫県:15%(40位)、福岡県:19%(38位)、千葉:28%(34位)です。東京、大阪、神奈川が極端に低いようです。この8都道府県の人口総計は、62.8百万人で、全人口127.6百万人の約50%を占めます。大都市の、食料依存の状況が良く解ります。
 
 戦後、工業化による高度成長時代に、工業製品を輸出して、それによって得た外貨で食料を買う時代が長く続き、結果としてこのような不均衡な状態を創りだされたと言えます。国は、農業の生産性向上の為に、農業経営を、家族経営体から組織経営体への移行を推進しており、2004年のデータで、家族経営体数は134万2千経営体で、5年前に比べて18.6%減少、一方、組織経営体数は3万3千経営体で6.3%増加したとしています。
 
 特に、組織経営体の法人経営数は2万3千経営体で、5年前に比べて33.6%増加しました。この結果、組織経営体に占める法人経営の割合は69.2%。また、法人経営の内訳をみると、会社法人数は1万6千経営体、農事組合法人数は6千経営体となり、5年前に比べてそれぞれ27.0%、54.6%増加しました。農家数、農業就業人口の減少を含めて、その現象を嘆くのが農業界一般の読み方と思われますが、むしろ、農家数あるいは擬似農家が多すぎるところに日本農業の根本問題があると捉えられています。改革で痛みは伴いますが、食料自給率を高めるためには、集約化して効率を高めることも必要です。大都市に人口集中の状況は、様々な問題を生み出し、高齢化に伴う医療・介護の問題、少子化に伴う育児支援の問題もありますが、食料を世界中から集めることにより生ずる、輸送エネルギーの過大な消費の問題や、食の安全の担保の問題があります。顔の見える関係での地産地消で、安全を担保する農業への回帰が必要です。
 
 次回は、永続地帯の最終回として、社会を持続可能とするための、資本ストックについて解説します。
  

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この記事の著者

石原 和憲

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター

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