前回のその1に続いて、誰もが陥りやすい「6つの思考の罠」とよばれる思い込みの解説、3項からです。
(3)「すべて」の罠
ひとつの出来事、あるいは、いくつかの個別の出来事から、すべてが同じだと考えてしまうことです。0か100という All or Nothing でものごとを決めつけてしまう場合もあります。たとえば、上司に自分のアイデアを提案して却下されたことで、「自分には能力がないんだ。この仕事を続けることは無理だ」と結論づけてしまうようなことです。提案以外のことではうまくできていることもあるはずですし、上司に詳しく聞けば、その提案の良かった部分を教えてくれるかもしれません。少なくとも何もできない、何もないというような極端なことはないはずです。中間があることを忘れないようにしましょう。
(4)「自分が」の罠
原因はすべて自分にあると考えて罪悪感に陥ったり、良くないことが起きたときにその原因は自分にあると考えてしまうことです。たとえば、ある顧客への売り込みが失敗したときに「自分のせいで売り込みに失敗してしまった。もう自分はこの会社ではやっていけない」と考えてしまうようなことです。
世の中や人間関係は複雑なのですから、すべてが自分だけのせいということはあり得ません。その顧客に買ってもらえなかったのはその商品が必要なかっただけかもしれませんし、単に予算が確保できなかっただけなのかもしれません。
すべてが自分のせいだと考えるのは、逆に言うと、自分が世の中の出来事や他人をすべてコントロールできると考えているということです。そんなことはできないのですから、すべてが自分のせいだというのは現実的ではありません。
(5)「相手が」の罠
いろいろな要因や見方があるにもかかわらず、すべて相手の責任や原因だと考えてしまい、その相手の存在自体が自分を苦しめてしまうようなことです。たとえば、仕事が面白くないことを上司だけのせいにして、さらには上司の顔を見るだけで気分が悪くなり、その結果仕事が嫌になるようなことです。
「自分が」の罠と同様に、原因のすべてがある特定の人や出来事にあるというのは現実的ではありません。この場合は、自分にも原因があるのではないかと考えることが大切です。
(6) 人格殺しの罠
ある人のある場面での態度や言葉から、その人のすべてを否定してしまうことです。たとえば、他部署のあるマネジャーから厳しい口調でダメ出しされることが多いことで、「あのマネジャーは会話の仕方を知らないし、人と協力しようという気がない。性格が悪すぎて普通じゃない」というように考えることです。
相手の悪いところばかりに注目してしまい、さらには、やりとりで生まれた感情で相手のことを嫌なヤツだと決めつけてしまっているのです。そのマネジャーは口は悪いけれども、また、こちらには都合が悪いことだけど、言っている内容は筋が通っているかもしれませんし、その部署のメンバーからは慕われているかもしれません。自分が受けた印象をその人のすべてだと決めつけるのではなく、良い面を考えたり調べたりしたうえで総合的な評価をすることが大切です。
以上がこの6つの思考の罠です。説明を読んでいる今は、「自分は大丈夫だ」と思うかもしれませんが、ちょっとしたことで気がつかないうちに陥ってしまいがちです。気持ちが落ち込んだときや後ろ向きになったときには、思考の罠にかかっていないかどうか、ぜひ振り返ってみてください。
3. データを集める
出来事に関連する情報やデータを広く収集することも、心理的柔軟性を高めるのに効果的です。自分が出した結論に合わせた偏った情報やデータしか見ない、聞かない、考えないことになりがちだからです。
自分が出した結論に合った情報やデータだけでなく、意識して、違った結論を導き出すような情報やデータを集めることが大切です。そのうえで客観的に、自分でなくても同じ結論を出すかどうかを考えるのです。
また、感情に流されるのではなく、自分にとって何...
が問題なのかを特定することも大切です。自分で問題だと思っていることを、明確な事実と推測とに分離して、一つひとつ具体化して整理するのです。状況を正確に把握するためのデータ収集、問題を大局的にとらえるためのデータ収集、自分の考えとは違う根拠となるデータ収集を意識的にやることが柔軟な思考を可能にします。
今回は、レジリエンスを高めるためには心理的柔軟性を持つことが大切であることと、その心理的柔軟性を高めるための方法について解説しました。重要なことは次のようにまとめることができます。
・柔軟かつ論理的な思考
・他の見方(視点)への切り替え
・問題の整理と理解
・新たな方策や思考を試してみる意思