【形骸化している目標管理 連載目次】
「方針管理」「目標管理」は、多くの開発現場で重要視しているにもかかわらず、形骸化されうまく機能していないことがあります。そこで今回は、良く使われるKPIなどのキーワード解説も含めて、目標管理の仕組みについて考えます。
開発現場には効率や生産性向上のための様々な仕組みが存在します。人、物、設備、費用などを品目や工程別に把握、分析する原価管理や、不具合やトラブルなどを部品、製品、工程別に把握、分析する品質管理の仕組みをはじめとして、実際の現場作業時間を計測して改善を行ったり、作業現場の映像を撮ってムリ、ムダ、ムラを分析し削減するというような作業分析にもとづいた仕組みも多くのメーカーで定着しています。
しかし、多くの開発現場で重要視しているにもかかわらず、うまく機能していない仕組みがあります。方針管理や目標管理です。KPI や CSF といったキーワードで運用されているところも多いと思いますが、基本は、経営トップが年度方針を立て下部組織に展開することでそれぞれの組織が数値目標を設定し、その達成を管理するという仕組みなのですが、次のような問題が常態化しているところが多いのが現実です。
・トップダウンで現実味のない目標設定が行われ、現場はその実行と責任を押しつけられる。
・会議では目標値を達成したかどうかだけが議論され、その理由や背景、前提などは無視される。
・現場は責められることを避けるために、データを操作したり隠したりすることに労力を使う。
・報告のため、あるいは、決まったことだからという理由から人手をかけて多くのデータを収集しているものの、分析と活用は後回しになっている。
・新しい仕組みが導入されたり、課題が見つかるたびに管理指標が増え形骸化が進む。
このような状況下では、管理指標を明確にした目標管理が行われているように見えていても、現場で起こっていることを正しく把握することも、実施する対策が妥当なものかどうかを判断することもできないため、会議は表面的、形式的なものになってしまい、開発管理のレベルが向上することはありません。そもそも、会議に参加している管理職やリーダーに納得感がない目標管理がうまくいくはずがありません。
そこで今回は、よく使われる KPI などのキーワードの解説も含めて、目標管理の仕組みについて考えたいと思います。
1. KPI による管理の枠組み
KPI は Key Performance Indicator の略で、重要業績評価指標や主要業績評価指標とよばれています。KPI という単語ははよく使われているものの、KPI を使った管理の枠組みを理解しないままに、単に目標管理のために設定した管理指標くらいの意味合いで使われていることが多いようなので、最初に KPI による管理の仕組みを解説しておきたいと思います。
KPI とは、経営目標を達成するために適切な活動が行われているかどうかを把握するための指標です。したがって、まずは達成すべきゴールである経営目標が明確で数値化されている必要があります。これを KGI(Key Goal Indicator, 重要目標達成指標)といいます。現在のビジネス状況下においてもっとも重要なことに絞り込むことが大切です。
達成すべき目標値である KGI が決まれば、その目標達成に大きく寄与する要因を特定するのが次のステップです。つまり、どんなことに力を注げば効...
果的に目標を達成することができるかを特定するということです。これを
CSF(Critical Success Factor, 主要成功要因)とよんでいます。これも大切なのは重要な方策を選別し特定することです。
英略語を並べているので難しく感じるところがあるかもしれませんが、重要なのは、ゴール(KGI)を達成するために、日常の活動が正しく行われているかどうかを確認するための指標が KPI だということです。したがって、マネジメントの仕組みとして大切なことは、KPI を正しく測定、分析し、適切なアクションに結びつけることです。
次回もこのテーマを続けます。