〔これは事務局が考えた仮想の質問です〕
工場や設備の復旧は当然ですが、まずは社員とその家族の安否と住居の確認、近郊のお得意先や仕入先の状況の把握です。
また、社員のなかには住居の倒壊などから他府県への引越しを余儀なくされるケースも考えられ、従業員数減も視野に入れる必要があります。
工場では、電力・水などの復旧とあわせて、震災により使えなくなったものの分別作業が最初のステップです。
売上や財務面では、震災前の受注品のキャンセル、これまでのローンやリースなどの残債について、地元の金融機関や商工会議所、よろず支援拠点へご相談され、設備や工場の復旧に関る補助金申請の情報を得ることです。政府も大規模な補正予算を組むようです。
BCP(事業継続計画)についてまだ策定していなければ、策定を始めてください。
私も先の3.11での被災者です。ご参考になりましたら幸いです。
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被災した工場でまず手を付ける項目について
まず従業員やその家族の安否確認と対応できることが何かを考え、対応したい。
私が在社中、グループ会社の一つが福島原発の近くにあり、3.11の震災時、原発事故と津波で散々の避難を余儀なくされた方々がいました。なかなか連絡が取れず、長時間行方不明の扱いとなっていた例もあります。
改めて連絡体制を確認、見直しをしておきたい。
製造現場の復旧については、その現場を見ながらの判断が必要な場合が多いと思いますが、概略、ポイントを以下に記します。
☆工場の復旧について
精密部品加工とのことですが、簡易或いは層流式のクリーンルームとしましょう。
また、クリーンルームでなくても、類似の対応などでは参考にしていただきたい。
☆地震による建物被害の把握と修理
①建物にヒビ、亀裂等があると、空調稼働時、あるいは強風など何らかの振動により、塵、埃、湿気、塩分などが工場に入るので、清浄度、温度、湿度の管理ができません。
また、亀裂の大きさにもよりますが、虫の侵入もあります。
天井や壁だけでなく、床のヒビ割れも確認が必要。数トンある設備は、地面の状況によっては、その重量によりヒビ割れが起きる場合があります。例えば埋立地など。
②上記劣化があると作業エリアの室圧を高めることが出来ません。清浄度低下、エネルギーロス(主に電気)が発生します。
③パーテーション等で作業エリアの室圧管理をしている場合も上記と同様の問題が起きます。また、その隙間から虫が入ることも考えられます。
④床の水平度確認。地震により建物自体に傾きが発生していないか。
⑤設備の位置ズレがないか、接続部分は大丈夫かの確認。設備が動いたことで、接続している配管の亀裂、外れ(液漏れ、ガス漏れ、真空、圧空)排気管(排気漏れ)、電気コード(漏電、断線、ショート)などが発生、またはその可能性があります。
☆純水、水道水、窒素、酸素などの供給エネルギーの確認
①純水などの供給ルート確認。純水配管破損で雨水や腐葉土が混じった水が混入した例があります。
②屋外の配管ルート、経路の確認。
☆設備の点検
①クリーンブース、クリーンベンチの点検
タイプはいろいろありますが、天井側から簡易フィルターを介して吸い込むタイプが多いと思います。この簡易フィルターに天井から落下のゴミなどが堆積している場合は、吸い込みの効率が低下してしまいます。
この簡易フィルターを外すとファンがあります。3個ついているものもあります。この部分も清掃が必要な場合があります。
3台中1台が停止していても、他の2台が正常回転の場合、停止しているものもつられて回転していたりする場合があるので良く確認したい。
②清掃時は必ず電源を切って行うこと。回転中に集塵ホースを近づけたり、手を近づけると吸い込む力が強いので、巻き込まれ大けがすることが考えられます。200V稼働タイプが多いので、感電にも注意。
③古いタイプは、自動復帰の機能がないものがあります。通電時要確認。また最近のものは殆ど自動復帰しますが電源投入時は動作確認が必要です。
④パッケージエアコンを作業エリアに設置し、清浄度、温度、湿度などを補っている場合も、カバーを外すなどして内部の確認をする。
⑤設備には冷却ファンがついているものが多いですが、停止や逆転しているものはないかのチェックも必要。
⑥多少前後しますが、設備の点検を始める頃から同時並行的に室内の掃除に入ります。
まず天井、壁、設備、床など上から下に実施、繰り返しながら清浄度を測定。作業可能な清浄度になり安定するまで繰り返し清掃する。
⑦外からの持ち込み防止の観点では、エアシャワーの清浄度確認、清掃の実施。
☆清掃について
①徹底清掃時は、大勢の参加が必要になるため、清掃前の安全教育が必要です。
あまり頻繁に行うことではないので、事故や災害の発生の頻度が高くなります。
保護具、安全具の使用、高所作業、電気、電装系、設備清掃などについてが教育のポイント。
②設備の清掃は、保全担当などが実施することが好ましい。清掃実施時は必ず電源を落とすこと。動いているものには絶対に手を出さないこと。
被災した工場で、最初にどこまでやるのかは線引きが難しいので、実施すべき項目とポイント、およその手順を現場視点で記しました。
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BCP(事業継続計画)がある場合とない場合で対応は異なります。
(1)BCPがありトレーニングや地震対策がとられている場合は、役割分担と
対応プログラムに従い、被災状況の正確な把握、二次災害対策、顧客へ
の被災状況連絡など事業復旧にむけて活動していくことになります。
(2)BCPがない場合、まず災害対策を行う拠点を確保し、そこに対策本部
を立ち上げます。
①そこでまず
・社員の招集並びに在宅の指示
・安否状況/被災状況の正確な把握
→お客や取引先、従業員(含む家族)の安否確認、建屋・生産設備・
通信機器、情報システム、地域住民や近隣工場、交通やインフラ
など具体的に把握します
・二次災害の防止処置
を行う必要があります。
貴社においても、まずはこの状況把握が重要であります。
②災害発生2〜3日後には、上記状況がつかめてくるので、復旧計画を
策定して下さい。
・事業復旧すべき重要業務を把握します。
→顧客や協力会社向(代替手段、他社への一時移管を含む取引調整)
→従業員や資源対策(従業員との情報共有と生活支援、修理・復旧)
→財務対策(運転資金、不渡対策、仕入や給与支払、復旧資金確保)
・中核事業の復旧までに必要な復旧期間の把握を行い、復旧計画を策定
します。
③災害発生1週間後、復旧計画に従い具体的なアクションをとっていく
ことになります。
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