試作用の小型金型工場として、いずれ、3Dプリンターを導入して、工場運営を
転換していく考えです。
その準備として、従業員の職種転換を行い、営業力の強化を行います。
定期採用をしていませんので、対象者の年齢が、中高年になります。
職人気質の従業員に、この職種転換を理解してもらい進めていくのですが、
会社を辞めていかれてはいけないという心配もあります。
製造部門から営業への職種転換を行う上での人事的な配慮など、どう運営して
いけば良いか、アドバイスをお願いします。
人材マネジメントが専門ではありませんが、ものづくり改革や技術・技能伝承で意識改革に取り組んだ視点からコメントさせていただきます。
(1)まず「マインドセット」が必要です。
対象者に営業力強化の必要性を理解してもらい、協力をとりつけることが重要となります。例えば、今迄経験してきた事を対外的に発揮してもらい、そこで培った知識やノウハウを逆に社内に浸透してもらい、会社全体の技術レベルを向上するために、協力してほしいというようなことを膝突き合わせて説明するのです。
とはいっても、本人の性別や性格、資質などで対応は異なります。そこで、我々はワークショツプ形式で「なぜ営業力の強化が必要か」ということをテーマに掲げ、関係者全員の総意の上で解決策を探ります。このように一方的な押し付けでないプロセスを踏むことがモチベーションアップには重要となります。
(2)次に、対象者を含めたキャリアパスを明確にします。
従業員、特に中高年の社員が長く会社に勤めてもらうためには何が必要かを整理するのです。例えば、比較的簡単な作業は若手に任せ、中高年は営業技術としてより高度な仕事に取り組むような職務分担を行うことで、長く勤められまた社内での位置付けも上がっていくようなことを理解してもらうのです。少子高齢化でのものづくりには、このような考え方が重要となります。
つまり単なる一方向の職務展開ではなく、双方向の職務転換であり、将来社内でより高度な仕事につく機会も出てくる。従って、今迄の仕事に加えて新しいノウハウを身につけてもらいたいということを中長期スパンで説明するのです。
(3)運用の場面では、対象者へのサポートやケアが重要となります。
中高年になると、多くのノウハウを持っていても自分の得意領域から中々一歩が踏み出せないものです。自分の殻をやぶり、応用力を発揮してもらうためにはトレーナー制度などの仕組みも必要となります。また、不安な面や実際にあった事例などを元に関係者全員で振り返り会を行い、次回に向けた対応策を関係者全員で考えるようなことも有効です。つまり組織全体で、対象者の不安な面をサポートする体制づくりが大切かと思います。
技術伝承のワークショップでは、最後にフランスの詩人ルイ・アラゴンの言葉、「教えることは、希望を語ること」、「学ぶことは、誠実を胸にきざむこと」を伝えています。職種転換でも重要だと思います。 ぜひ「希望」を語り、「誠実」に取り組まれる授業員の方を育成して頂ければと思います。 以上、ご参考になれば幸いです。
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技術開発コンサルティング、人財開発コンサルティング、キャリアカウンセリングなどに携わってきた経験から、簡潔にシニア技能者の職種転換の留意点をアドバイスします。ご要望の次の2点に絞って記述します。
(1)退職されないように理解を得ること
これが一番やっかいなテーマだと思います。筆者は、技術開発マネジメントと兼務で、他部門の従業員のキャリアカウンセリングを実施してきました。この中で、事業再編に伴い、多数の技術/製造部門のシニアの悲痛な職種転換の相談も受けてきました。個々の悩みは、それぞれですが、いくつか共通点もありました。それは、リストラされたという自信喪失感といまさら営業などできないという不安感です。このことを払拭するために、シニアの自信回復と動機づけを行いました。まず、自分自身の特性と強み/弱みの分析です。具体的には、「キャリアアンカー」、「エゴグラム」等の分析ツールを使いました。これにより、自分はこういう人間なのだと客観的に理解できるようになります。次に、自信回復に効果的だったのが、「自分史」シートへの記述からの気づきでした。これは、人生の浮沈みを時系列にサインカーブのようなアップダウンの曲線で記述してもらいます。その過程で、「最も充実していたこと」、「次に充実していたこと」、「充実していなかったこと」と「いつか?」「何をしていたか?」「それはなぜか?」をマトリクス表で表現してもらいます。そして、動機づけは、金型製造業の営業には、いままでの職場のノウハウが強みとなることを認識してもらうことです。
2.人事的な配慮
ここでの必須ポイントは、営業教育/訓練と肩書の付与です。お客様と直接向き合うわけですので、再確認の意味も含めて、新入社員と同じような基礎教育も必須になります。具体的には、「身だしなみチェック」、「名刺交換の作法」、「応接室での応対法」、「話し方の基本」等です。次に、これらの知識だけでなく、「話し方教室」のような訓練が必須となります。筆者自身が受けた研修で、目から鱗だったものが、「コーチング」研修でした。傾聴スキルの訓練が主になりますが、コミュニケーションスキルの上達とともに自信につながり、振り返りなどから動機づけにも効果的でした。そして、営業スキルの訓練です。「事前準備」、「アプローチ」、「ヒアリング(サーベイ)」、「プレゼンテーション」、「デモ」、「プロポーザル」、「クロージング」の基礎知識を学びます。さらに、他の営業マンに同行しながら、自信がつくまで実践的訓練を実施します。最後に、肩書もシニアにとって動機づけのツールになるようです。係長、主任等でなくてもよいのです例えば、「金型エキスパート」、「金型スペシャリスト」のようなお客様に分かり易い表現のものが効果的なのです。これにより、お客様を自分の得意分野に引き込めることになるわけです。
回答者:ぷろえんじにあ代表:粕谷茂
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経営者様、職種転換の進め方について御相談ですか、御苦労様です
■将来を考えて、小型金型工場として、いずれは、
「3Dプリンターを導入して、工場運営を転換していく考えです」
これだけのポリシーをお持ちでしたら、従業員に去られる事は、
無いと思います。
□人間慣れた仕事をやりたいというのが「本性」です。
しかし、会社の方向性を示して職種変更をするのは必要なことです。
■人事制度の中で、長い経験を営業になった時の「育成プラン」と給料の
有り方を決めるべきです。
□それを示すことで、従業員はなっとくすると思います。
私の支援した会社でも、職種が現場から事務職や営業に変わったり、
担当機械が変わることは多々ありましたが、「人材育成の面から奨励を
しています。(理由は、景気変動に柔軟に対応できる会社になるからです)
★ポイントは、不公平で有ってはならないということです。
将来を見据えて、希望を持たせるプラン(身体を使うか・頭脳を使うか)
「経営者が見極める」必要が有ります。その結果で、
□しっかりと、従教員には"ものづくり専門家"等を招いて、教育をしたり
事務所スタッフにも、理解協力させる必要が有ります。
■ 営業職とは、成果に結び付かないと遊んでいた事になります。しかし、
その努力を評価してやることにより、現場に戻しても立派な職人になります。
会社の都合を強調せず「変化に強い会社にして人材育成」の見える化を
期待しています。
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