以前、質問No.97で、IoTについて質問した者です。
現段階では工場にIoTを理解している人材はいません。
社内にソフト開発が出来る人材を育てて、ソフト専門会社と対等に渡り合い、
当社の欲しいIoTを実現できる人材を育成するには、社内のどのような人材を
対象に育成して行けば良いでしょうか。
IoTへの取り組み方、人材育成など、この分野への専門家のアドバイスを期待します。
IoTを対象としている分野は、予知保全、スマートグラスによる作業ナビです。
求人からの対応が困難で、今いる人材での対応のため、このような質問になりました。
よろしくお願いします。
企業での人材開発戦略立案、人材開発支援等の経験からの視点でアドバイスします。
IoTは、モノ、コト、ネットワークの3要素によって相乗効果を生み出します。概念自体は新しいものではありません。その3つを技術のキーワードで示せば、小型・高機能化してきたマイコン、センサー等の「組み込み技術」、ビックデータ解析に使われる「人工知能技術」、クラウド、無線技術、分散DB等に関わる「ネットワーク技術」となります。IoTの一般的な類型として、オペレーション最適化、リスク管理、マーケティング強化、新規事業創出等が想定されます。例えば、製造業における機器の遠隔監視・予防保全の高度化やウェアラブルデバイス等を活用した予防医療の推進等、各産業で様々なケースが想定されます。
上記の背景を踏まえれば、主に、次のようなステップで社内人材のレベルアップを図ることができます。
(1)まず、技術戦略の重点課題として、「IoT技術の獲得と人材育成」を明記します。そして、予知保全、作業ナビ等への具体的活用ロードマップを策定します。
(2)御社の今後必要となる技術として、「組み込み技術」、「人工知能」、「ネットワーク技術」の3要素を、優先順位付けします。
(3)現状で、センサー、マイコン等を扱えるHW技術者、会社には登録していないが将来不安に備えて密かに自己研鑽しているネットワーク技術者等の人材スキルをDB化します。そして、彼らの中から研修希望者をピックアプします。彼らの保有技術レベルと学習意欲を勘案して、優先的に社内・社外研修を受講させます。
(4)短期間で社内人材育成の成果を得るためには、上記の基礎知識が得られた段階から、具体的なIoTテーマで、プロジェクトチームを編成して、試行しながら人材育成を図ります。
(5)さらに、全社員を対象として、IT技術習得を啓蒙していきます。例えば、ITの入門レベルの「基本情報技従者試験」からプロフェッショナルレベルの「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」、さらに、IT利用者のための「情報セキュリティマネジメント試験」等の資格取得を促し、自己学習を奨励します。その動機づけ対策として、例えば、取得時の褒章金を支給したり、手当を支給したりする制度も構築します。
(5)上記を全体的に俯瞰してコントロールできる人材がいない場合には、2~4年間限定で、コンサルタント等の社外のアドバザーの支援を受けます。
回答者:ぷろえんじにあ代表:粕谷茂
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日原さん、IoT(予防保全)について、熱心に社内導入検討を考えておられる事、
会社の品質保証や労働災害防止に大きな効果を見出すことができます。
前回を含めると3人の専門家の方が回答されていますので、取り組み方・人材育成を
私の支援経験上からコメントさせて頂きます。(工場経験40年の横山篤志です)
Ⅰ.「取り組み方」まず会社上層部の生産関係者の理解を得ることです。
現在の突発機械故障でロス時間をあげて、すべての機械をターゲットにせずに、
ワーストの生産設備と法的に必要な付帯設備をターゲットにするべきです。
この場合、現場で機械を修理されている方の声を吸収対応して下さい。
導入した時の、費用対効果を概算でも算出すべきです。
Ⅱ.「人材育成」保全(機械修理)に、従事する方を把握し電気・機械・工具スキルの
ある方を選任することです。この方々を中心に「製造課長の考える」予防保全を
明確にして、どれだけの工数が必要かを明確にして、要員を育成していきます。
電気工事士や機械加工技能士の資格を所有している人を探し、教える役目を
持たせることが良いでしょう。(システム開発担当は少し後出しに!!)
Ⅲ.ソフト開発出来る人材を育てるには、現場密着型のIT会社のソフトを導入し
会社業務に合わせた改善をしていく事が肝要ですが、まず、機械故障修理と計画的な
保全がスムーズに行く事が第一です。
※会社方針、中長期計画に入れて、上層部の理解・現場の納得から進めて下さい。
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ICT企業で、ものづくり革新のためのIOTツール拡販で多くの企業を廻った経験から、他社の状況などを踏まえてコメントさせて頂きます。
(1)IOTの取り組み状況
最近、多くの企業でIOTに取り組まれており、引き合いのあった企業に訪問するのですが、IOTに関する理解と対応は様々であります。経営者のなかには、IOTを魔法の道具のように考えられている方もおられます。また対応部門も、生産技術、情報システム部門、開発部門、調達部門、経営企画部門と様々で、その会社でものづくり改革をどのように行ってきたかが大きく影響していると考えています。
(2)IOTツール活用の目的
我々の理解では、IOTはものづくり改善を促進させるツールではなく、改善された業務や仕組みを維持していくためのツールだと考えています。 従って、IOTを維持・導入・運用する部門は、改善を主体的に推進してきた部門や人材がベストだと考えています。IOT導入成果を最大限に発揮するには、とても重要だと考えています。
(3)予知保全の取り組み方と人材育成について
予知保全は、設備の稼働状況(チョコ停、ドカ停、環境などを含む)をPLC/センサー/パトライトなどから収集・蓄積し、ビッグデータ解析による分析を行い、傾向を把握した上で(機械学習を含む)、数日・数時間先などの予知をすることだと推察いたします。
そうすると必要な知識は、MES(Manufacturing Execution System)、生産設備関連情報、データ解析技術、AI、ものづくりのための加工技術など異なる知識が必要となり、全体を一つの企業で賄うには多くの経営資源(人・物・金)と時間が必要となります。従って御社が投入できる経営資源の程度にもよりますが、御社の強みの部分に焦点を当て人材を選定・育成し、不足する部分は外部と連携して検討する(育成していく)のがベストであると思われます。
(4)スマートグラスによる作業ナビについて
スマートグラスによる作業ナビでは、どのような作業に、どのようなナビを行うのかによって使用する知識や技術も変わってきます。例えば、単なる作業支援なのか、また現場での保守情報のデータ蓄積を行うのか、測定器連携などの機能、トレーニング用のシュミレーターなどの用途によって必要な人材や知識は異なってくるのです。
簡単な作業支援だと、ARマーカーを使ってタブレットに必要情報を表示させるだけですので、AR(Augmented Reality:拡張現実)の知識や情報システム(無線・データベース等)の知識があれば十分となりますので、それらに知見のある社内人材を選任・育成することになります。まずは、このあたりから開始されたら如何でしょうか。
以上、IOTは目的や用途によって幅が広く全てのことは書ききれませんが、当方の知識の範囲内で気づいた点を整理させて頂きました。 抽象的な説明になった部分も多いと思いますが、ご参考になれば幸いです。
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本間と申します。回答が遅くなりました。
最近ある機械メーカが保守管理のためにIOTを導入するのアドバイスを行いました。そこでの経験からいうとまずは機械の制御コントローラメーカーに相談するのが手っ取り早いようです。すでに保守や保全関係でIOTを利用している企業は数多くあり、事例も持っています。
その会社の場合は安川電機製のコントローラでしたので、IOTは安川情報サービスに手伝ってもらっています。ほぼオールインパッケージに近い仕組みがあったということで、新機種への搭載準備中です。
一般的なソフト会社はマシンとの接続ノウハウをもっていませんので、夢物語に終始される可能性があります。
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