2水準系直交表のうち、L8直交表及びL12直交表が適当なサイズ感かと考えていますが、そこにある解説でもう少しお教えいただきたいことがありましたので、質問させていただきます。本当は3水準で見たいのですが、L9だと因子が4つまでで実験効率が低いようですが、次のL27まで上げると実験数が多くて負荷が大きいことが悩みです。そのため、因子数を減らさずに水準を3水準から2水準に丸めることを考えています。
① L8直交表
要因が7つまで評価可能とあります。ただ、交互作用は一つまでとなっていますが、見たい交互作用が2つの場合は適用できないのでしょうか。特に、短所にある「思わぬ交互作用があると変な結果になる」ことを避けたいのですが、避けるためには、L8以上の直交表を活用することが無難ということでしょうか。
② L12直交表
短所に記載のある、「交互作用が評価できない」、「3水準、4水準が一切組めない」について、もう少し解説をお願いできないでしょうか。交互作用を見たいのですが、あまり大きなサイズの実験ができないので、悩んでいます。
補足1 投稿日時:2016/08/28 17:38
熊坂様
極めて明瞭なご回答有り難うございます。もう少しお教えいただきたいことがございます。
乱塊法を用いて、実験条件を揃えることを想定しています。具体的には、ブロック因子のX(3水準)に対して、A、B、C、Dという4つの因子で実験を実施することを考えています。
本当はA、B、C、Dという4つの因子全てを3水準で実験を行いたいのですが、交互作用も考えると、L9直交表はダメでL27直交表となってしまい、ブロック因子の分も考慮すると実験数が81に上るため諦めています。そのため、なんとか4つの因子全てを2水準に切り替えて効果的に処理することで悩み、質問をさせて頂くに至っています(実験総数を30回程度に収めたい)。ご回答頂いたL8直交表に於いて、「A、B、Cという三つの因子に対してA×BとA×Cという交互作用」の記載がありましたが、「A、B、C、Dという四つの因子に対してA×BとA×Cという交互作用のみを確認(Dは交互作用を起こさないと想定)」するという、L8直交表の活用方法は妥当でしょうか。もし、考えうるリスクが有るようでしたら併せてご教授いただけないでしょうか。
開発系の実験のため、ご指摘の通り、3水準で確認したいと思います。
ブロック因子を活用したのは、誤差というべきものかわからないのですが、ブロック因子の3つの水準間でのばらつきを見たいと考えているためで、今回の実験で明らかにしたいことでもあります。ご推薦のように制御因子は4つありますので、L9で割りつけて見たいと思います。ただ、ブロック因子の水準が3つ有るにも関わらず、実験数が18となる理由が少し不明なのですが、お教えいただくことは可能でしょうか。交互作用は本来ないはずなので、思い切って外します。初学者ゆえ、いろいろ面倒をおかけしますが、よろしくお願いします。
直交表は実験効率を上げるのに非常に有効ですが、使いこなしに悩むことが多いものです。
改善実験には2水準系、開発実験には3水準系を使うのが一般的ですので、初心者さんは開発、設計的な用途での直交表利用と想定します。
実験サイズはその実験によって得られる成果と実験にかかる費用から割り出すことが可能で、下記URLの記事を参考にしてください。
https://www.monodukuri.com/gihou/article/73
結果的に10回程度の実験(サンプル)数が適当なケースが多く、直交表で言えばL8、L9やL12を使いたくなるものです。品質工学会では、繰り返し数、因子数、交互作用による誤判断防止の点からL18直交表を推奨していますが、上記〔成果/費用〕比率が小さい場合に18サンプルは現実的でない場合がありますので、L8やL12直交表もうまく活用したいものです。
以上の前提で、質問にお答えします。
①L8直交表の実験数が8ですから、自由度は7です。二つの2水準因子の主効果とそれらの交互作用を見るためには自由度が3必要であり、主効果と交互作用二組で自由度6が評価できそうなものですが、下記URLで紹介する交互作用列の配置を見ると、例えば1列と2列の交互作用効果は3列に出ますので、もう一つ4列と5列の交互作用列を見ようとすると1列に出てしまい、1列に割り付けた主効果と重なってしまいます。
https://www.monodukuri.com/gihou/article/76
残念ながらどのように列を組み合わせても、二組の主効果と交互作用を評価できる組み合わせはありません。
ただし、A、B、Cという三つの因子に対してA×BとA×Cという交互作用を見たいのであれば、Aを1列、Bを2列、Cを4列に割り付けることで、A×B交互作用を3列、A×C交互作用を5列で評価できます。
直交表は交互作用を無視することで効率化する手法ですから、「思わぬ交互作用があると変な結果になる」のは避けられません。これを恐れるあまり利用しないのでは、実験の効率化がおぼつきません。次のような方法で対応します。
(1)因子選定中に交互作用が出そうな場合は、片方を外す。
(2)スライド水準を使う。→https://www.monodukuri.com/gihou/article/345
(3)直交表実験結果で技術的に説明できない結果が出た時に、それが交互作用効果であるとして解析する。
②L12直交表で「交互作用が評価できない」のは、2水準因子の4つの水準組み合わせ「11」「12」「21」「22」に対して排他的論理和(XOR)となる列がないからです。2水準直交表で4水準を割り付けるには、2つの列とその交互作用列を組み合わせますので、交互作用列がないということは4水準が割り付けられません。
2水準系直交表で3水準を割り付けるには、一旦4水準列を作ってそこにダミー法で3水準を割り付けるのが一般的ですので、4水準が割り付けられないと3水準もできないわけです。
厳密には直交しないものの、3水準因子を1~5個評価できる「近直交表」というのもありますが、利用には注意が必要です。
結論として以下のような対処法があります。
(1)〔成果/費用〕比率が大きければL18直交表を使う。
(2)スライド水準を使って交互作用を1組までにとどめL8直交表を使う。
(3)〔成果/費用〕比率が小さければL9直交表を使う。
(4)利用に注意しながらL12「近直交表」を使う。
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補足質問にお答えします。
前回回答の冒頭で書いたように、まだ工程が定まっていない開発系の実験の場合は3水準での評価をお勧めします。具体事例にもよりますが、水準数を減らしてまで見る必要がある交互作用でしょうか?
制御因子間で交互作用が大きいような技術は、他の因子の影響も受けやすいと言われます。交互作用が予想されるのであれば、交互作用を考慮して工程を設計するのではなく、交互作用を減らすような技術を探してください。
また実験精度を上げるためだけに特段技術的に意味のないブロック因子を使うのであれば、むしろL18直交表の中にXを入れて、さらに4つまでの制御因子(合計8因子)を評価した方が、より多くの技術的知見を得ることができます。
それでも直交表の内側に4因子、外側に1因子を配置するのであれば、制御因子をL9に割り付け、特性のバラツキ要因となりそうな誤差因子を外側に配置して、品質工学(パラメータ設計)のSN比を算出することで、システム内外の変化に強いロバストな設計が実現できます。この場合も実験数は18です。
交互作用を評価しようとするほど直交表のメリットが減っていきますので、どうしても評価せざるを得ない場合や、実験できる因子が少なく列が余った場合などに限定して使いましょう。
ご質問の「考えられるリスク」は、「多くの実験をしたにも関わらず、狙いとした技術が確立しない可能性が高くなる」です。
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説明不足で申し訳ありません。
誤差因子は2水準に設定することが多いため、その場合L9×2で実験数18になります。
ブロック因子は、日時、ロット、ラインなど、差があるかないか明確でないものを取り上げるため、3水準くらい設定しないと因子効果が評価できないという判断かもしれませんが、誤差因子の場合はあらかじめ影響があると分かっているものを選定することで検出力が大きくなり、一般には2水準で足りるのです。もちろん3水準にすることも可能で、実験精度は上がりますが、二分の三に上がるわけではありません。つまり実験の数に対する評価効率が下がるわけです。
ただしサンプルを作り、結果を測定するコストが非常に小さければ、初めに回答したように〔成果/実験費用〕比率が大きくなりますので、水準数や繰り返し数を増やすこともアリです。
ブロック因子の内容によりますが、どうしてもそれを評価したいのであれば、内側直交表をL18にしてその中に入れてしまうか、制御因子一つを外してL9直交表に入れる手段があります。ただし制御因子より重要なブロック因子(標示因子かも)は滅多にありません。一般論で言えば制御因子の評価が優先です。
誤差因子をサンプル製作後の環境条件や測定条件に取れれば、L18直交実験のサンプル製作数は18個で済みますので、制御因子7個、ブロック因子1個をわずか18サンプル(測定数は36)で一気に評価してロバストな結果を得られる可能性があります。
ご成功を祈ります。
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