ロボット、半導体等の技術開発経験と開発支援ツールの活用ノウハウを蓄積してきた立場で、要点のみアドバイスします。質問内容から推察すると、御社の課題は開発工数低減ツールを紹介しただけでは不十分であると考えられます。なぜなら、部分的に開発支援ツールを導入できても、もぐら叩きのように次から次へと新たな問題点が生じて、その効果を享受できるとは限らないからです。したがって、ここでは、上位概念から下位概念までの3つの視点で開発の効率化について課題を整理してみました。御社の組織形態、予算、開発メンバー数等を考慮し、どこを攻めれば効果的なのかを全体最適な視点で見極めていただきたいからです。それらの視点で課題を俯瞰した上で、開発支援ツールを選択されるとより効果的です。
(1)開発スピードを上げる主な方法
①コンカレントエンジニアリングを実行する: 例えば、生産技術者の開発段階からの参画
②開発プロセス支援ツールを活用する: 例えば、機構の干渉チェックに有効な3次元CAD、金型試作回数の削減に効果的なCAEシミュレーション、矛盾問題等のブレークスルーに威力を発揮するTRIZ、開発工数と期間短縮に有効なタグチメソッドの導入
③他人にまかせられる業務をアウトソーシング化する: 例えば、海外のソフトウェアベンダや子会社に委託するオフショア開発の活用
④高度技術保有のコンサルタントを活用する: 例えば、ものづくり.COMの専門家の活用
(2)問題発見と問題解決のためのフロントローディング化
①ゲート管理の強化
②CAD/CAM/CAEによる組立性改善
③部品調達方式の合理化
④CAEシミュレーションによる試作回数の削減
(3)先行プロジェクトからの知識移転
①先行段階でのボトルネック抽出と解決
②デザインレビューによる後戻り防止と活動成果のデータベース化
③部品の共通化・標準化
④モジュール化・オブジェクト指向モデル化
<重要キーワード解説>
(1)オブジェクト指向:
開発の生産性向上を図ることを目標とするソフトウェアの開発手法である。データとデータ操作に用いるアルゴリズムの両方をカプセル化すること。そのカプセルを再利用することによって効率的な仕様変更に柔軟に対応できるシステム開発が可能になる。
(2)CAEシミュレーションツール:
CAEの代表的なツールとして有限要素法を用いた構造解析ソフト、流体の速度や圧力などが計算できる流体解析ソフト、熱源や熱伝達などを定義して構造物全体でどのような温度分布になるかを計算する伝熱解析ソフト、磁場の分布を求める磁場解析ソフト、音源を設定して周囲の音場がどのようになるのかを計算する音響解析ソフト、設計した製品の実際の動きをシミュレーションできる機構解析ソフトツールなどがある。
回答者:ぷろえんじにあ代表 粕谷茂
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