そこで、減産カーブの傾向を見て購入ロットやベンダーの加工ロット見直しを行う上で、統計的、論理的な側面での適切な方法はありますでしょうか。例えば、漠然と、当該製品の過去の最大年間生産量が、50%以下、25%以下、10%以下となった段階で、各ステージで購入ロットや加工ロットを見直していくというイメージはあるものの、イマイチな気がします。
増減産に応じた社内の生産方式にはさまざまな手法がありますが、自社がベンダーから部品を調達する上で、商品の減産カーブに応じた、最適部品調達における合理的な数理モデルのようなものがあれば、リスクマネジメントの側面でも有効であると考えております。
逆に経験則に基づいたアイデアでも構いません。アドバイスをよろしくお願いいたします。
購入や加工のロットを生産量の変化に合わせて適正に保つには、需要予測の精度を上げることが重要です。実際に需要が減少し、売上が落ちてから減産体制に入ったのでは、不要な在庫を抱えることになり、資本効率の低下を招きます。逆に、将来の需要の減少をある程度の確度を持って予測することができれば、早い時期に減産に向けた準備を始めることができます。
需要予測のための数理モデルには、様々な方法がありますが、最も単純なモデルは、過去の需要、売上データの動きを近似する式を導出し、その動きが継続することを仮定して将来を予測するものです。直観的な理解としては、トレンドや勢いを重視するというと言ってもよいかもしれません。たとえば、同じ年間生産量50%以下の時点であっても、年率20%で減少している商品と年率1%で減少している商品とでは、購入や加工のロット調整の必要性が異なります。強い下降トレンドを描いている商品は、より早急にロットを縮小しなければなりません。
また、近年では、伝統的な数理モデルだけではなく、多様なビッグデータをデータマイニングや人工知能を用いて分析し、より精度の高い需要予測を実現するようになってきました。たとえば、コンビニでは同一の顧客が同じ商品を繰り返し購入するリピート率を使って新商品の需要予測をしています。ビッグデータの分析により、新商品発売初日から数日間のリピート率がその後の売上と高い相関があることを突き止め、それを需要予測に利用することで、店舗から追加の発注が来る前に、本部からメーカーに増産の指示を出すことができるようになりました。このように、売上データ以外のデータも含めて分析することで、需要の変動をより先取りした生産計画の立案が可能となっています。
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変動需要に応じて時系列的生産数量を決定する、すなわちロット数とタクトタイムの設定によって利益最適化するシミュレーションモデルを開発し来週下記の通り講演します。
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日本機械学会 第12回最適化シンポジウム・2016.12.6-7
Copyright © 2016 一般社団法人 日本機械学会
生産システムの需給同期化による全体最適化
‐変動需要に対する生産最適化制御のシミュレーション動的モデル開発-
今岡善次郎・東京農工大大学院・株式会社21世紀ものづくり日本
Zenjiro Imaoka, K.K.MN21、Tokyo University of Agriculture and Technology
夏 恒・東京農工大学大学院工学研究院
Wataru Natsu,Tokyo University of Agriculture and Technology
Key Words: Optimum production, Demand fluctuations, Inventory control, Tact production, Shortage rate, Synchronization, Flow, Throughput profit, Variable cost, Time expense
論文要旨
生産システムは外的要因としての需要変動によって利益が最大(最適)かどうか決まるオープンシステムと言える。効率やコストは需要を考慮しないクローズなシステム指標である。変動する需要に対して生産能力、安全在庫、生産量を制御変数とし最適化指標(評価関数)はコストや効率ではなく利益とする。本研究は機会損失による売り上げへの影響や各種コスト要因を考慮し利益を評価関数とする生産システムをモデル化する最適制御問題として捉える。従来、安全在庫は統計的に欠品許容率から算出され、生産タクトタイムは試行錯誤の経験値から求められ、生産能力は平均需要に応じてコスト削減の対象として経営されてきた。個別にはトレードオフに関係にあるが本研究による手法は全体の指標である利益を評価関数とする最適化手法である。
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このモデルにより需要を一定の幅でランダム関数で発生させる場合、需要は落ち込む場合、需要が増加傾向の場合、季節変動のように周期性がある場合、の一般的最適生産が求められます。特定の事業の直近のデータを使ってシミュレーションできます。評価指標はコストや売上ではなく利益とします。在庫切れの機会損失、過剰在庫の在庫コスト、過剰能力の時間コスト、能力不足の機会損失、過剰安全在庫によるコストなどのトレードオフが利益という指標で全体最適生産が模擬実験できます。
機械学会以外でも17日、流通楽座で講演します。ものづくりドットコムでご案内しております。
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追加の回答します。過去の実績から需要予想と当該製品の売単価、数量比例単位コスト(資材費)、時間比例単位コスト(人件費・減価償却等)、在庫単位コストをパラメーターとして設定し、生産ロットとタクトタイム、生産能力制約、需要連動安全在庫方針を入力すると期別利益と累積利益が数値をグラフで表示できるシステムを開発しました。いろいろシミュレーションして得た結論は以下の通りです。
1.需要特性に関わらずタクトタイム最短ロット最小(小口多頻度)の生産が出荷と生産が同期し機会損失、在庫最小で全体最適の累積利益が最適になる
2.ランダム需要の場合はタクトタイム最短生産、最大需要を安全在庫に設定し生産能力制約は平均需要50にするのが最適となる
3.一定の増加率又は減少率で需要が変動する場合は需要予測精度が高まり、需要連動の安全在庫を設定することで生産と出荷が同期し利益はランダム需要の2倍となる
4.緩やかなサインカーブ変動の需要に対しても比較的需要予測精度はよく需要連動の安全在庫を設定することで生産と出荷も比較的同期し最適生産となり利益はランダム需要の70%増加となる。
5.総需要は同じでも需要特性別の生産速度制御(SCM)によって最適生産(指標累積利益)は大きく異なる
需要が下がる場合の考慮事項は下がる需要に合わせた安全在庫と生産能力制約下でロットサイズとタクトタイムを決めることです。機会損失なく過剰在庫なく出荷と生産が同期することで利益を最適化できる時系列的な生産計画ができます。実績が出たら即時変更できます。
12月6日日本機械学会最適化シンポジウムで講演、12月17日新宿で「流通楽座」主催の研究会で講演します。17日ご希望の方ご連絡ください。
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