実践的な品質工学をお手伝いする、株式会社ジェダイトの鶴田と申します。
品質工学をどのような分野に適用していけるかを考え、実践していくのも品質工学の重要な研究テーマとなっており、現在進行形でさまざまな分野への適用が検討されています。以下、間接部門における品質工学の現状について解説いたします。参考文献は一例です。
(ただし、下名自身は購入部品評価しか適用経験がないことを先にお断りしておきます)。
1)資材購買部門
品証部門などの購入品(部品や材料)評価部門と協力して、機能性評価を実施し、価格とのバランスで最適な購入品を選定することが考えられます。また購入後も定期的にロット抜き取りで品質をチェックすることにより、メーカへのけん制や、低品質品が納入されたときの是正などに役立ちます。定期的な抜き取り評価を可能とするためには、短時間評価方法が必要で、そのために機能性評価が役立ちます。
2)人事部門
田口玄一先生が提言された「部門評価制度」も品質工学の1分野とされます[1]。古い提案ですが、まだ十分に研究・適用されておりませんが、内容的には古さを感じさせません。これは要するに、各部門の責任(期待する結果)を明確にして、結果の客観的な評価によって妥当な褒章を行うというものです。そのための評価基準の設定に提案の主眼があります。
また、1dbの改善がいくらの価値に相当するのかを研究した事例もあります[2]。
また、人事評定を品質工学を用いて試みた事例も発表されています[3]。
3)企画部門
どのような製品が好まれるかは、感性や好みの問題が大きいため、技術的に扱うことができません。しかしながら、食品や衣料品などの味や使い心地をMTシステムで評価した事例があります[4][5]。
また品質工学とは直接関係しませんが、直交表を使った商品企画方法としてコンジョイント分析があります(商品企画の7つ道具の1つ)。企画のパラメータ設計といってもよいかもしれません。
4)営業部門
MTシステムを用いた将来の販売予測、需要予測をテーマにした研究もあります[6][7]。
5)財務・経理部門
為替レートや経済指標が業績に影響する場合、その予測は重要です。難しいテーマですが研究例があります[8]。
[1]田口玄一:「部門評価制度」, 日本規格協会, (1966).
[2]白勢明三:「1デシベルはいくらに相当するか」, 品質工学, Vol. 12, No. 5, (2004) .
[3]奈良敢也:「TS法とT法を用いた人事考課システムの開発」, 第14回品質工学研究発表大会, (2006)
[4]森清康雄:「醤油醸造技術のMT法による 開発」, 品質工学, Vol.11, No.1, (2003)
[5]池田和子:「マハラノビスの距離によるジャケットの着心地の検討」, 品質工学, vol.5, No.2, (1997)
[6]永倉克彦:「両側T法を用いた建設機械の需要予測」, 第19回品質工学研究発表大会, (2011)
[7]天谷浩一:「売れる機械を予測する~マーケティングへのMTシステム適用を考える」, 第21回品質工学研究発表大会, (2013)
[8]永倉克彦:「両側T法を用いた経済予測」, 第20回品質工学研究発表大会, (2012) ほか一連の研究
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