どの製造現場でも同じ課題を持っていると思いますが、職場の生産性向上について取組んでおり、質問させていただきます。中でも完全に“ゼロ”にする事ができない間接部門についての生産性向上に取り組もうと考えております。荒っぽいやり方で言えば、その業務に配置されている人員を、直接部門へ移動させてしまえば良いのですが、そこは人と人ですからなかなかそういう訳にもいきません。そこで間接部門の生産性向上に取り組む場合の導入ステップとどこから手を付けていけば良いのかについてアドバイスを頂けましたら幸いです。
間接部門の生産性向上につきまして、あるプレス加工業さんの総務・庶務・購買・設計室の業務改善・生産性アップ活動を指導した経験をご紹介します。
1. 社内の全ての間接部門を串刺しにする改善チームを編成し、リーダーを決める。
2. まず各自のルーティーンを洗い出し、話し合う。ここでは、洗い出されたそれぞれの業務でムダなことはないか、定型化できないか、などを考察します。換言しますと、業務面の整理整頓をおこなうわけです。整理とはムダを洗い出し、整頓とはムダをなくした後、定型化を図ることです。
3. また、同時に事務所内や持ち場の机の上や中、回りの整理整頓をおこない、不要なものを処分します。設計室では図面ファイルが各自それぞれで保管されていましたので、共通キャビネットを整備し、図面番号や得意先名を明記し誰でも一目わかるように改善しました。
4. 各自のルーティーンの中で時間がかかる業務については、カードに業務内容と担当者名を明記し、あとN日で処理するとターゲットを設定し、共通管理ボードを作成、N日の数字のマスにカードを挿入し、随時カードをN-1、N-2日のマスに移動させ、カムアップメソッド化して、間接部門員がなにをやっているのか、誰が見ても一目で判るような仕掛け作りをしました。(かんばんシステムの納期管理ボードからの発想です。)
このようにして業務面と事務所の現場の「整理整頓」をおこない間接部門の業務の見える化をおこないながら、生産性アップを推進しました。
リーダーが主体となり定期的に改善前・改善後の状況など社内掲示板などで周知させることも大切です。
ご参考になりましたら幸いです。
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maruge様
まずは生産性という言葉の定義をはっきりさせる必要があります。経営用語(会計用語)としての生産性(労働生産性)の定義は従業員一人当たり付加価値額です。これは必ずしも事務処理の効率化を意味しているわけではありません。間接部門とか直接部門とか営業部門とかとは関係なく、会社全体でどうやって付加価値額を増やす(ストレートに言えば儲ける)かを表しています。経費を下げただけ、事務処理効率を上げただけでは生産性は増えません。単なる部門異動も生産性には全く影響しません。
一人当たりの分母となっている会社全体の従業員数を減らせば一時的に生産性は増えますが、それでは会社の士気や生産能力が落ちて売上(付加価値額)が減る可能性がありますので、得策ではありません。
貴社では、どうすれば付加価値額(売上高-外部購入費:TOCのスループットとほぼ同じ)を増やすことができるかに関する議論はされましたでしょうか。それが明確なれば、間接部門が生産性向上にどう貢献していくかがみえてくると思います。それを抜きにして、ただ生産性向上と叫んでも担当者は何をしたらいいのかわからないのも無理はありません。まずはそれを行うようにしてください。
経営者や現場改善コンサルタントには、生産性向上と生産効率向上を混同している人がいますので生産性という言葉には注意してください。
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Maruge様
クリーン化が専門の清水と申します。
クリーン化も主には現場での活動になります。現場での指導経験が長かったので、現場側から管理・間接部門を見ることが多かったです。
お困りの詳細までは書けなかったと思いますが、おそらく理論、理屈よりももっと泥臭いところではないかと察します。
その辺を推測しながら私の感じていること、考えていることを記します。
私の経験では、管理・間接部門の人は、現場を下に見る意識が多少あるように感じます。逆に現場の人は、管理・間接部門などを自分達よりレベルの高い人たちだという認識、先入観があるように思います。お互いに知らず知らずのうちに距離を認めてしまっているんですね。
もし管理・間接部門の人を現場に入れようとすると、かなりの抵抗がある、または、気持ちが落ち込むとか、不満が出るなど心理的影響が気になります。
まずこのお互いに距離、壁を取り払うことが大きなポイントですね。
現場では小集団活動や改善提案などを通じ、品質や生産性向上などに日々苦労をしています。加えて、仕事に必要な資格取得など、自分の時間を切り詰めている場合もあります。
この苦労の積み重ねで利益を確保し、それが直接製造に関わっていない管理・間接部門の方にも配賦されています。いわゆる工場配賦です。つまり現場の稼ぎで食わせてもらっているわけですが、その認識が薄い部分もあると思います。
一旦事務系の業務についてしまうと、強制的に現場に入れても、次元の低い仕事に移されたという感じになってしまうと思います。
ところが、現場の人達は、常に工夫、改善を考えていますので、日々成長しています。
逆に管理・間接業務では、仕事の内容を把握し、一通りの業務がこなせれば同じことの繰り返し、デスクワークになってしまい、腰掛け的になるので成長が止まってしまうことも考えられます。
過去にはこんな事例がありました。
1.交代勤務をしている職場で、A班が勤務している時、B班は休日を利用して職場旅行に出かけていました。そこに台風が直撃し、足止めされてしまいました。
その現場ではB班が勤務すべき日に穴があくわけですが、工場が止まらないよう、事務系や技術、品質、他職場からの応援を貰い、生産を確保しました。
これらのメンバーは、以前は現場にいてベテランだったとか、現場で長期実習した経験がある。また、オペレータの仕事の幅を広げるため、交差訓練がしてあった隣の職場から応援してもらったなどでした。
現場での作業経験があり、小集団活動や改善活動も経験していたので、現場の苦労もわかっていて、直ぐに現場に入っても、上手く意思疎通もできたとのことでした。
目標を達成しようとまとまることが出来た例です。
2.品質が安定しない取引先に技術や品質メンバーが出向いて、パワーポイントで数字やデータ、写真などを見せて、品質向上をいくら唱えてもうまく行かないのですが、実際に現場に入ってやって見せるという指導で成果を上げた例もあります。
机上で命令口調で訴えても、先方は、「色々言うならやってみろ」と言う気にもなるでしょう。そこを克服したんですね。
理論、理屈ではなく、実際にやって見せられることは、大きな指導です。これは現場経験がないとできないことです。
3.ある会社では、社長も机を高くして、椅子を片付けたというところがありました。
社長も事務関係の人達も全員立ち仕事です。現場の人達は長時間立ちっぱなしであること。また腰かけ仕事では、余計なことを考えたり、動作、行動が緩慢になるということがあり、仕事の処理能力が落ちるのです。そこを改善したとのことです。
社長の率先垂範ですね。背中を見せて育てる部分でもあります。
これらから考えられることは、
① 管理、間接部門のメンバーの考えを聞く。もしかすると現場に入りたい人もいるかもしれません。階層別など色々な人の意見を聞きながら、先ほどの壁を取り除いていくようにしたい。
② 新入社員は必ず現場に入れ、現場を理解したうえで、必要なら管理・間接部門に配属する。
現場では技能レベルの高い人もいると思います。そういうメンバーは、後輩の育成に充てるなど、現場(技能)のレベル向上に充てるとか、適材適所を考える。
技術、技能を身につけること。卓越技能者などが育つと、仕事に誇りが持て、現場に光が当たります。事務職ではできないことです。
③ 工場配賦という意識で、現場に感謝する気持ちが欲しいです。すると相互に助け合う雰囲気が醸成されます。私が見てきた中でも、管理・間接部門は、現場に対して威圧的であったり、命令口調で話をする場もたくさん見てきました。そういう人をいきなり現場に入れると、プライドもありますから、かえって現場が混乱し生産性は落ちます。また、現場の雰囲気が悪くなることも考えられます。
今までの人はどう対応するか、これから入社、配属する人はどう対応するかも検討したいです。
将来の会社のあるべき姿を模索して、時間をかけて構築していきたいですね。
このほか、管理、間接部門の方も小集団活動をやってみても良いと思います。
最近では事務部門などの小集団発表会がありますから、それらを聴講してもうなど、刺激を受ける機会を作っても良いと思います。
現在の自分たちの殻を破ることが出来ると思います。
アドバイスにはなりませんが、推測したことを含めた考えや事例を紹介しました。
大勢の人のベクトルを合わせることは大変ですが、話し込みを重ねながら、押しつけでなく、理解してもらえるよう時間をかけて意思疎通を図っていくことが大切ではないでしょうか。
管理職と管理・間接部門、管理職と現場のメンバーそれぞれの相互理解の関係が出来れば柔軟に考える人達が増え、相手のことを考え、現場運営がしやすくなると思います。
その中で生産性向上のためのローテーションもスムーズにいくと考えます。
お悩みの内容の回答にはならないかもしれませんが、一つでも参考やヒントになれば嬉しいです。
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